12星座全体の運勢

「結びつきつつある流れを感じとる」 

7月6日に二十四節気の「小暑」を迎えると、暦の上ではもう「晩夏」に入っていきます。とはいえ、まだ大部分の地域では梅雨明けがいつになるかが気になっている中、7月10日にはかに座18度(数えで19度)で新月を形成されていきます。 

そうした今回の新月のテーマは、「むすびのはたらき」。社会のさまざまな領域で分断が進行している現代において、自立と孤独を余儀なくされた個人同士が生産的に結びついていくためには、ただ雑に、あるいは、無理やりくっつけようとしても、なかなかうまくいかないという事態が、“ごくありふれた光景”となってしまっているように思います。 

たとえば、七夕に織姫と彦星が結ばれるのも、天の川という乗り越えるべきハードルがあったればこそであり、そこではいわば天の川が「むすびのはたらき」をしているのです。それはすなわち、関係性に分離や試練などの神話的要素を呼び込むことであったり、もう少し具体的に言えば、時間をかけて温められてきた“なにかがそこで産まれそうな雰囲気”であったりするのではないでしょうか。 

ちょうど温かい風を意味する夏の季語が、梅雨の始めには「黒南風(くろはえ)」、中頃には「荒南風(あらはえ)」、そして終わり頃には「白南風(しろはえ)」と呼び方を変えていくことで、梅雨明けにそのパワーを全開にする太陽(炎帝)の到来を心待ちにしていくように。 

今期はまさに、そうして暗くどんよりと感じられた風が、次第に軽くなり、白い光を放つ風となって、他ならぬ自分の日常に流入してくる時期であり、私たちもそこで自分のなかで結びつきつつある何かを全身で感じ取っていくことがテーマとなっていくでしょう。 
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双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「もののあはれ」。

ふたご座のイラスト
日本でも明治以降、近代西洋で確立された自立した個人という人間観が急速に導入されていきましたが、日本の伝統思想をかえりみると、もともとそうした自己完結的な発想よりも、他者との関係性を通してすべてのものごとを考えていく他者関係的な発想がはるかに優位に立っていました。 
 
たとえば、源氏物語の注釈書である『紫文要領』の中で「もののあはれ」を重要性をはじめて体系的に論じた国学者の本居宣長は、同書のなかで次のようにも述べていました。 
 
おおよそ人の本当の心というものは、女児のように未練で愚かなものである。男らしく確固として賢明なのは、本当の心ではない。それはうわべを繕い飾ったものである。本当の心の底を探ってみれば、どれほど賢い人もみな女児と変わらない。それを恥じて隠すか隠さないかの違いだけである。」 
 
つまり光源氏ら物語の男たちはうわべだけを飾っているだけで、到底「実(まこと)の情(こころ)」と言えるものではなく、そこでは女性性こそが人間の本質なのだ、と。 
 
これは1980年代のフェミニズム運動の成果の一つとして「正義の倫理」に対する「ケアの倫理」の基本的な発想と軌を一にするものであり、宣長には時代を先取りした先見性があったとも言えるのではないでしょうか。 
 
そうした文脈で、宣長の「もののあはれ」に関する「人の哀れなる事を見ては哀れと思ひ、人のよろこぶを聞きては共によろこぶ、是れすなはち人情にかなふ也。物の哀れをしる也」という記述などは、他者との共感を不可避のものとする点は、今後改めてケアの倫理として見直されていってよいように思います。 
 
今期のふたご座もまた、自分がどこかで知っていたり使い慣れていると思っていた言葉に、改めていのちを吹き込んでいくがごとく、その実感を深めていくことになるかも知れません。 


参考:子安宣邦/校注『紫文要領』(岩波文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ