12星座全体の運勢
「何かが“やってくる”まで」
霜降とは、これまでと明らかに空気が変わって、露が凍って霜になり始める頃合いで、「立冬」はいよいよ冬の到来ですが、今回の満月もまさに時代の移り変わりを体感していくような特別なタイミングとなっていきそうです。
というのも、今回の満月は牡牛座の天王星と正確に重なっているから。天王星は「既存の構造からの逸脱と変革」の星ですが、これは今年から来年へ向けて既に起きつつある大きな流れを象徴する雰囲気の根底にあるもの。そして、今回のテーマは「予測不可能なものの到来」。
将来に備え、ただ現実的なコストを算出したり、リスク回避に励んだり、身を固めていくだけでは、何かが決定的に足りない。ただし、その「何か」というのは、日常という固いアスファルトがめくれるように、これまで疑われることなく固定化されてきた文脈にずれが生じなければ、けっして到来することはありません。
その際、鍵となってくるのは、ちょっとした違和感をスルーせずに育てていくこと。月がまんまるに膨らみきっていくまでは、分かりやすい解答を求めたり、そこに安住するのではなく、「あえて」「今さら」「あらためて」というひと手間や余計なプロセスを大切にしてみるといいでしょう。
獅子座(しし座)
今期のしし座のキーワードは、「人文主義者」。

古代の知識の輸入者であり翻訳者でもある彼らの多くは、都市国家を支配する商業貴族や軍事貴族に仕えることを生業とし、統治術の指南教師として、また師弟の教育係として、あるいは外交官を兼ねた実務家として雇用されていました。
そうして人文主義の教えで育った貴族の子弟たちが、長じて都市国家の指導的地位に就くようになると、大学に修辞学や文献学の講座を作って人文主義者を高給で雇い始め、統治者のたしなみとしても積極的に評価されるようになり、いよいよ人文学は隆盛していきました。
さらに、ギリシャ・ローマに範をとった公的演説や通史の編纂ないしそれらの教授を通じて、人文主義者には世評をコントロールする絶大な力を持つようになり、やがて統治者たちに恐れられるようにまでなるのですが、そうした古代の知識やレトリックが供給過剰となり、世に新知識を提供する代わりに、内輪の勢力争いや派閥争いに明け暮れるようになります。
そして、次第に人文主義者たちは真理を追究する哲学者というより詭弁を弄する“傲慢なソフィスト”と見なされていくようになり、我欲の暗い情熱と気高い芸術性の称揚とが隣り合う、美しい悪夢のような世界が出現していくなかで、イタリア全体が外国に隷属し、諸都市も主権を失ってしまうと、人文主義者たちはあっと言う間に行き場を失ってしまったのでした。
ブルクハルトの著述は一部のエリートたちの思想や行動に偏り過ぎており、その視野があまりに狭いという批判はあるものの、運命的信仰の呪縛の下にあった古い人間社会を新しい時代へ凛と導いた者たちへの彼の揺るぎないビジョンの価値はいささかも疑う必要のないものでしょう。
今期のしし座においても、どれだけ時代の変遷や時の経過を経ても、いつまでもその輝きが失われることのない気高いビジョンをいかにして獲得していけるかどうかが問われていくことになりそうです。
参考:ヤーコプ・ブルクハルト、新井精一訳『イタリア・ルネサンスの文化』(ちくま学芸文庫)
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。