【松井玲奈さんインタビュー】女優と作家。どちらもオンでどちらもオフだという彼女の新たな表現活動に注目

女優と作家、どちらの立場においても向きあい方が変わりました。

【松井玲奈さんインタビュー】女優と作家。どちらもオンでどちらもオフだという彼女の新たな表現活動に注目_1
甘酸っぱくて目が覚めるはずなのに、なぜか目をおおいたくなるいちごジャム。見た目はピンクで可愛らしいけれど、バターたっぷりで罪悪感の塊のような明太子パスタ。口にするまで味の想像もつかない鍋。こねればこねるほど深みにハマる餃子……。松井さんが編んだ6作の短編小説には、いずれもそんな悩ましい食べ物たちが添えられている。

「私、自分が食べているところを見られるのは恥ずかしくて苦手なんです。でも、人が食べている姿を見るのは大好き。魚の食べ方ひとつでも、その人の人となりが出ますよね」

「食への興味が人の生きるエネルギーになると思う」と語る彼女だからこそ、そのエネルギーに対して私たちが日々“カモフラージュ”してしまうやるせなさや不安のコントラストを生々しく描けたのだろうか。

「ただ、全部食べ物ありきで書き始めたわけではなくて。『ジャム』は人が人の中から出てくる話を書いてみたいというところからスタートしたし、『拭っても、拭っても』は、潔癖症の話を書きたくて、潔癖症の人がイヤがりそうな食べ物を連想した結果、餃子にたどり着きました。食べ物ありきだったのは『リアルタイム・インテンション』だけなんです」

実は同作は、6作の中で最も苦戦した作品でもあるという。

「最初は大学生の男の子たちが闇鍋を囲む話を書いてみたんですが、編集さんから『闇鍋の設定だけ残して、すべて忘れてください』と言われて……イチから書き直しに(笑)」

同作の執筆中は、ちょうどドラマ『まんぷく』の撮影期間と重なった。

「小説を書くことがリフレッシュになっていた反面、忙しさの中でインプットする時間がなくなって、何も出てこなくなった時期があったんです。そんな時、友人が気分転換にと、書店へ連れ出してくれました。『いやいや、今、本屋さんはないでしょ!』と思ったんですけど、彼女が見せようとしていたのは絵本だった。そこで久しぶりに好きだった物語に触れて、頭がほぐれました」

自ら文章を書いたことで、芝居にも影響があった。

「執筆中、句読点の位置や言葉のチョイスにこだわりが出てきたんです。それで、台本を読んで『この順番だと言いにくいな』と感じていた言葉の並びにも、脚本家さんのこだわりがあるんだと気づけました。その言葉の並びの意味を考えたうえで、もっといいお芝居がしたいなと」

女優と作家。どちらもオンでどちらもオフだという彼女の新たな表現活動は、まだ始まったばかりだ。


まつい・れな●1991年7月27日生まれ、愛知県出身。2015年より女優としての活動に専念。ドラマ『海月姫』(フジテレビ系)など話題作に多数出演し、連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)では主人公の親友・鹿野敏子を演じた。6月には出演映画『今日も嫌がらせ弁当』が公開される

『カモフラージュ』

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『小説すばる』に掲載された『ジャム』、『リアルタイム・インテンション』、『拭っても、拭っても』に、報われない恋に翻弄される『ハンドメイド』、18歳の自意識と葛藤をポジティブに描いた『いとうちゃん』、夫婦の感覚と感情のズレをのぞく『完熟』の3作を加えた全6編。(集英社 ¥1400)

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