12星座全体の運勢

「<新しい日常>への通過儀礼」

暦の上では秋が始まる「立秋」を過ぎて最初の新月を迎えるのが8月19日。それは、暑さが落ち着く「処暑」すなわち太陽が乙女座に入る直前、体感的にも夏の終わりを感じさせてくれる蜩(ひぐらし)の鳴く獅子座終盤あたりで起きていきます。

そんな今回の新月のテーマは、「新しい日常へ」。それはどこか空々しく響いてしまう上からの号令によってみな一斉に同じところから始まるものではなく、あくまでここしばらくの悪戦苦闘や悶え苦しむ期間をやっとの思いで抜け出した結果、流れ着いた先で自分がもうすでに新しい日常に立っていることを後から実感していくはず。夢から醒めた後の起き抜けの朝のひとときのようにおごそかに、しかし、確かにこれまでとは決定的に違う世界にいるという確信を胸に、新たな門出の仕度を整えていきましょう。

「もはや夜はなく、<救い主である神>が人間たちを照らすが故に、ランプや太陽の光は要らなくなる」(『ヨハネ黙示録』第二十二章、5節)

この場合の<神>とは、他でもない自分自身であり、あるいは古い自分を先導する新しい自分のことなのだと思います。

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「生命を表現せよ」。

山羊座のイラスト
インドという国の歴史は、<自己実現の愛と自由>を体現するドラヴィダ族などの原住諸族と、<社会組織の秩序と整合性>を求める古代に侵入してきた肌の色のうすいアーリア人種との闘争の歴史であり、両者の混淆によって国ができあがったのであるから、近代以降ふたたび始まったアーリア人種(イギリス人)の侵入に対しても、インド固有の高い精神性によって同化し、取り込んでしまえばいい。

こうした途方もないビジョンを投げかけてみせたのは、東洋人として初めてノーベル文学賞を受賞した国民的詩人であり思想家タゴールですが、受賞の同年に刊行された「生の実現」を意味する『サーダナ』には、先のようなビジョンに裏打ちされたじつに大らかな生命観が打ち出され、示唆的なことばが多く出てきます。

中でも、特に注目したいのは「生命の特色はそのものだけでは完全ではないという点である。生命は外に出なければならない」という何気ない一文です。

「外」とは一体何のことでしょうか。そこにはさまざまな解釈が可能ですが、おそらくここでは「無限の海」のことであり、そこには国としてのインドの歴史を肯定的に受け入れる思想が前提にあったのではないでしょうか。

先の一文のすぐ後には、「生命の真理は外と内との交流のなかにある」とも、「それは、生命を得るためにだけでなく、さらに生命を表現するためでもある」とも付け加えられています。

自己の内へと守りを固めて閉塞するのではなく、外との交流を通して、生命を表現せよ。それが生命本来の姿であり、自然なリズムなのだと語る彼のことばは、いよいよ運命の2020年下半期へと入っていく今期のやぎ座にとってもそっと背中を押してくれるような印象を受けるはず。

色々な意味で小さくまとまらないよう、その大らかなビジョンを取り込んでいきたいところです。


出典:タゴール、美田稔訳「サーダナ」(『タゴール著作集8』第三文明社所収)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ