話題のステージの中から、キーワードに沿ったイチ押し舞台、そして2本のおすすめをご紹介します。

【今月のキーワード】予測不能!? 大人計画の祝祭

1988年、旗揚げした松尾スズキ主宰の劇団、「大人計画」。ブラックユーモアで人間の業を描く異色の喜劇で小劇場ブームを牽引し、熱狂的ファンを得た。宮藤官九郎、阿部サダヲ、皆川猿時、荒川良々(芸名は松尾が命名)、演劇のフィールドを超えて活躍する才能も多数輩出。小劇場からメインストリームへ。今や、演劇ファンならずともその名を知るチケット争奪戦必至の人気劇団となった彼らは、今年、旗揚げから30周年を迎え、『30祭(SANJUSSAI)』と銘打った一大イベントを開催! 『なんとかここまで起訴されず』という、なんとも“らしい”とぼけたタイトルのファミリーコンサート、トークショーつきの名作上映会など、“祭”の名にふさわしい充実のラインナップ! 宮藤と伊勢志摩が、退団したメンバーに会いにいくドキュメント上映は、涙(笑い?)なくしては観られないかも。ラストを飾るのは、松尾と宮藤がメインのトークショー。どんな暴露話や本音が飛び出すだろう。30歳の『大人計画』は、果たして“大人”に成長したのか。各イベントに出かけ、確認してみて。

本イベントで、原画展が催されるイラストもだが、小説、漫画、映画とさまざまな分野で多才ぶりを見せる松尾スズキ。実はエッセイの名手でもあり、その多くは戯曲同様、シニカルで笑いに富んだものが多い中、昨年出版された『東京の夫婦』は一般女性との結婚生活を真摯に見つめ、つづる。子どもを持たない選択、母親の介護、家族の断絶など、ヘビーな話題にも触れており、私小説ともいうべき味わいがある。彼のファンでなくとも必読の一冊だ。
松尾スズキ,大人計画,30祭(SANJUSSAI)
【今月のイチ押し☆ステージ】松尾スズキ+大人計画30周年記念イベント『30祭(SANJUSSAI)』

過去の舞台風景写真や小道具、衣装などを展示し30年の歩みを振り返る『大人計画大博覧会』は、無料観覧スペースもあり。トークショーつき名作上映会の上映作品は『生きてるし 死んでるし』、『愛の罰』、『サッちゃんの 明日』、『ファンキー!』、『春子ブックセンター』。◆12/18〜30 表参道 スパイラルホールほか ●大人計画 ☎03・3327・4312
東京の夫婦,松尾スズキ,書き下ろし,AFTER STORY, TOKYO COUPLE
【今月のイチ押し☆ステージ2】『東京の夫婦』

51歳の夫と31歳の妻。東京で出会い、20
14年に夫婦となったふたりの生活を題材にした松尾スズキのエッセイ集。雑誌『GI
NZA』での連載作品のほか、書き下ろし『AFTER STORY, TOKYO COUPLE』を収録。(マガジンハウス ¥1400)

【オススメステージは『日本の歴史』と『愛犬ポリーの死、そして家族の話(仮)』】

日本の歴史,三谷幸喜,中井貴一,香取慎吾,川平慈英
『日本の歴史』

卑弥呼の時代から太平洋戦争まで、1700年にわたる物語を描く、三谷幸喜の新作ミュージカル。初のミュージカル出演となる中井貴一、三谷作品常連の香取慎吾、川平慈英ら豪華キャストたちがどの時代のどんな人物を演じるのか、期待が高まる! ◆12/4〜28 世田谷パブリックシアター(地方公演あり) ●シス・カンパニー ☎03・5423・5906
愛犬ポリーの死、そして家族の話(仮),根本宗子,青山美郷
『愛犬ポリーの死、そして家族の話(仮)』

“ねもしゅー”の愛称で親しまれ今、演劇界で最も注目を集める演出家・根本宗子。彼女が主宰する「月刊『根本宗子』」の第16回目となる公演が決定。公演内容についてはまだ明かされていないが、出演には青山美郷、村杉蝉之介、根本作品に数多く出演する岩瀬亮、田村健太郎も顔を揃える。◆12/20〜31 本多劇場 ●ヴィレッヂ ☎03・5361・3027

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MORE2018年12月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 原文/小泉咲子
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