12星座全体の運勢

「花時へ立ち返る」 

いよいよ3月20日に「春分」を迎え天文学的にも春となり、その後はじめての満月が3月29日にてんびん座8度(数え度数で9度)で形成されていきます。 

今回のテーマは「触発されること」。たとえば、過去の偉大な芸術や文学作品の洗練された様式に触れることは、瞑想と同じような効果があるのではないでしょうか。いずれにせよ、混沌とした社会の中で新しい価値をさがそうとして迷っている時には、まずもって原点に立ち返ることが重要です。 

ちょうど、この時期の季語に「花時」という言葉があります。古くから、花と言えば桜。ですから、普通は「花時」といえば、桜の花が美しく咲いているあいだのことを言うのですが、とはいえ、私たちは桜が咲く前からいつ咲くかと心待ちにしたり、散り始めてからの方がより風情を感じたりと、それぞれにとっての「花時」を持っていたように思います。 

松尾芭蕉の「さまざまな事思ひ出す桜かな」という俳句のように、その時々に刻まれた思い出は、桜を見るたびに何度も蘇ってくるもの。もしかしたら、ひとりひとりの心の中に、「花時」という特別な時間軸があるのかも知れません。 

その意味で、今期は自分のこころをもっとも触発してくれるような「花時」に立ち返っていけるか、そこでしみじみとしていけるかということが、大切になってくるはずです。 

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「TAZ」。

獅子座のイラスト
コロナ禍におけるリモートワークやオンラインツールの普及は、企業と個人との関係性を確実に変えただけでなく、平成の時代に抱かれていたようなインターネットの持つツールとしての可能性に、令和に変わって改めて光を当てられるきっかけとなっていったように思います。 
 
ここで思い出されるのが、90年代に覇権主義的なグローバリズムへの抵抗として書かれ、世に出たハキム・ベイの『T.A.Z.―一時的自律ゾーン、存在論的アナーキー、詩的テロリズム』です。 
 
本のタイトルである「T.A.Z.」すなわち「一時的自律ゾーン」とは、「古い社会の殻の内部での新しい社会の核心を築く」ための一形態であり、たえず新しい世界状況に適合させるために「リライト」されねばならないものとして構想されました。 
 
例えば、2001年のアメリカにおける同時多発テロ事件は反グローバリズムの動きが強まる大きなきっかけとなりましたが、2003年に書かれた第二版のまえがきには、次のような一節があります。 
 
「TAZ」は、地理的な嗅覚、触覚、味覚を備えた肉体的空間に存在せねばならない(サイズからすると、いわば、大都市に対するダブルベッドの大きさ)――さもなければ、「TAZ」は、もはやひとつの青写真か夢想でしかない。ユートピア的な夢は、(中略)生きられた生、現実的存在、冒険そして愛の代わりにはならないものである。仮にあなたが、メディアというものを生活の中枢とするならば、あなたは、媒介された/メディア化された生を送ることになる―しかし「TAZ」は、メディアを介さない直接的なものであることを、さもなくば無であることを望むのである。」 
 
2021年現在、フリーランスという言葉が人工に膾炙し、大企業が積極的に副業を認めるようになってきつつある世の中の流れにおいて、「自律」ということはますます「あった方がまし」なものとして、相対的にその必要性が増してきていることは確かでしょう。 
 
「TAZは、空間よりも、時間への流動的な関連の中に存在する。それは、真に一時的なものであるが、恐らくはまた、休日、バカンス、夏休みのキャンプといった繰り返す自律のように、周期的に訪れるものでもあるだろう。それは、首尾よく成功したコミーン、あるいは放浪者の小領域のように、「恒久的」自律ゾーンである「PAZ(パーマネントなTAZ)」となれるかも知れない。」 
 
その意味で今期のしし座もまた、自分なりの「TAZ(一時的自律ゾーン)」をいかに日常に組み込み、生存に関する一つの実験を試みていけるかが問われていくのではないでしょうか。 


参考:ハキム・ベイ、箕輪裕訳『T.A.Z.―一時的自律ゾーン、存在論的アナーキー、詩的テロリズム〔第2版]』(インパクト出版会) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ