韓国ドラマの認識が変わる⁉ 抱腹絶倒の政治ブラックコメディ

韓国ドラマ大好き! なライターが、ぜひおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。
今回は、金メダリスト出身の女性長官を主人公に韓国社会をリアルかつ愉快に描いた政治ブラックコメディ『こうなった以上、青瓦台に行く』のあらすじと見どころを紹介します。

韓国ドラマ こうなった以上、青瓦台に行く

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こうなった以上、青瓦台に行く
全12話
出演:キム・ソンリョン、ペク・ヒョンジン、ペ・ヘソン、イ・ハクジュほか
U-NEXT独占配信中
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あらすじ

2020年コロナ禍の韓国。文化体育観光部長官が、オンライン会議で失態を犯し解任。新長官に、国民の支持を得やすくてリスクが少ない、射撃五輪金メダリストで、現国会議員のイ・ジョンウン(キム・ソンリョン)が選ばれる。6か月後、「文化体育芸術界“犯罪専門担当捜査課”発足式」が開かれる中、ジョンウンの携帯に政治評論家で夫のキム・ソンナム(ペク・ヒョンジン)の醜悪な実態を暴露する、というメッセージと写真が届く。さらには夫が拉致された映像と長官を辞任しろ、という脅迫文まで受け取ることに……。

ここが見どころ!

今回は超能力やタイムスリップ、財閥×庶民のラブストーリー……といった王道の韓国ドラマではなく、韓国の政治や社会を豪快に皮肉った政治ブラックコメディ作品を紹介します。どのくらい痛快かと申しますと、韓国の著名な映画雑誌『CINE21』では、今作が配信された2021年、『イカゲーム』や『D.P. -脱走兵追跡官-』を抑えて、“今年を輝かせた作品”1位を獲得したほど。
それでは、見どころを紹介していきましょう!

こうなった以上、青瓦台に行く  文体部の人々

主人公イ・ジョンウン(キム・ソンリョン)長官の仕事姿。やらされている感がすごい。© Content Wavve Corp.

社会問題や“コロナ禍あるある”がてんこもり

物語は、元野党議員で射撃の金メダリストの主人公、イ・ジョンウン(キム・ソンリョン)が文化体育観光部(略して文体部)の長官に抜擢されるところから始まります。

この長官、現役時代はアイドル的人気があったことから、“政治的信条が薄く、聞き分けのよさそうな、見栄えのいいマジメな安パイ”として、政権終了までの1年間のつなぎとして選ばれただけだったのでした。半年後、与党の公約だった「犯罪捜査処」(スポーツ界の各ハラスメントや性暴力などを捜査する部署)が設置されるやいなや、次々に思いもよらないトラブルが! 秘書のキム・スジン(イ・ハクジュ)と機転の利く文体部(文化体育観光部)スタッフたちに支えられながら、何とかトラブルを回収していく長官。本人の思いとは裏腹に、トラブルに見舞われるたびに支持率は上がり、ついに大統領選の有力候補へ……というのが大まかなストーリー。
ちなみに、タイトルの“青瓦台(チョンワデ)”は2022年まで韓国大統領府が置かれていた場所のことです。

長官や政治家、文体部内部のゴタゴタを描くと同時に、しっかりと盛り込まれているのは、社会問題の数々。メディア問題、女性差別、北朝鮮問題、K-POP業界の闇、スポーツ界のパワハラ、性犯罪、政治と新興宗教の癒着など、ビシッと風刺しているので、観ていてスカッとします

こうなった以上、青瓦台に行く 

日本では浸透しなかったクリアマスク。アヒルみたいですね……。© Content Wavve Corp.

各話30分、テンポのよい展開とブラックな笑いがクセになる

「とはいえ政治ドラマだし、シリアスなんでしょ」と思いますよね? 
どっこい、徹頭徹尾、笑いを誘うキテレツなエピソード尽くめなんです。なんせ1話から、前長官が慣れないオンライン会議でカメラをオフにし忘れたまま全裸になるという、“デジタル音痴おじさんのコロナ禍あるある”で退任を余儀なくされるシーンを盛り込んでくる、ふり切れっぷりですから(笑)。また、同じく1話で議会での議員同士の意味のない舌戦を傍観する長官が、政治とプロレスの共通点として“注目がないと戦えない”と評しているあたり、かなりパンチが効いています。

本作では一貫して、思わず脱力してしまう間の抜けたピンチが次から次へと文体部に降りかかってくるのですが、深読みしすぎる傾向の秘書が「こうすべきか?」「いや違うな」「でも、こうなったらああしてみるのはどうだ?」など、事態回収シュミレーションを高速展開するのですが、誠実な人柄ゆえか、いつも考えすぎて空回り(笑)。結局、結論を出すのはほぼ長官で、秘書が遠回りしすぎて見失ったAプランをサクッと選ぶというオチがめちゃめちゃ痛快! 各話30分ほどなので、テンポのよくくり出されるブラックな笑いに吹き出しちゃってください

こうなった以上、青瓦台に行く 秘書役のイ・ハクジュ

秘書役のイ・ハクジュは常にこんな感じでAプランからZプラン(推定)まで考えている。© Content Wavve Corp.

こうなった以上、青瓦台に行く 主体部の面々

不祥事で炎上中だが本人はまるで気付いていない議員をこっそりとイベントから隔離する職員。© Content Wavve Corp.

“信じて観れる”演技派俳優たちがズラリ

主人公の長官役は、『その恋、断固お断りします』や『相続者たち』、あの『美男<イケメン>ですね』でも、抜群の演技力と存在感を見せていたキム・ソンリョン。今回はピンチをチャンスや力に変えていく長官を淡々と演じています。元射撃選手らしい鋭い眼差しをする場面もあるのですが、自らが置かれている状況をメタ的視点で考える時に見せる、死んだ魚のような眼差し(笑)も素晴らしいです。  

こうなった以上、青瓦台に行く 主演キム・ソンリョンの収録シーン

笑っているのに漂う虚無感(笑)。キム・ソンリョンの“覇気ゼロ”演技がジワります。© Content Wavve Corp.

こうなった以上、青瓦台に行く 主演キム・ソンリョンの狙撃シーン。

主演キム・ソンリョンの狙撃シーン。目に力が! © Content Wavve Corp.

長官の夫で政治評論家のキム・ソンナムを演じた、俳優兼ミュージシャンのペク・ヒョンジンにもご注目を。彼は『ハピネス』での皮膚科医、『ムービング』での襟足の長い要員、『良くも、悪くも、だって母親』のあやしい音楽家など、イヤな男を演じさせたら一級品のバイプレイヤー。本作でも、一瞬で不快さを与える見事なクセの強さを発揮してくれています。

このソンナムという男は、とにかくムカつく男なんですけど、なぜか怒りの沸点には到達せず、段々とおもしろくなる謎の魅力が(笑)。多分、アホさが突き抜けてしまい、怒りがどうでもよくなるからだと思いますが、彼のおかげで最後まで笑いが絶えない作品になっているので、彼から目を離さずに、ご覧ください。観終わった頃には病みつきになるはず!

  • こうなった以上、青瓦台に行く 夫役のペク・ヒョンジン

    主人公の夫役のペク・ヒョンジン。場の空気を胡散臭くする奇才の持ち主。要チェックです!© Content Wavve Corp.

そして、イケメン枠、長官の秘書を演じたイ・ハクジュもお忘れなく。『夫婦の世界』でブレイクした彼ですが、真面目が過ぎて空回りする様がおもしろくも愛おしくなってきます。そんなイ・ハクジュの韓服姿が拝める『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』が、7月3日から配信されるので(U-NEXTで独占先行配信)、気になった方はこちらもチェックしてみてくださいね。

こうなった以上、青瓦台に行く 秘書役のイ・ハクジュ

食堂にいても絵になる秘書役のイ・ハクジュ。© Content Wavve Corp.

もはや懐かしさまで感じる“初期のコロナ禍あるある”や、社会問題を小気味よく切る風刺センスのよさに大爆笑の政治コメディ、ぜひ堪能してください!

配信サイト

『こうなった以上、青瓦台に行く』
全12話
U-NEXT独占配信中

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ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で食べまくりました。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。