12星座全体の運勢

「存分に自分をぬかるませる」 

大地が目覚め、うるおい始める時期とされる「雨水」に入る直前である2月17日には、しし座の27度(数えで28度)で満月を迎えていきます。 

寒さがゆるんだり、厳しくなったりと、もしかしたら一年のうちでもっとも大地の息づかいを意識させられる時期にもあたるタイミングですが、そんな今回の満月のテーマは「不思議なほどの気持ちの明るさを楽しむこと」。 

冬が終わると光あふれる春の日が訪れるように、多大なフラストレーションや深い暗闇の後には、必ずふわふわとした浮遊感や解放感を伴うような回復期がやってきます。今回のしし座満月の時期もまた、厳しい冬の終焉と本格的な春の到来とをつなぐ過渡期であり、寒さと乾燥で張りつめていた神経や身体の末端のこわばりをどれだけゆるめていけるかということが大切になっていきます。 

ちょうどこの時期に雪解けや霜解けで土壌がぬかるむことを、昔から「春泥」と呼んでいたように、積極的にアクビをしたり、特に上半身の緊張や指先のとどこおりをほぐしていくことで、存分に自分をぬかるませていくイメージで過ごしてみるといいかも知れません。 

涙や鼻水もどんとこい。春への始動は、まずは身体の中から。全身がアクビそのものであるかのような赤ちゃんになったつもりで、たっぷりとゆるんでしまうことを自分に許してあげてください。 
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牡牛座(おうし座)

今季のおうし座のキーワードは、「喜びを食べて生きる」。

牡牛座のイラスト
今回のしし座満月のテーマである「心身をゆるませること」に関連する話として、なにか大事な数学的発見の前には、弓がしなった時のような緊張と、それに続く一種のゆるみが必要になってくる、という考えを数学者の岡潔(おかきよし)がエッセイ集である『春宵夜話』に書いていました。 
 
その際、発見が正しいものである証拠として、必ず鋭い喜びが伴うのだそうです。それがどんなものかという問いに、岡は「チョウを採集しようと思って出かけ、みごとなやつが木にとまっているのを見たときの気持だ」と答えているのですが、その一方で自分自身のことについて「私についていえば、ただ数学を学ぶ喜びを食べて生きているというだけである。そしてその喜びは「発見の喜び」にほかならない」とも書いていましたから、言うなれば、世間的には立派な大数学者であっても、蓋を開けてみれば、ずっと虫網をもって野山で蝶を追っかけている昆虫少年のようなものだった訳です。 
 
しかも、それを瞬発的にやるのではなくて、ひとつの蝶、もとい、ひとつの問題を解くのに数か月、長いときには一年から数年かけて、緊張したり、ゆるんだりということをやっていく。岡はそのことについて、「種子を土にまけば、生えるまでに時間が必要であるように、また結晶作用にも一定の条件で放置することが必要であるように、成熟の準備ができてからかなりの間をおかなければ立派に成熟することはできないのだと思う」と述べた上で、後進のために次のようにアドバイスしています。 
 
だからもうやり方がなくなったからと言ってやめてはいけないので、意識の下層に隠れたものが徐々に成熟して表層にあらわれるのを待たなければならない。そして表層に出てきた時はもう自然に問題は解決している。」 
 
さすがゆるみのプロだけあって、説得力のある言葉ですが、その考えのことごとくに通底しているのは大自然との一体感です。 
 
よく人から数学をやって何になるのかと聞かれるが、私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。咲いているのといないのとではおのずから違うというだけでのことである。」 
 
今期のおうし座もまた、ひと足早く春の野に咲くスミレになったつもりで、己の意識の下層に隠れていた種子から花を咲かせていく姿をイメージしてみるといいでしょう。 
 
 
参考:岡潔『春宵夜話』(光文社文庫) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ