12星座全体の運勢

「‟想定外”への一歩を踏み出す」

二十四節気で「穀物の種をまく時」という意味の「芒種」を迎えるのが6月5日。実際には麦の刈り取りの時期であり、どんよりとした天気の下で鮮やかな紫陽花やカラフルな傘たちが街をいろどる季節。そして6月6日に起きる射手座の満月は、いつも以上にエモの膨張に拍車がかかる月食でもあります。そんな今の時期のキーワードは「モヤモヤのあとのひらめき」。それは息苦しい勉強に退屈していた子供が、庭に迷い込んだ野良猫の存在に驚き、その後を追い路地を抜けた先で、今まで見たことのなかった光景を目にした時のよう。これから満月前後にかけては、現在の行き詰まりを打開するような‟想定外”体験に、存分に驚き開かれていきたいところです。

魚座(うお座)

今週のうお座のキーワードは、「嫌悪せよ」。

魚座のイラスト
川端康成の戦後期の代表作である『千羽鶴』には、「むかむかする嫌悪のなかに、稲村令嬢の姿が一すじの光のようにきらめいた」という表現が出てきます。

これは「むかむか」という吐き気の感覚を通して嫌悪という強い不快感を増幅させていくなか、その窮地を救ってくれる女性の存在を「光」のイメージで拾い上げていくという、非常にダイナミックな芸当であり、その後に当人は「新鮮な気持がした」と語っています。

気に喰わないという気持ちが頭のあたりに留まらず、胸の奥のほうや胃腸や背中の方まで拡張されていくと、かえって波が引いていくように気持ちがおさまるだけでなく、その引いていく先に正反対の心情を覚える対象が明確に姿を現わすことがあるのか、とはじめて読んだ時にいたく感動したものです。

ただ、それは逆に言えば「好きだ」とか「愛してる」といった表現に、いかに自分がしっくりきていなかったのかということを浮き彫りにしてくれた体験でもありました。

幸せであるという実感は、ひとえに「喜怒哀楽」のいずれも抑圧することなくのびのび感じていくことの中にありますが、今季のうお座にとっては特に「怒」と「哀」のあいだにあって「喜」の周囲へと通じる「嫌悪」の感覚が、ひとつの鍵になっていくはず。

表面的な嫌悪に囚われるのではなく、その向こう側にあるまだ名前のついていない感情を見出していきたいところです。


出典:川端康成『千羽鶴』(新潮文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ