12星座全体の運勢

「存分に自分をぬかるませる」 

大地が目覚め、うるおい始める時期とされる「雨水」に入る直前である2月17日には、しし座の27度(数えで28度)で満月を迎えていきます。 

寒さがゆるんだり、厳しくなったりと、もしかしたら一年のうちでもっとも大地の息づかいを意識させられる時期にもあたるタイミングですが、そんな今回の満月のテーマは「不思議なほどの気持ちの明るさを楽しむこと」。 

冬が終わると光あふれる春の日が訪れるように、多大なフラストレーションや深い暗闇の後には、必ずふわふわとした浮遊感や解放感を伴うような回復期がやってきます。今回のしし座満月の時期もまた、厳しい冬の終焉と本格的な春の到来とをつなぐ過渡期であり、寒さと乾燥で張りつめていた神経や身体の末端のこわばりをどれだけゆるめていけるかということが大切になっていきます。 

ちょうどこの時期に雪解けや霜解けで土壌がぬかるむことを、昔から「春泥」と呼んでいたように、積極的にアクビをしたり、特に上半身の緊張や指先のとどこおりをほぐしていくことで、存分に自分をぬかるませていくイメージで過ごしてみるといいかも知れません。 

涙や鼻水もどんとこい。春への始動は、まずは身体の中から。全身がアクビそのものであるかのような赤ちゃんになったつもりで、たっぷりとゆるんでしまうことを自分に許してあげてください。 
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天秤座(てんびん座)

今季のてんびん座のキーワードは、「己が胸中の絃ひと筋に受け」。

天秤座のイラスト
よく「仕事哲学」や「人生哲学」など、確固とした信念や考えを持っていることを表す場合などに「哲学」という言葉が使われていますが、これは孔子であれカントであれ仏陀であれ、そこに根拠となる先人の思想やその積み重ねがあってそう言うのではなく、その根底に一種独特のなまなましい体験があって、そこからほとばしった直観をつかんだ際にそう言っていることがほとんどなのではないでしょうか。 
 
とはいえ、世に「〇〇哲学」と名の付けられたものの中で、真にそうした直観に裏打ちされたものはほとんどないのが実情ではありますが、もちろんその例外はあります。 
 
例えば、ソクラテス以前のほとんど宗教者であったギリシャ哲学の先人たちの思想史について書かれた井筒俊彦の『神秘哲学』は、本当に熱が伝わってきて、「無」から「有」が、すなわち意識が言葉とともに生まれてきて、それが百花繚乱と花が開くように発展してきたのだということを、完全に自分のつかんだ直観にもとづいて書かれているのだということが肌で感じられる他に稀な“哲学”書と言えます。 
 
井筒は、これは三十代の前半に、結核で血を吐きながら、ほとんど遺言のつもりで血で書き記したと「前書き」に書いてあるのですが、特にその第一部の冒頭の一節には、まさに古代密儀宗教的な神秘体験のパトスが、その思いつめた切なさとともに噴出しているのが感じられるはずです。 
 
悠邈たる過去幾千年の時の彼方から、四周の雑音を高らかに圧しつつある巨大なものの声がこの胸に通って来る。殷々と耳を聾せんばかりに響き寄せるこの不思議な音声は、多くの人びとの胸の琴線にいささかも触れることなく、ただいたずらにその傍らを流れ去ってしまうらしい。人は冷然としてこれを聞き流し、その音にまったく無感覚なもののように見える。しかしながら、この怖るべき音声を己が胸中の絃ひと筋に受けて、これに相応え相和しつつ、鳴響する魂もあるのだ。」 
 
この後で井筒は、十数年前にソクラテス以前期の哲人たちの断片的言句をはじめて知ったときに呪縛された「この宇宙的音声の蠱惑に満ちた恐怖」について語りたいと述べ、本論に入っていくのですが、今期のてんびん座もまた、日常的言語とは一線を画した、そうした「不思議な」「恐るべき音声」に耳をそばだててみるといいでしょう。 
 
 
参考:井筒俊彦『神秘哲学 第一部 自然神秘主義とギリシア』(人文書院) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ