コミック・バディ・スリラードラマ『誘拐の日』に、泣いて笑ってほっこり!

CONTENTS
  1. コミック・バディ・スリラードラマ『誘拐の日』に、泣いて笑ってほっこり!
  2. あらすじ
  3. ここが見どころ!
  4. 見どころ1:頼りない誘拐犯と誘拐された天才少女との奇妙なかけあい
  5. 見どころ2:ストーリーを複雑にする個性的な共演者
  6. 見どころ3:ユン・ゲサンのふり幅のすごさ
  7. Amazon Prime Videoで独占配信中

韓国ドラマ大好き! なライターが、ぜひおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。

今回は、間抜けな誘拐犯と11歳の天才少女の不思議な共助関係を描いた、コミック・バディ・スリラー『誘拐の日』のあらすじや見どころを紹介します。

誘拐の日 ミョンジュン(ユン・ゲサン)とロヒ(チョン・ユミ)2ショット

写真左から、誘拐犯ミョンジュン(ユン・ゲサン)、誘拐された少女ロヒ(チョン・ユミ)。

Amazon Original『誘拐の日』
全12話
主演:ユン・ゲサン、ユナ、キム・シンロク、パク・サンフンほか
Prime Videoで独占配信中
©ASTORY Co.,Ltd ©KT StudioGenie Co.,Ltd ©ENA

あらすじ

白血病を患う娘の手術費用に悩むキム・ミョンジュン(ユン・ゲサン)は、元妻ヘウン(キム・シンロク)から提案された身代金目的の誘拐を、やむなく決意する。誘拐を実行するべく目的地の豪邸へ向かったミョンジュンの車に飛び込んできたのは、なんとターゲットの少女ロヒ(ユナ)。衝突はしなかったものの、気を失ったロヒを自宅へ連れ帰ると、目覚めた彼女は記憶を失っていた。とっさに父親を名乗るミョンジュンだったが、“天才児”と評判のロヒに丸め込まれて、こき使われるのだった。そんな中、ロヒの両親の死体が発見され、監視カメラに映っていたミョンジュンは、殺人の容疑をかけられ……。

ここが見どころ!

今回紹介するドラマ『誘拐の日』は、作家チョン・ヘヨンの同名小説(日本語版もあります)が原作。ちょっと気の弱い間抜けなお人好しだけど、病気の娘のために誘拐まで決心する誘拐犯のミョンジュンと、記憶を失くした天才少女・ロヒとの物語を描いています。
事件の真相をめぐるストーリーはミステリースリラーだけど、主人公のミョンジュンとロヒの関係性はバディもののロード・ムービーを観ているかのよう
ラブコメディやラブロマンスといった華々しさはないけれど、「人を労わり、思いやる気持ち」を様々な角度から描いた感動的なヒューマンドラマの要素が詰まっていて、第1話から、胸がいっぱいになります。 
以下、3つのおすすめポイントです。

見どころ1:頼りない誘拐犯と誘拐された天才少女との奇妙なかけあい

誘拐犯ミョンジュンを演じているのは、大ヒットノワール映画『犯罪都市』(2017年)で、最凶最悪な犯罪集団のボスを演じたユン・ゲサン。少女ロヒ役は、倍率500(!)のオーディションを突破してキャスティングされた天才子役ユナが担当。この二人のかけあいが、“誘拐”という重苦しく物騒な言葉からは連想できないくらい、不思議とほっこりしてしまう。重ためのスリラーなのに! そのやりとりはというと……。

・目覚めたロヒに「自分は父親だ」と嘘をつくも、つじつまの合わない返事ばかりをして、そのたびに“孫の手”ではたかれるミョンジュン
・白チヂミ(賞味期限切れの小麦粉だけで作ったチヂミ)を食事で出すも、ロヒに作り直しを命じられるミョンジュン
・あまりの頼りなさにロヒに「おまえ」呼ばわりされるミョンジュン

  • 誘拐の日 ロヒ(チョン・ユミ)のソロカット

    白チヂミにご立腹のロヒ。記憶を失ったとは思えない冷静さでミョンジュンを尻に敷いていく。

完全に、“気の強い娘の尻に敷かれた気の弱い父親”の図です(笑)。
それもそのはず、記憶を失う前のロヒは、豪邸に住み、数か国語を自在に操る天才少女。それなのに、記憶を失ってからは、再開発の街にあるボロボロの家で安物の服を着て、具なしチヂミやインスタントラーメンのような食事を出される始末。一方、どんなに文句を言われても、めげずに食事を用意し、ロヒを本当の娘のように見守るミョンジュンに、イライラしっぱなしのロヒも次第に心を開き始めます。

二人がドタバタの父娘劇を披露している間にも、事件の謎は深まっていく。
身代金についての連絡が取れず、様子を見に行ったミョンジュンは、ロヒの両親が自宅で殺害されたことを知ると同時に殺人犯として指名手配されてしまう。少しだけ記憶が戻ったロヒは、真犯人を探し出すため、自分の記憶を取り戻すため、頼りないけどあったかいミョンジュンの手を取り、警察の捜査網をかいくぐっていく。

誘拐の日 ミョンジュンとロヒの2ショット

真犯人を突き止めるべくタッグを組んだミョンジュンとロヒ。もちろん、作戦の指示&主導権は頭脳明晰なロヒ。

また、関係性のスイッチングも、二人のバディ度を高めています。
頭脳明晰なロヒと間抜けなミョンジュンの関係性は、ロヒのピンチになると状況が逆転。柔道の元国家代表選手だったミョンジュンが、か弱いロヒを全力で守る姿はヒーローそのもの。また、ロヒに愛情を惜しみなく与える姿も男前です。年相応の姿を見せる二人のギャップがたまりません。

見どころ2:ストーリーを複雑にする個性的な共演者

  • 誘拐の日 キム・シンロク(ヘヨン役)ソロカット

    キム・シンロク演じる、ミョンジュンの元妻ヘウン。

  • 誘拐の日 刑事サンフン(パク・ソンフン)のソロカット

    ロヒにまつわる事件を担当する刑事サンフン(パク・ソンフン)。その正義感ゆえに苦労も多く……。

主役二人のかけあいも素晴らしいのですが、脇を固める共演者の演技も秀逸。
まずは、ミョンジュンの元妻のヘウン役を演じたのは、『財閥家の末息子』(2022年)や『怪物』(2023年)でおなじみのキム・シンロク。難病の娘を夫に押し付けて蒸発したあげく、いきなり連絡を寄越して治療費のためにロヒを誘拐しろ、と気弱な夫をそそのかす悪妻ヘウンのふてぶてしさたるや! 欲と狂気、そして自身の境遇への憎悪を織り交ぜつつ、ここまで憎々しく演じることができたのは、キム・シンロクの悪鬼のような演技力のおかげでしょう。

また、事件を追う刑事サンユンを演じるのは、『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』(2022年)での怪演が記憶に残る、パク・サンフン。当時のアクの強いキャラクターが思い出されて、正義感あふれる刑事役なのに、ついうち疑いながら観てしまうのも本作のおもしろいところ。

クセが強すぎる共演者の存在が変数となって、物語をかき回してくれます。
また、いま話題の俳優たちがカメオ出演しているので探してみてくださいね。

見どころ3:ユン・ゲサンのふり幅のすごさ

  • 誘拐の日 ミョンジュン(ユン・ゲサン)ソロカット

    振り返る姿に、気弱でお人よしなミョンジュンの人柄がにじんでいる。

俳優ユン・ゲサンの代表作といえば、冒頭でも触れた、マ・ドンソク主演の韓国ノワール映画「犯罪都市」シリーズの第一弾の悪役チャン・チェンの姿でしょう。金に執着し、敵だろうが仲間だろうが、気に入らなければ斧を振り回す、とんでもなくイカレたギャングのボスの印象が強い。ところが、本作のミョンジュンは、“孫の手”を振り回す11歳の少女にあごで使われるわ、文句をつけても完膚なきまでに論破されるわ、ヨレヨレになるマヌケっぷりで、悪の要素ゼロ(笑)。一応、誘拐犯なんですけどね。
狂気のヒールから、頼りない誘拐犯まで、演技のふり幅を存分に示してくれたユン・ゲサンですが、この方の芸能界でのキャリアスタートは、アイドル歌手。1999年にデビューした、5人組の国民的アイドルグループgodのラッパー担当でした(2004年に一度脱退後、2014年に復帰。現在もgodで音楽活動を継続中)。

このgodは、2PMやTWICE、ITZY、NiziUをプロデュースしたパク・ジニョンが“プロデューサーとして初めて手がけたアイドル”であり、あのBTS(防弾少年団)の生みの親であるパン・シヒョクが“作曲家として参加した最初のアイドル”。いまや世界の音楽業界をけん引するお二人が若かりし頃に手がけた伝説のアイドルグループだったんですね! godの楽曲は、韓国ドラマを観ている方であれば、一度は耳にしたことがある名曲ばかり。ぜひ、チェックしてみてください♪

ちょっぴり話がそれてしまいましたが……。

犯人は誰か、その動機は何なのか、展開がまるで読めないまま、最終回にもつれ込み、衝撃的なラストで締めくくるドラマ『誘拐の日』。全12話中、一度も中だるみすることなく、ラストまで反転、反転、また反転! を繰り返しながら、衝撃のラストまで駆け抜けます。

ユン・ゲサンを知っている方は「こんなユン・ゲサンは観たことない!」と思うでしょうし、彼を知らない方は「こんなすばらしい俳優さんがいたなんて……」「子役の演技がうますぎる!」と、新発見の連続で楽しめるはず。だまされたと思って、一度観てみてください♡

Amazon Original誘拐の日
全12話
Prime Videoで独占配信中
©ASTORY Co.,Ltd ©KT StudioGenie Co.,Ltd ©ENA

Amazon Prime Videoで独占配信中

Amazon Original『誘拐の日』
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。最近の趣味は「各国でローカライズされた韓国料理を食べること」。