12星座全体の運勢

「‟想定外”への一歩を踏み出す」

二十四節気で「穀物の種をまく時」という意味の「芒種」を迎えるのが6月5日。実際には麦の刈り取りの時期であり、どんよりとした天気の下で鮮やかな紫陽花やカラフルな傘たちが街をいろどる季節。そして6月6日に起きる射手座の満月は、いつも以上にエモの膨張に拍車がかかる月食でもあります。そんな今の時期のキーワードは「モヤモヤのあとのひらめき」。それは息苦しい勉強に退屈していた子供が、庭に迷い込んだ野良猫の存在に驚き、その後を追い路地を抜けた先で、今まで見たことのなかった光景を目にした時のよう。これから満月前後にかけては、現在の行き詰まりを打開するような‟想定外”体験に、存分に驚き開かれていきたいところです。

射手座(いて座)

今週のいて座のキーワードは、「ねじを巻け」。

射手座のイラスト
物を締め付けるためのらせん状の溝が刻んである用具が「ねじ」であり、これが緩むと全体の姿かたちが崩れてきます。そこから比喩的に緊張感がなくなってだらしなくなることを「ねじが緩む」、逆にだらしない気分を引き締めることを「ねじを巻く」と言ったりします。

ところで、明治・大正期の文豪・幸田露伴のエッセイに『ねじくり博士』という一風変わった作品があり、そこでは博士の口を借りて「ねじねじは宇宙の大法なり」という‟真理”が語られていきます。

いわく、太陽も月も星も、人間のつむじさえも、みな螺旋を描いて進んでいるのであり、なぜそれらが螺線的に運動をするかといと、「世界は元来、なんでも力の順逆で成立ッているのだから、東へ向いて進む力と、西に向て進む力、又は上向と下向、というようにいつでも二力の衝突があるが、その二力の衝突調和という事は是非直線的では出来ないものに極ッてるのサ」、というのです。

つまり、何事においても相反する二つの力の衝突や矛盾が生じなくなってくれば、それは「ねじが緩んで」動きが直線的になってきたということであり、そうして「社会を直線ずくめ」にしてしまうから、本来通るはずの道理も通らなくなってくるのだ、と。

同様に、まさに天地自然の法則に改めて寄り添い力を取り戻していこうという意味において、今季のいて座は改めて「ねじを巻く」ことがテーマになっているのだと言えます。衝突をおそれず、むしろそれを利用する法を考えて、心身を引き締めていきましょう。


出典:長山靖生『懐かしい未来――甦る明治・大正・昭和の未来小説』(中央公論新社)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ