12星座全体の運勢

「風の便りを受け取って」 

2月19日には節気も「雨水」に変わり、雪や氷が溶けていよいよ春に向けて草木も芽吹き始めますが、そんな折の2月27日にはおとめ座で満月を迎えていきます。 

今回の満月は、2月18日に体制と制約の土星と激しくぶつかり合った変革と解放の天王星と歩調を合わせつつ、後者の影響力を一気に押し広げていくような配置となっていますが、そのテーマを端的に表すとすれば「癖や偏りの昇華」となるでしょう。 

つまり、無理にエネルギーを集中させて単発的に興奮していくというのではなく、みずからの身体の要求を素直に聞いて、瞬間瞬間の生命の流れにうまく乗っていくなかで、ふつふつと静かな快感が湧いてきて、ごく自然に発散が起きてくるというイメージです。 

ちょうどヒヤシンスの花が開いていく時期でもありますが、幕末に伝わったこの花には「風信子」という漢字が当てられています。「風信」は風の便りという意味も持っており、風に漂うほのかな香りがそっと春の便りを届けてくれますが、今期はそうした微細な変化の流れにきちんと身をもって反応・順応していけるかどうかが、各自においていつも以上に問われていくのではないでしょうか。

牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「生存の技法」

牡牛座のイラスト
過酷な現実世界と有限な人間とのあいだの緊張という問題を追求しつづけた思想家ハンス・ブルーメンベルクは、『われわれが生きている現実』という著作の中で、生活世界の機械化や自動化といった近代科学の所産としてのテクノロジーの人間への影響について、次のように述べています。 
 
「フッサールの考えによれば、人間は技術化を進めることで、根源的直観の上に成り立つ明白な実践的遂行に忠実たることをやめるのだ。[…]技術化によって、人間はみずからを悟性の可能性へと限定し、理性の要請から逃げてしまう」 
 
ここでいう「悟性」とは、感性によってぼんやりとキャッチされたイメージを「ああ、これはテーブルだ」などと判断する機能のことですが、それは人間が生存していく上でとても便利な必要不可欠な機能である一方で、技術によってひたすらその効率や結果のみを目指すようになっていけば、事柄の真の理解をさしおいてしまうようになり、ブルーメンベルクはそのことを「理性の要請からの逃亡」といい、「洞察が失われていくことが逆に喜ばしいことになる」とも指摘している訳ですが、これは現代の日本人の言論に対する態度をピタリと予言しているようにも思えます。 
 
では、AIの登場によって技術化がますます浸透していくであろう現状に対して、私たちはどうすればいいのか。ブルーメンベルクはつねに完了態にある科学に対し、いつでも新たに着手する哲学的思考こそが「新たな生の意志」を把握することができるというフッサールの構図にならって、こう述べます。 
 
それは、純然たる客観的存在の事実性によってのみ有意味なものとなる(技術的)世界に抵抗し、自己に忠実であるように訴え、そしていったん把握した同一の意味を目的論的にどこまでも追求し続けるよう呼びかけるのである」 
 
目的論的に、すなわち、何のために。今期のおうし座もまた、たまたま中の原理が気になった人工物であれ、ふと日常生活でひっかかりを感じた自動化されたプロセスであれ、自分の理性の要請からいかに逃げず、哲学的思考を展開させられるかが問われていくのではないでしょうか。 


参考:ハンス・ブルーメンベルク、村井則夫訳『われわれが生きている現実』(法政大学出版局) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ