12星座全体の運勢

「花時へ立ち返る」 

いよいよ3月20日に「春分」を迎え天文学的にも春となり、その後はじめての満月が3月29日にてんびん座8度(数え度数で9度)で形成されていきます。 

今回のテーマは「触発されること」。たとえば、過去の偉大な芸術や文学作品の洗練された様式に触れることは、瞑想と同じような効果があるのではないでしょうか。いずれにせよ、混沌とした社会の中で新しい価値をさがそうとして迷っている時には、まずもって原点に立ち返ることが重要です。 

ちょうど、この時期の季語に「花時」という言葉があります。古くから、花と言えば桜。ですから、普通は「花時」といえば、桜の花が美しく咲いているあいだのことを言うのですが、とはいえ、私たちは桜が咲く前からいつ咲くかと心待ちにしたり、散り始めてからの方がより風情を感じたりと、それぞれにとっての「花時」を持っていたように思います。 

松尾芭蕉の「さまざまな事思ひ出す桜かな」という俳句のように、その時々に刻まれた思い出は、桜を見るたびに何度も蘇ってくるもの。もしかしたら、ひとりひとりの心の中に、「花時」という特別な時間軸があるのかも知れません。 

その意味で、今期は自分のこころをもっとも触発してくれるような「花時」に立ち返っていけるか、そこでしみじみとしていけるかということが、大切になってくるはずです。 

蟹座(かに座)

今期のかに座のキーワードは、「無縁と横断」。

蟹座のイラスト
経済生活ということを人生の中心に据えている現代の日本人は、何をするにしてもどこかで貨幣に縛られてしまっているところがありますが、こうした「目に見えない」精神の在り様が目に見える「お金」に縛られてしまうという関係性の在り方について、どのように理解したらいいのでしょうか。 
 
その点で参考になるのが、歴史学者の網野善彦の『無縁・公界・楽』です。ここで網野は「無縁」すなわち「縁切り」ということをテーマにしています。 
 
「縁」という仏教用語が下敷きになっていることからも分かるように、「無縁」とは年貢や地縁などさまざまな形でひとを縛りつける支配関係や決まりごとに対する民衆の生活そのものの底から湧きおこってくる自由・平等・平和の理想への本源的な願いを表現した言葉であり、網野によればそうした無縁の原点は他ならぬ「家」にあるのだと言います。 
 
家と言えば、資本主義社会では「私的所有の原点」とされていますが、中世日本では逆に「垣の内は氏神の守る聖域」であり「権力の介入を排除できる「不入」の場」とされ、外ではどんな仕事をして、誰と付き合っていようと、いったん家に帰れば社会と関わるすべての縁が切れて、世俗から無縁なところで生きていける平和領域だったのです。 
 
つまり、そこでは無縁とは「目に見えない世界」のことで、かつての日本人はこの「無縁」を“てこの原理”にして横のつながりをも作っていきました。例えば、網野は時宗の一遍上人を取りあげ、そこでは乞食であろうが遊女であろうが侍であろうが、いったん一遍上人のグループに入ると、「~アミ」という名前を名乗ってフラットな関係の仲間になったのだと述べています。 
 
確かに、『一遍聖絵』などを見ると、ハンセン病にかかっている病人や遊女や乞食などが集まって、楽しそうに一緒に暮らしており、日本にもかつてはそういう伝統があったことが分かります。 
 
今期のかに座もまた、どうしたら自分の生活にそうした「無縁の原理」を持ち込めるのか、それによって様々なしがらみを横断していけるか、ということを考えてみるといいでしょう。 


参考:網野善彦『無縁・公界・楽』(平凡社ライブラリー) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ