
とにかく圧倒されるのは、息を飲むほど美しいダイナミックな映像。監督を務めたのは「ナショナル・ジオグラフィック」の山岳カメラマンでもあるジミー・チンという人で、なんと3人のメンバーのうちのひとり。2台の小型カメラを使い、チームメイトの姿はもちろん自らも登場人物としてカメラに映り、チャレンジの一部始終を記録。登攀中に直面する体調不良や体力の限界はもちろん、葛藤や迷い、苦しい妥協までも、吐息を間近に感じる近さで切り取っています。命の危険をリアルに感じる極限状態の中でカメラを回し続ける、彼のメンタルの強さには驚かされます。
そして、この映画がおもしろいのは映像の美しさだけでなく、登山家やその妻たちの葛藤を捉えたヒューマンドラマでもあるから。一度は登頂に失敗してメンバー全員が様々な苦難に見舞われながらも、周囲の人たちのサポートを受けて再び過酷な大自然に立ち向かって行く姿からは、「なんで辛い思いまでして山に登るの?」という、誰もが抱く純粋な疑問を解くヒントが隠されている気がしました。垂直にせり出す壁や壮絶な寒さ、雪に直面しながらも、最終的に闘う相手は自分自身。クレイジーなクライマーたちの極限の挑戦を見れば、新しいことにチャレンジする圧倒的なパワーをもらえるはず。新しい1年のスタートにピッタリの、傑作ドキュメンタリーです!
(文/松山梢)
●12/31〜新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
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