12星座全体の運勢

「社会的秩序の相対化」 

いよいよ春もたけなわに入り、花々が咲いては散ってゆき、それを「惜しむ」思いが深まっていく頃合いに変わってきました。そんな中、「春分」から「清明」へと節気が移ろう直前の4月1日に、おひつじ座11度(数えで12度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは、「天の采配への同期」。すなわち、ふだん地上を這うように生きている自分の選択や振る舞いのひとつひとつが、みずからの意思や社会の空気によってのみ決定されているのではなく、それらを超えたところで働いている宇宙的な原理によって突き動かされているのだという実感を改めて深めていくこと。 

例えば、春になってあたたかくなってくれば冬鳥の雁は北へ帰っていきます。かつてはその姿が日本のどこでも見られ、子供たちは「棹になれ、鉤になれ(まっすぐに連なれ、鉤形に並べ)」とはやしたてたそうですが、そうして新たな季節の訪れを知らせてくれる渡り鳥が道に迷うことなく、何千キロもの長距離を移動し、それを毎年繰り返すように、私たち人間もまた、食事や睡眠などのごく身近なレベルの日常的行動から、経済活動や軍事侵攻などの集団的行動まで、日々何らかのかたちで、地球の磁気や気候の変動などの惑星規模の影響力によって左右されているのです。 

ここのところ、従うべき法と秩序とは何か、ということが人間中心的なものへ寄り過ぎていましたから、今回の新月では、いかにそうした社会的な通念や常識を相対化し、宇宙的サイクルや天の采配に同期して、自然体へと還っていけるかということが、各自の状況に応じて問われていくことでしょう。 
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射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「孤独感=背負うことのできなさ」。

射手座のイラスト
現代人は孤独を感じやすいと言われていますが、それはわたしが存在するということの成立要件が見えにくくなり、リアリティを失ってしまったからかも知れません。ただ、「存在する」という言葉は、普段あたかもそれ単独で文の主成分になることができるかのように語られていますが、実際に存在の歩みを進んだり、存在することを成立させることはそう単純でも簡単でもありません。 
 
というのも、私たちは自分ひとり単独で存在している訳ではなく、生物的にも社会的にも必ず他者との関わりを通して存在しているからであり、言い換えれば、人はそうして他者との関わりのなかで責任を担っているからです。 
 
そして、この「責任」という言葉が使われる文脈の窮屈さや息苦しさ、貧しさこそが、現代人が孤独感を深めていることの要因となっているように思うのですが、そもそも「責任」とはある個人の罪責性を糾弾し、吊るしあげるためのものだったのでしょうか。 
 
この点について例えばユダヤ人哲学者レヴィナスは、ラジオ講座を収録した『倫理と無限』の中で、責任とは「いかなる対話にも先立つ奉仕」であり、「他人の近さとは、他人が空間的に私に近いとか、親族のように近いというだけではなく、その他人に対して私が責任をとるかぎり―私に責任があるかぎり―他人は本質的に私に近い」のであって、「私には、あらゆる他者を、他者におけるすべてを、さらには他者の責任をも引き受ける全面的な責任に対する責任がある」のだとさえ述べています。 
 
これは宮沢賢治が『春と修羅』において「あらゆる透明な幽霊の複合体」とか「すべてがわたくしの中のみんなである」といった仕方で表そうとしていたものを、別の言い方で表わしたものと言えるかも知れません。つまり、他者への責任とは、人間として存在する限り拒否することのできない事態であり、レヴィナスはそれを「譲り渡すことのできない私の主体的な自己同一性」なのであり、その意味で現代人の孤独感とは、「(他人を)背負うことのできなさ」に他ならないのだと言えます。 
 
4月1日にいて座から数えて「与える愛」を意味する5番目のおひつじ座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、どうしたら他人に近さを感じ、背負うべき責任を背負うことができるかという観点から、みずからが「存在する」ということの成立要件について検討してみるといいでしょう。 
 
 
参考:エマニュエル・レヴィナス、西山雄二訳『倫理と無限』(ちくま学芸文庫)
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ