12星座全体の運勢

「引いた視点で俯瞰する」

暦の上で秋となる「立秋」の直前、まさに夏真っ盛りの8月4日に水瓶座で満月を迎えていきます。この時期にはお盆をひっくり返したような激しい雨(覆盆の雨)が降るとされてきましたが、今回の満月は変革と普及をつかさどる「天王星」と激しい角度をとっており、まさに意識の覚醒を促されるタイミングとなりそうです。

テーマはずばり、「現時点での自分のレベルの把握」。2020年の年末にはいよいよ約200年単位の占星術上の時代の移り変わりがあり、モノの豊かさの「土」の時代から、情報や繋がりの多様性が価値基準となる「風」の時代へなどと言われていますが、今回の満月はそうした時代の変化にどこまで同調できているか、またできていないのかということが浮き彫りになるはず。

そこにはかなりの個人差が生じるものと思われますが、とくに痛みや違和感、プレッシャーの感じ方などは、これまでの生き様やその蓄積、ふだん触れている情報や立ち位置、周囲の人間関係、属するコミュニティなどによってまったく異なってくるでしょう。

ともに地球に生き、一見同じ位置にあるように見える人間同士でも、進化における種類と段階の違いは厳然と存在するのだということを、今期はよくよく念頭に置いていくべし。

射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「乗客ではなく」。

射手座のイラスト
人間は限られた時間しか生きられません。そのこと自体は誰もが知っていることですが、実際には貴重な時間を自分にとって特別な意味を持つことに使おうという気概は、歳を追うごとにどんどん弱くなっていくように思います。中年を過ぎて老年になってしまえばもう人生の方向性や価値はほとんど決まってしまうのだと考える人も多いのではないでしょうか。さながら、自分は人生のパイロットではなく、乗客のようだと。

しかし、映画化もされたスウェーデンの作家ヨナス・ヨナソンの小説『窓から逃げた100歳老人』の主人公であるアランという老人は、そうではありませんでした。

彼はつねにいい加減に、確信より好奇心にしたがって生きてきたのですが、どういう訳か20世紀の重大事件の多くで重要な役割を果たしてきました。それで、老人ホームで行われる彼の100歳の誕生日パーティーには、市長や新聞記者などたくさんの来賓が訪れる予定だったのですが、前日になってふと彼はこんな風に思います。

老人ホームが自分の終の棲家ではない。“どこか別の場所”で死のう。そう決めたのだ、と。幸いにも、彼はホームを脱走してすぐに大金の詰まったスーツケースを手に入れ、彼があまり品行方正な人間ではなかったことも相まって、驚くべき展開をしていきます。

それでも彼は、そうした最中で1905年に誕生してからの人生をおもしろおかしく振り返りながら現在の冒険を進行させていき、101歳になった頃にはずっと若い女性(85歳)とともにバリで新たな人生を踏み出すにいたるのです。

この小説のメッセージははっきりしています。もし人生の操縦席に座るチャンスがあると感じたときは、迷わずパイロットになりきること。

そして、今期のいて座もまた、乗客席から人生を眺めるのではなく、操縦席から人生の景色を臨んでいけるかが少なからず試されていくはず。

アランほど老齢ではなくても、迷った時は自分の“終の棲家”はどこにしたいか、ということを考えてみるといいかも知れません。


出典:ヨナス・ヨナソン、柳瀬尚紀訳『窓から逃げた100歳老人』(西村書店)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ