12星座全体の運勢

「呑み込むべき“寒九の水”を問う」 

2021年を迎えて最初の新月は1月13日にやぎ座の第三デカン(20から29度)で起こります。やぎ座の現実主義に水星の知性が加わるため、この新月では特に物事の本質を見抜く客観性が冴えわたっていくでしょう。 

二十四節気では1月5日より「小寒」に入ります。いわゆる「寒の入り」と言われ、冬至で「一陽」を得ることでかえって陰気が強まり、ますます冷えが厳しくなっていく頃合いとされています。そして、今回新月が起こる1月13日は寒の入りから9日目の「寒九」にあたり、昔からこの日の水(寒九の水)は特別な力が宿るとされ、餅をつくにも、お酒を造るにも、薬を飲むにも、珍重されてきましたが、この特別冷たい水こそが薬にも力にもなるという発想は、まさに今回の新月のテーマとも言えます。 

すなわち、人間が経験しうるもっとも純粋な自由というのは、厳しい規律や掟を受け入れ、従うことでこそ実現可能になるということ。さながら寒い時期ほど、一年を通して温度変化の少ない地下水さえもがあたたかく染み入るように感じられるように。あなたの人生に力を与え、解放させてくれるだけの「冷たさ=厳しい現実やその枠組み、ルール等」とは何か、それをいかに取り入れていけるかが今期 は問われていきそうです。 

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「brachliegen」。

水瓶座のイラスト
2020年は主に新型コロナウイルス感染症への対策をめぐって、政府やその長として総理と言うより、日本学術会議(あらゆる分野の科学者の意見をまとめ国内外に発信する機関)の存在感を改めて感じさせられた年でもありました。 
 
しかし一方で、科学が探究する決定論的な真理や政治的理念といった解や意味をいくら単線的に追求したところで、それはコロナ禍で分断を深めた社会やそこに暮らす人々の痛みや、そこはかとない不安が和らいだり解消されたりすることとはまったく無縁なのだということも、改めて痛感させられたのではないでしょうか。 
 
哲学者のジョルジョ・アガンベンは、科学や政治もまた人間が作り出すものである以上「閉じられた世界」であり、例えば動物などは決してそれを知り得ないにも関わらず、人間以上にいきいきと豊かに生をまっとうしているように見えることについて、「動物の放心」という言葉で表しました。 
 
さらに興味深いことに、アガンベンはそうした動物の「真理については何ひとつ知らないし、何ひとつ予期してもいない」状態について、人間の「深い倦怠」と似ているという指摘もしています。 
 
アガンベンはこの特殊な状態について、「不活性のまま滞留する」と翻訳される「brachliegen」というドイツ語の動詞にも置き換えており、これは翌年に種を撒くことができるように耕作しないままにしておく農地を意味するBrache(休耕地)という言葉に由来し、活動しないまま、あらゆる判断を宙づりにしたままに保持されてあるということであるとも説明しています。 
 
同様に、今期のみずがめ座もまた、そんな風に具体的な可能性を活性化しないようにすることによってはじめて「本質的な震撼」を顕現させ、そこにいきいきと豊かに生をまっとうしていくきっかけを見出していくことがテーマとなっていきそうです。 
 
例えば、波乱に満ちた人間世界とは異なる次元にいる鳥たちが、そのさえずりの中で突き抜けた歓喜とともにあるように。 


参考:ジョルジョ・アガンベン、岡田温司・多賀健太郎訳『開かれ―人間と動物』(平凡社ライブラリー) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ