教えたり、学んだり。それぞれが持つ特技を通してコミュニケーションを図る

12月9日からKAAT 神奈川芸術劇場でスタートする舞台「ジャズ大名」に、千葉雄大さんと、藤井隆さんが出演します。筒井康隆の同名小説が原作で、1980年代に映画化もされた本作の演出は、福原充則さんが担当。

物語は、江戸末期に千葉さん演じる好奇心旺盛な藩主が、アメリカから漂着した黒人奴隷と出会い、彼らの音楽の虜になるところからスタート。藤井さんは、藩主を見守る家老を演じます。

後半は、お互いの魅力についてや舞台の魅力をお届けします!

藤井隆さん、千葉雄大さん

――今回、共演者の方が多く、さらに「ジャズ」という難しい題目にチャレンジされていますが、どのようにみなさんと呼吸を合わせているのでしょうか。


千葉:ちょうど今日稽古をしていて思ったことですが、共演者のみなさんそれぞれが、楽器やダンスなど、何か秀でたものをお持ちで、それを持ち寄ってこの舞台は作られているなと。その秀でたものでコミュニケーションを取っています


藤井:本当にそう。


千葉:例えば、僕の場合、踊りについては、(山根)海音さんに聞いたり、音楽については富田望生ちゃんと話したりしています。あと、お芝居については、板橋(駿谷)さん、北尾(亘)さん、(永島)敬三さん、(福原)冠さんの超仲良し4人組の先輩に聞いていますね。

藤井:今日お稽古したシーンで、海音さんが体全身で踊る姿はすごかった! 表情も素晴らしいし、お稽古着なのにまるで本番の衣装のように見えてくるからすごい。(入手)杏奈さんは、客観的にステージを見られる方なので、彼女の後ろにいれば絶対に怪我しないんです。そういう舞台に立つときに心得ておきたいことを背中を見て教わっています

――とてもいいムードで稽古が進んでいるんですね。


千葉
:そうですね。さっきちょうどその話をしていたんですよ。

藤井:穏やかですよね。俺が俺が! 私が私が!ではなくて、みんなが助け合う感じがあるんです。それは千葉さんと福原さんが、そういう雰囲気を作ってくださっているんだと思いますね。

――千葉さん、そういった稽古場のムード作りのコツはありますか。


千葉:……ないです。自分ではわからないですね。さっき全員が秀でたものを持ち寄っているという話をしましたが、共演者の方々はみんな楽器できたり、ダンスが上手だったりして、自分は何を持っていけるだろうかと今日考え込んでしまって。


藤井
:そうなの?


千葉:はい。だから、福原さんが自分だけでなく、他の演者の方へしている問いかけやアドバイスも自分のことだと思って、スポンジのように吸収しているところ。そうやって自分の中に溜めたものを、どこかでプシャーっと人に分け与えられる人になりたいです!


藤井
:もういただいていますよ。

藤井隆 千葉雄大 仲良し

――今作は、おふたりとも初共演の方がほとんどだと伺いました。MOREの読者も、取引先や転職など「初めまして」の機会が多いのですが、その状況を楽しむコツやアドバイスがあれば教えてください。


千葉
:相手の嫌いな部分を見つけることって割りと簡単なのかなと。だから、相手のいいところに目を向けようとすることが大切じゃないかと思います。で、「ここが素敵!」と思う部分が見つかったら、「さっきのこの部分が素敵でした」と僕は手にストレートに伝えるようにしています。それはポーズではなく、本気で思ったことのみですね。


藤井
:素晴らしい。言われた側もうれしいよね。

僕は特別社交的ではないし、「絶対にみんなと仲良くなろう」というタイプではない。好きな人は好きだし、嫌いな人はいないけれど、好きと普通の間にけっこう差があるんです。仕事では、ありがたいことに好きな人と好きなことができていて、本当に僕は恵まれている。だから、みなさんも好きなことを見つけるといいんじゃないかな。仲良くなりたい人や、会社の近所にお気に入りのご飯屋さんを見つけるとか。
そうすれば、「はじめまして」のシーンで、多少嫌なことがあっても「まぁいっか」と受け流せるのではないかなと思います。

「できないことは、できない」と正直に話す。 自分を取り繕わなければ個性は自然とにじみ出る。

――おふたりのように個性的で、周りから愛される素敵なキャラクターになるための秘訣を教えてください。

千葉:自分では個性があるかも、愛されているかも分からないです。僕、口悪いですし、友達からは「隙がなくて可愛くないね」とよく言われるんですが(笑)。

でも自己分析するとしたら、さっきの「相手のいいと思った部分を素直に伝える」という話に通じるのですが、僕は「できないことは、できない」と思っていて、それを周りに隠さないんです。
だからといって、それは「できません」と放棄するのではなく、何事もチャレンジしようとはします。人に見せてもいいと思っている自分の弱点の範囲が広いので、個性を確立していたり、愛されていたりするように見ていただけているのかもしれないです。

藤井:千葉さんは、面白くて、深みのある興味深い方ですよね。
この身にまとっているモダンさと愛らしさに、MORE読者のみなさんが憧れる気持ちは分かるけれど、ごめん! 真似できないよ(笑)
逆に千葉さんは、だれかを真似するかといったら絶対に真似しないと思う。千葉さんみたいになりたいなら真似をするのではなく、千葉さんイズムを受け止めて自分らしくいることがいいじゃないかなと思います。


千葉
:きっとみなさん気づいてないだけで、自分だけの魅力を絶対に持っているはずです。藤井さんは、何か秘訣がありますか?


藤井
:普段の僕であれば、“個性的”、“愛されキャラ”と言われても、「そんなことないです」と照れて答えてしまうところですが、今日は僕を好いてくれている千葉さんがいてくれてますし、MORE読者の方に愛してもらってるかもしれないので、あえて秘訣を答えます。

たぶん、自分は「たかが知れている」ということを自分で知っていることかなと。舞台に立てるのは、衣装や美術、照明音響など、さまざまなプロフェッショナルの力のおかげだし、そもそも僕に出演をオファーしてくれた方のおかげ。どんなお仕事も、僕に「これを頑張りなさい」と言ってくださる方がいるからこそできている、ことを忘れない。それが大切なのかなと思います。

藤井隆 千葉雄大 仲良し

――最後に、改めて舞台「ジャズ大名」の見どころを教えてください。


千葉:時代劇ではありますが、「ジャズ大名」はセリフが現代的で、稽古をしていても、いちお客さんとして笑ってしまうことがあるくらい面白い作品になっています。

この舞台には、好きなものに誰かと一緒に夢中になることの素晴らしさと、難しさが描かれています。

例えば、ラジオ番組のイベントって、ある番組が好きな人同士が集まるじゃないですか。ベクトルは違っても、あるひとつの好きでひとつになれるって怖いくらいに面白いし、素敵なことだなと。
今回はジャズですが、そういう何かに熱中することで生まれるエネルギーを体感していただけると思います。後半で20分くらい踊り続けるのですが、お客さんだけではなく僕たち演者自身にも、その熱量の先に何が見えるのかが今から楽しみで。
おこがましいですが、この舞台がみなさんの明日の活力になればいいなと思っています。


藤井:僕はこの舞台を、12月と1月にやれるのがすごくいいなと思っているんです。「寒いな~」と思いながら劇場に来ていただいて、終演後は「コートを着なくてもいいや!」と思えるようなエネルギーの交換を、みなさまとできるのではないかと思っています。

MORE読者のみなさんには、千葉さんのお殿様姿も楽しみにしていただきたい! 僕もまだ衣装を着た姿は見られていないですが、絶対いいと思う。ジャズに夢中なお殿様が大奮闘する姿や、それに巻き込まれる人を見て翻弄されてください。

スタッフと出演者一同、気を引き締めてみなさんをお待ちしています。寒い冬ですが、すごく楽しい舞台になると思うので、劇場にお越しいただけたらうれしいです。

衣裳協力/
藤井さん:クラウデッド クローゼット(048-930-7224)

ジャズ大名

ジャズ大名 パンフレット

 <公演概要>

作品名:KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ジャズ大名』
原作:筒井康隆 <「エロチック街道」(新潮文庫)所収>
上演台本:福原充則 山西竜矢
演出:福原充則
音楽:関島岳郎
振付:北尾亘

出演:千葉雄大 藤井隆/
大鶴佐助 山根和馬 富田望生 大堀こういち/
板橋駿谷 北尾亘 永島敬三 福原冠 今國雅彦 佐久間麻由/
ダンテ・カーヴァー イサナ モーゼス夢/
高田静流 入手杏奈 米田沙織 山根海音 神野幹暁

あらすじ

維新の嵐が吹き荒れる江戸時代、アメリカの南北戦争が終結し、解放された黒人奴隷が故郷のアフリカを目指して船に乗り込むが、日本の小藩に流れてついてしまう。鎖国の世、外国人の取り扱いに困る藩主は彼らの奏でる楽器の音に夢中になり、次第に城中を巻き込んでジャム・セッションを繰り広げていく。熱狂はいつまでもいつまでも続き、そして……。

公演詳細

日程:2023年12月9日(土)~24日(日) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>

2024年1月7日(日)~8日(月・祝) 神戸文化ホール

2024年1月13日(土)~14日(日) 刈谷市総合文化センター

2024年1月20日(土)~21日(日) 高槻城公園芸術文化劇場

チケット料金

S席:8,800円、S席平日夜割:7,900円 / A席:7,000円 / 神奈川県民割引:7,900円 / 24歳以下:4,400円 / 高校生以下:1,000円 / 満65歳以上:8,300円 

撮影/つぼいひろこ ヘア&メイク/堤紗也香(千葉さん) 横江亜季(藤井さん) スタイリスト/寒河江健(千葉さん) 奥田ひろ子(藤井さん) 取材・文/海渡理恵