2023年MORE7月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。

磯村勇斗

ジャケット¥67100・シャツ¥27500・パンツ¥41800/ニードルズ(ネペンテス)

いそむら・はやと●1992年9月11日生まれ、静岡県出身。2017年にNHK連続テレビ小説『ひよっこ』で脚光を浴びる。映画『ヤクザと家族 The Family』、『劇場版 きのう何食べた?』で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。話題作に数多く出演。2023年も公開作が多数待機

“自分を見てくれている”と感じられるひと言が、心の強い味方になる

30年以上前の芥川賞候補作である、河林満のセンセーショナルな短編『渇水』がこの夏初の映画化。「人間模様が繊細に描かれていて、社会性も希望もある。脚本に惚れてすぐに参加することを決めました」と話す磯村さんは、料金滞納家庭の水道を停めて回る水道局員を演じる。

磯村勇斗さん「困窮家庭の最後のライフラインである“水”を停める仕事をする主人公・岩切さん(生田斗真)と、僕が演じたその同僚・木田は、“水の使用にお金を取ること”に疑問を抱きながら仕事をしています。でも、木田は岩切さんと違って、自分の生活のためにその部分は仕事として割り切って水を停められる。演じる時、そこの違いを出すことは意識しました」

映画には、与えられた仕事を粛々とこなす者、自分の意見を上司にはっきりと主張する者など、人により異なる仕事への向きあい方が随所に映し出されている。

磯村勇斗さん「僕の場合、できないことはできないとはっきり言うタイプです。なんでもかんでも頼まれたからといって、無理してまでやることはないかな。やっぱり僕も人間なので、自分の心を尊重したいし、気持ちよく働けたほうがお互いにとっていいなと。もちろん、自分が選択をした先にある試練は、きちんと受け入れますよ。その壁を乗り越える方法は、マインドセットですかね。壁の高さの分だけ成長できるはずなので、これを乗り越えたら男前になれると考えるようにしています」 

初共演の生田さんとは、趣味の話で仲を深めたそう。

磯村勇斗さん「兄のように優しくて。撮影の合間の雰囲気がそのまま先輩・岩切さんと、後輩・木田の間に流れる空気感に表れていると思います」

磯村さん自身には、岩切さんのような先輩はいるかと尋ねると。

磯村勇斗さん「尊敬する先輩は、綾野剛さんです。お芝居はもちろん、生き方も素敵。自分には持っていないものを持っている方なので、人生の道標のような存在です。3年前、綾野さんに『勇斗らしく進んでほしい』と声をかけていただいたことがあって。自分の自信になったし、見てくれている人がいるということは、人の心を強くするんだと感じることができました」

最近は、磯村さんも先輩の立場に。

磯村勇斗さん「後輩から悩み相談を受けるようになりましたね。その時は、相手の性格を観察して、伝え方を変えています。あと、何より、相手の話を最後まで聞いてあげることを大切にしています。やっぱり頼ってよかったと思える人って、器の大きい人だと思うので、自分もそうでありたいです」

『渇水』

映画『渇水』キービジュアル

水道局員の岩切(生田斗真)と同僚の木田(磯村勇斗)は、水道料金を滞納する家庭の水を停めて回っていた。ある日、ふたりは母親にネグレクトされた幼い姉妹と出会う。岩切は、困窮する彼女たちの生命線である“水”を停めるが……。●6/2〜全国公開

撮影/鈴木 新(go relax E more) ヘア&メイク/佐藤友勝 スタイリスト/笠井時夢 取材・原文/海渡理恵 ※MORE2023年7月号掲載

海渡理恵