東 啓介連載「tone0714」vol.4

連載4回目は、東さんの“負けず嫌い”にまつわるエトセトラ。
自ら認める大の負けず嫌い。
それは、彼の友人やファンのみなさんもよくご存じのようで……。

東啓介
「tone0714」の意味:東さんの愛称「とん」と、“音色”や“濃淡”を意味する「tone」を掛け、そこに誕生日7月14日の数字を組み合わせたタイトル。

東啓介はどれほど“負けず嫌い”なのか

相手によっては、三男坊気質をぞんぶんに発揮

――東さんは、高いコミュニケーション能力と、持ち前のポジティブ思考、そして実行力をお持ちですよね。
仕事において数々の信頼を勝ち取ってこられたのも、それらを発揮されているからかと。
実際この『MORE』でも、2021年12月に行った初めての取材で、副編集長が「この人はインタビューの取れ高がすごい! そしてハートがとんでもなく温かい」と驚いて連載の運びになったワケですし。
そんな東さんですが、自らの性格については、「かなりの負けず嫌い」だとおっしゃいますよね。

:そうですね。身近な部分で話すと、最近、自宅に友達を呼んでごはんを食べることが少しずつ増えてきて。養成所からのつきあいの、仲のいいヤツがいるんですけど、先日もそいつと家でごはんを食べたあと、一緒にお酒を飲んでいて。
普通だったらだいたい、グラスが先に空いたほうが「新しいの入れるね」って、おかわりのドリンクを作るじゃないですか。でも、そいつとは“あっち向いてホイ”で負けたほうがドリンクを作るルールがあって、毎回それでモメるんです。
東 啓介
――モメる? ルールがあるのにですか?

:はい。僕の“三男坊”の部分が出ちゃうんですよ、そいつに負けた時に。

「いや、今のは違う」
「その『最初はグー』を言うスピード、いつもと違うじゃん!」
みたいに、30分くらい使って負けを認めない発言をしちゃうんですよ。「3本勝負にしよう!」とか「もう1回!」とひたすら食い下がる(笑)。

――お酒のおかわりが遅れるよりも、勝負に負けるのが耐えられないと(笑)。

僕、負けるとすぐスネちゃうんですよ
“桃鉄”(ボードゲーム形式のテレビゲーム『桃太郎電鉄』のこと)とか、複数人で遊ぶゲームがあるじゃないですか。
明らかに自分がほかのプレーヤーに狙われてると思ったら、「もうやめた。マジでやだ。ズルい!」って駄々をこね出すっていう、アレです。めちゃくちゃ子供。

しかも僕は、「勝つまでやる」じゃなく、「どうにかこうにかして勝つ方向にもっていく」という、かなりタチの悪いタイプで(笑)。
もちろん、相手の友達も僕に文句を言ってきますよ。「それはズルいぞ」って。僕は「いや。ズルいとかないから、もう1回“あっち向いてホイ”をやろう」と、頑として譲らないんですけど。


――そ、それは……。

:ええ。めんどくさいヤツなんですよ、僕。
まあ、友達……というか、親友だから許してもらえてる。コイツとだから、いつも真面目にふざけられている。いつもつき合ってくれてありがとう(笑)。
東 啓介

“負けず嫌い” と “必要とされる自分の個性”

自分を貫き通すことと我を通すことはイコールじゃない

――連載第1回のインタビューで、「苦手なもの」は「気配りのできない人」とおっしゃっていました。
では、東さん的に「気配りができる人」とは、どういった方ですか?

自分勝手になりすぎない人、かな
もちろん、「自分を貫き通す」ことは大事だし、素敵ですよね。ただ、周りが見えていない状況で自分を貫き通すのは、「我を通す」こと。それで周りに迷惑をかけたりするのはちょっと……。

――そういう人を見るとスーッと引いちゃうんですか。

サーッと引きます。昔からですね。
やっぱり下町に住んでいたからですかね? 筋が通ってないことや、理不尽なことが嫌いで。

――でも、あっち向いてホイの負けは……(笑)

すみません、僕も自分勝手でしたっ(笑)! 
言い訳ではないんですけど、あっち向いてホイの場合は、気のおけない友達との100%遊びでのことなので、ノーカウントです! 
えっと、自分勝手になりすぎるというのは、「それ、今必要?」みたいなことを言うとか……。
あ、これ今、全部自分に返ってきてるな、どうしよ……(汗)

――自分に返ってくるブーメラン発言、記事にちゃんと載せますね(笑)。

えぇ、やだーー!(笑)

――でも、仕事とプライベートはマインドが別、ということですよね? 甘えちゃうというか?

:そうそう!(焦) それは強調してください(笑)。

話を戻しますが、「あれ持ってきて」とか「これやっといて」とか、誰かに指示する人、苦手なんですよ。そういう人たち同士って、ぶつかり合うことも多くて。遠巻きに「今モメないで、あとでやって!」とか、思っちゃいます。
多分、僕がせっかちなのもあるんです。
いい作品を作るための衝突ならいいんですけど、そうじゃない部分で停滞するのが好きじゃなくて。たとえば、ドラマの撮影だったら、いいカットを録りたくてやってることで待機時間が延びても気にならないですし。「おなか壊しちゃって」もアリです。体調不良はしかたのないことだから。でも、やれるのにやりたくない、今できないとかは、ちょっと意味が分からないですね。
東 啓介

「悔しさ」を放置すれば「負け」になる

――お話をうかがって、東さんの周囲への配慮や共感力、向上心の高さがあいまって、とっても人間味にあふれる印象を受けました。

:以前、オーディションを受けた時、とある演出家さんに「君は人間味がありすぎるから、ちょっとこの役はできない」と言われて、不合格になったことがあったんです。
でも、僕的には嬉しい言葉でした。「僕は人間だし」って。
で、すぐ気持ちを切り替えて、また別のオーディションを受けました。あ、これも“負けず嫌い”を発揮してますね(笑)。

東 啓介
僕の“人間味が強い”のは、やっぱり“負けず嫌い”な性格から来ているのかもしれません

たとえば舞台のダブルキャストで、僕が先輩にダメ出しをされたとしますよね。先輩は演じながら、僕に指摘した部分の答えをみせてくれて、それは本当にありがたいことなんです。でも、一方で「それと同じことを絶対したくない」って思っちゃう自分もいるんです。僕の色じゃなくなっちゃうような気がして。でも、結局やるんですけど(笑)。
教わったことをそのままやるのではなく、それとは違うことを自分の頭の中で考える、ということは常にしています。そのせいで、こんがらがったりするんですけど。「そのまま素直にやればよかった……」って(笑)。

「(ほかの人と)同じことを絶対したくない」っていう思考は、多分2.5(2.5次元舞台。マンガやアニメを原作とする舞台作品のこと)の経験からきてます。
若手俳優がたくさん待機している環境は、言い換えると「自分じゃなくても、ほかに演じる誰かがいる」という環境でもあるわけで。当時、ずっと「自分ってなんなんだろう」って考えていました。事務所の社長にも「あなたが必要と思われる存在になりなさい」とアドバイスされました。気持ちが揺れている僕を見ていたんでしょうね。
だから、「“我を通す”とは違う”必要とされる自分の個性”を探して、大事にしていこう」と思っています。
東 啓介
――経験と絶え間ないフィードバックが、現在の東さんを作り上げているんですね。

:フィードバックというか……全部“負けず嫌い”でできてますね。
「悔しさ」をそのままにしておくのは、「負け」を認めることになっちゃうので、放っておけないんです。

それに、言われてるうちが花ですし。むしろ、厳しいお言葉をくださってありがとうございます、と思っています。全部、僕のバネになっちゃうんで!
東 啓介
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プロフィール

ひがし・けいすけ ●1995年7月14日生まれ。東京都出身。2013年、『テニスの王子様』(2ndシーズン)で俳優デビュー。その後はミュージカル作品を中心に活躍し、『ダンス オブ ヴァンパイア』(2019年)では帝国劇場の舞台にも立ち、近年では『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』や『マタ・ハリ』(ともに2021年)などに出演。また、映像作品にも活躍の幅を広げる。2022年1月からオンエアされたTBSドラマ『ファイトソング』に烏丸薫役で出演。6月、フジテレビドラマ『ナンバMG5』に“最後の敵”として出演。今年の10月6日~29日、日生劇場で上演されるミュージカル『ジャージー・ボーイズ』に、ボブ・ゴーディオ役(Wキャスト)で出演。
■日生劇場ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』公式ホームページ https://www.tohostage.com/jersey/

東 啓介:公式サイト&公式SNS

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撮影/齊藤晴香 ヘア&メイク/yuto スタイリスト/青木紀一郎 取材・文/中川 薫