12星座全体の運勢

「何かが“やってくる”まで」 

二十四節気でみると10月23日の「霜降」と11月7日の「立冬」のちょうど中間にあたる10月31日の深夜におうし座満月を迎えていきます。 

 霜降とは、これまでと明らかに空気が変わって、露が凍って霜になり始める頃合いで、「立冬」はいよいよ冬の到来ですが、今回の満月もまさに時代の移り変わりを体感していくような特別なタイミングとなっていきそうです。 

 というのも、今回の満月は牡牛座の天王星と正確に重なっているから。天王星は「既存の構造からの逸脱と変革」の星ですが、これは今年から来年へ向けて既に起きつつある大きな流れを象徴する雰囲気の根底にあるもの。そして、今回のテーマは「予測不可能なものの到来」。 

 将来に備え、ただ現実的なコストを算出したり、リスク回避に励んだり、身を固めていくだけでは、何かが決定的に足りない。ただし、その「何か」というのは、日常という固いアスファルトがめくれるように、これまで疑われることなく固定化されてきた文脈にずれが生じなければ、けっして到来することはありません。 

 その際、鍵となってくるのは、ちょっとした違和感をスルーせずに育てていくこと。月がまんまるに膨らみきっていくまでは、分かりやすい解答を求めたり、そこに安住するのではなく、「あえて」「今さら」「あらためて」というひと手間や余計なプロセスを大切にしてみるといいでしょう。 

魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「<笑い>のある宇宙」。

魚座のイラスト
科学と宗教の対立と乖離がますます大きくなっているように感じる現代において、人々は(特に日本人は)科学を過剰に神聖視する一方で、この世界で人間が(あるいは自分が)置かれている不満足で途方に暮れる状況の「未解決性」にけりをつけてもらうことを期待して、自己啓発や占いなど、既存の宗教の代替物を求め続けているように感じます。 
 
こうした現代の状況について、1947年に没した現代でも屈指の哲学者であるホワイトヘッドは『ホワイトヘッドの対話』という本において、<笑い>のない宗教は本当の宗教とは言えないことを力説した上で、こう述べています。 
 
「儀式のもつ緊張は、それが不自然であるために、とても耐えがたいものになります。だから、ご存知のように、アテナイ人は悲劇のあとにいつもサチュロス(喜劇)をしたんです」 
 
彼は<笑い>こそが生活全体のうちで生のバランスを回復する上で不可欠なものだと考えており、それを示すかのように、次のようなやりとりを披露してみませます。 
 
ホワイトヘッドの「『自省録』を書いたマルクス・アウレリウスは書物を遺すよりローマ皇帝としての務めをよりよく果たすために時間を使うべきだった」という発言に、夫人は「それは哲学者としての縄張り意識のせいじゃない?」というツッコミを入れるのですが、それに対しホワイトヘッドは「そんなものはないよ、もし一生で何度も違った生を送れるのなら、自分は大きなデパートの社長になりたい」などと言って夫人を呆れさせるのです。 
 
おそらく、こうしたユーモアこそ彼の構想した有機的でリズミカルな創造過程を重視するコスモロジー(宇宙論)の根底にあるものであり、そこから「生き生きしていない観念による教育は、無用であるだけではありません。なによりも有害なのです」といった社会批評も生まれてきたのではないでしょうか。 
 
今期のうお座もまた、自身の直面している状況やおのれの人生の「未解決性」にけりをつけるにあたって、何よりもまず、どうしたら<笑い>を取り戻せるかを大切にしていきたいところです。 
 

参考:森口兼二・橋口正夫訳『ホワイトヘッド著作集 9』(松籟社) 
12星座占い<10/18~10/31>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ