12星座全体の運勢

「幻想の外へと飛び出して!」 

日増しに気温の下がり始める「霜降」が近づき、蟋蟀の鳴き声もいつの間にか聞こえなくなってくると、ますますひんやりとした秋の夜長を愉しめるようになってきますが、そんな中10月20日にはおひつじ座27度(数えで28度)で満月を迎えていきます。 

「大胆な行動」を促す火星や「根本的な変容」を司る冥王星を巻き込む形で配置される今回の満月のテーマは、「子宮内幻想からの脱皮」。これまで無意識的に調子をあわせてきた理想像だったり、なんとなく正しいとされ従ってきた決め事だったり、それらいつの間にか色あせてきつつあった馴染みの「幻想」をいよいよ破棄し、もっとおのれの欲望に忠実になっていくためのきっかけや実感を掴んでいくにはもってこいのタイミング。 

ちょうど秋の日の暮れやすいことの喩えで、よく「秋の日はつるべ落とし」などと言いますが、人によっては「つるべ」を井戸の中に落とすときのように、急速に意識が切り替わっていきやすいでしょう。 

さながら一度も離れたことのない塔から脱け出していくラプンツェルのように、「こうしておけば無難で安全」という領域の“外”へと思い切って飛び出していきたいところです。 
>>星座別の運勢を見る

乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「共異体」。

乙女座のイラスト
しばらく前からワクチンを打ったことを誇らしげに人前で語ったり、当然のように接種の有無を他人に尋ねたりする人が増えているように感じます。そういう人の心理には、無意識的な差別意識だけでなく、世間で多数派に位置づけられる同一的な共同体に属していたいという安心願望があるように思います。 
 
想定外の事態が続いて社会が不安定になればなるほど、そうした共同体への所属を求める人の数は増えていくものですが、しかしそれは思考停止の何よりの兆候であり、さらなる搾取構造の強化へと進んでいく自主的隷従の一歩に他ならないでしょう。 
 
例えば、そうした「共同体」に対抗するモデルとして「共異体」という言葉があります。これは「東アジア共同体」という理念に対するオルタナティブとして、哲学者の小倉紀蔵がアジア諸地域の広域共同体として概念化したものでしたが、人類学者の石倉敏明は、それをさらに身体と環境の関係や複数種の共生圏などへ拡張するべく、2019年のヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館において、「Cosmo-Eggs | 宇宙の卵」という共同展示を企画しました。 
 
これは石倉の他にキュレーター、美術家、作曲家、建築家の計5名による共同展示だったそうですが、そもそもそのきっかけになったのが、美術家の下道基行が沖縄の離島で撮影してきた「津波石」の映像作品だったそうです。 
 
この「津波石」とは、かつて海底にあった巨石が、大きな地震や津波の衝撃をつうじて地表にもたらされたもので、過去の大災害のモニュメントになっている訳ですが、それだけでなく、アジサシという渡り鳥が営巣していたり、小さな生物が岩の上を這っていたり、苔や植物がはえている以外にも、特別な埋葬場所とされていたり、聖地として信仰されているかと思えば、石の壁面に手造りの住居をつくって住んでいる人がいたり、あるいは周辺でサトウキビを収穫する島民や、遊んでいる子供の姿があったりする。 
 
石倉は「津波石とは異なるものの集合体、あるいは共異体という開かれた全体性のモデルを示すのにうってつけなミクロコスモスだった」のだと述べていますが、今期のおとめ座もまた、どうしたらそうした小さな「共異体」に身を置いていけるかがテーマとなっていくことでしょう。 
 
 
参考:奥野克巳他編『モア・ザン・ヒューマン マルチスピーシーズ人類学と環境人文学 (シリーズ人間を超える)』(以文社) 
12星座占い<10/17~10/30>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ