この映画、何かがおかしい! 綾野剛、北川の画像_1
「なんなんだ、この映画……!?」。それが、観たあとの率直な感想。町田康の原作小説を石井岳龍監督が映像化し、脚本に宮藤官九郎、主演に綾野剛を迎えた超豪華なエンターテイメントだ。舞台は江戸時代。自らを超人的刺客と名乗る浪人・掛十之進(綾野剛)は、災いを引き起こすとされる宗教団体「腹ふり党」の討伐を企てるものの、いつしか黒和藩の権力抗争に巻き込まれていく……。こう書くとマジメな時代劇のように思えるかもしれないが、やっぱりこの映画、何かがおかしい。

まず、出演者の壊れっぷりがハンパない。もちろんいい意味で。腹を激しく振って踊る「腹ふり党」の幹部・茶山を演じた浅野忠信は、ほとんど台詞がないにも関わらず、顔中に入れ墨を入れた風貌の異様さはピカイチ。紅一点のろんを演じた北川景子は真顔で滑稽な腹振りダンスを披露し、染谷将太は都合が悪くなると気絶するヘタレ侍を怪演、東出昌大は融通が利かないマジメすぎるお殿様を棒読みで熱演している。もうなんというか、誰もがこれまで観たことがないほど振り切れているのだ。

 そして極めつきは、様々な登場人物たちの欲望が絡み合い、謎のサル軍団まで参戦する怒濤の戦闘シーン。はたと「何観せられてんの?」という思いがわき上がる。しかもそんな理解不能の物語を彩るのが、CGを駆使した宇宙を感じさせる壮大な世界観と、クールな音楽、かっこよすぎる衣装などなど。一流のプロたちが超本気で描く物語のギャップに、ただただ混乱させられる。かつて『ツィゴイネルワイゼン』を手がけた映画監督の鈴木清順は、「一期は夢よ、ただ狂え(人生は夢のようなもの、好きなことにして熱中して狂え)」という言葉を座右の銘にしていたそう。その言葉をまさに表したような本作。とにかく難しいことを考えず、凝り固まった脳みそが解放されるような爽快感を味わってみて。

(文/松山梢)


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