1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

アラサーで恋愛経験なし、推しにガチ恋のリアル

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ーDATAー

宮崎さん(仮名) /31歳/会社員

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最初はいちファン、リアコに嫌悪感を持っていた

推しにガチ恋! アラサーの心理「身近な男の画像_1

――現在、推しにガチ恋している?

はい。30代で恋愛経験なし、推しにガチ恋しています。(以下、宮崎さん)


――推しはどんな人ですか?


男性アイドルです。はじめて推しを知ったのはコロナ禍でした。最初はライブを無料配信していたので、「無料だし見てみよっかな」と軽い気持ちで推しのライブ映像を見たのですが、「なにこの人! 歌がうまくて、かっこいい!」と思いのほか興奮し、ひと目ぼれ。推しのことを調べてみたら、趣味などが一緒で共通点が多く親近感がわきました!


――それから彼にハマった?


そうですね。最初はオタクとしてハマりました。この頃はまだリアコ(※「リアルに恋している」の略。主に芸能人に真剣な恋心を抱いている状態)ではなかったですね。それに、もともと私は「リアコって気持ち悪い」と思っていたんです。



――なぜですか?

歌やパフォーマンスを仕事にしている推しに対して、恋愛感情を抱いてしまうのは“推しを正当に評価してない”のではないかと。

私の推しは、ガチ恋営業をしているようなタイプではなかったので、なおさらそう思いましたね。



――推しのどういうところが好きだったのですか?

歌はもちろん、バラエティ番組に出演した時のトークの面白さや、優しそうに見えて、実はとてもストイックなところとか! ちょっと気難しいそうなところも「わかる~!」って共感したり。

だから、リアコになっちゃう人の気持ちもわかるけど私はいちオタク、いちファンとして彼のことを応援しようと思っていました。

ファンからリアコになったきっかけ

推しにガチ恋! アラサーの心理「身近な男の画像_2

――いちファンからリアコになったきっかけは?

ファンイベントで、握手会があったんです。そこで生の推しを初めて見ました。

生の推しは思っていた以上に背が高くて、かっこよくて! いざ目の前にすると、めちゃくちゃモジモジしてしまいました(笑)。「えっと、えっと……」を繰り返し、まるで好きな男の子を前にしてしゃべれなくなっちゃう乙女みたいになっちゃったんです。


「これじゃあ私が嫌いなリアコそのままじゃん! 『歌やパフォーマンスで評価したい』って思っていたのに!」と内心、自分自身につっこんでいましたね。



――そこから自身もリアコに?

いえ、それでもまだ自分がリアコだと認めたくありませんでした。

でもコンサートに行った時、握手会で目の前にいたはずの推しが遠くで歌っているのを見て切ない気持ちになっちゃったんです。それで自分はリアコなんだって思いましたね。

もし、推しの熱愛が出たら?

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――最近、立て続けにアイドルの熱愛や結婚報道がありましたよね。もし自身の推しに熱愛や結婚報道がでたら、どうなりそうですか?

寝込むでしょうね(笑)。相手によっては「なんなのよ、この女!」なんて思っちゃうこともあるかもしれません。

――まだ推しにはそういう報道はない?

ないですね。でも、推しに近いアイドルの結婚報道が出るたびに、オタク界隈はざわつくんです。「次、〇〇(推し)が出たらどうしよう~」みたいな感じで。

そのたびに私は推しに対して「もっとこれから売れるし、今じゃないぞ!」って思っています(笑)。

もし推しに結婚報道が出たとしても「未来はわからないから!」と自分に言い聞かせて、リアコを続けようと思っています(笑)。

好きな人ができなかった思春期

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――推し以外に好きな人はいますか?

今はいません。実は私、なかなか好きな人ができないんです。


――それはなぜですか?

昔から身近な男性にときめいたことがありません。学生時代、周囲の恋愛が盛り上がっている時期も、好きな人はいませんでした。当時私は小池徹平さんを推していましたね。


――小池徹平さんのどういうところが好きだったのですか?

中性的な顔立ちが好き。それもあって、自分は身近な男性は好きになれないけど、女性だったら好きになれるのかな? とか、自分が身近な異性に対してときめかないことにちょっと悩んだ時期がありました。

最近になってやっと「自分は男性が好きだけど、ストライクゾーンがめちゃくちゃ狭いんだ」ということに気づいたんです。



――ストライクゾーンの狭さはどんな時に感じますか?

見た目は中性的、自分と似た価値観で、おおざっぱだけどタイパコスパを気にする……みたいなのが私のタイプです。私はこだわりが強いのでストライクゾーンは本当に狭い、そりゃ周囲にはいないだろうな~という感じです。



――今まで恋愛に発展したことはありますか?

いいえ。相手から好意を持ってもらって、デートをしたことはありますが、話していて面白くないと感じてしまうと、そこから関係を先に進める意欲をなくしてしまうんです。

そもそも、恋愛は無理してするものではないと思っているので、乗り気じゃないのに、わざわざ恋愛しにいく……という気にはなれません。



――恋愛の優先順位が低いのかもしれませんね。

そうですね。恋愛って私にとって海外旅行みたいなものなのかな、と思うんです。

めっちゃ素敵だし、行ってみたいなとは思う。でも、わざわざ行くのは大変だし、行ってみないとそこがどんなところかわからない。時間とお金をかけたわりに「期待外れだった」っていうこともあるかもしれない。

もちろん、世の中には恋愛しないと生きていけない! っていう人もいると思うけど……。私は今、推しに対しての“疑似恋愛”で満足していますね。

今はリアコとして充実した日々を送っています。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。