12星座全体の運勢

「二元論的枠組みからの脱却」 

天文学には春の始まりであり、占星術的に一年の始まりである特別な節目の「春分」をいよいよ直前に控えた3月18日に、おとめ座27度(数えで28度)で満月を迎えていきます。 

前回3月3日のうお座新月は、冥王星(パワーへの飽くなき欲求)と火星(アクション)が重なる日でもあり、現在の緊迫した世界情勢がどちらへ傾いていくのかを占う上でも非常に大切な節目でしたが、18日の満月はそんな冥王星を緩和させる形で配置されており、「二元論の否定」ということがテーマとなってきます。 

すなわち、善か悪か、光か闇か、神か悪魔かという二元性の世界にどっぷり没入して、「〇〇〇〇が悪い」「こっちが良くて、あっちはダメ」「制裁、消去」と単純に決めつけていくのではなく、そうした二者択一的/二元論的な枠組みそのものから脱却するべく、否定できない真実をえぐり出していくのです。 

もちろんそれは「言うは易く行うは難し」ではありますが、ちょうど春分をはさんだ七日間を春の「お彼岸」といい、中日である春分が煩悩に満ちたこの世界(此岸)を超えた極楽浄土(彼岸)に最も近づける日だとされてきたように、混迷にみちた現在のこの世において、見失ってはいけないポイントを自分なりに見出し、感じ入っていくには今回の満月前後がもってこいのタイミングなのだとも言えるでしょう。  

その際、春の陽気をぞんぶんに取り入れて、できるだけ世の中や自分自身に対して冷笑的にならないよう努めることが大切であるように思います。世間一般からすれば些細なこと、つまらないことでもいい。自分にとって、これだけは忘れないでおこうと思える何かを見つけ出していきたいところ。 
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牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「ごく普通の体験を豊かにしていく」。

牡羊座のイラスト
「酒と女は芸の肥やし」という言葉もあるように、一般に、創造的な仕事をするには、ユニークなライフスタイルや特別な儀式や方法論が必要不可欠であるというイメージがかなり広く定着しているように思います。それがもう古いか新しいかはともかく、ひとつ言えることは創造的な仕事というのは得てして重労働であり、決して行き当たりばったりだけでは終わらせることはできないということ。 
 
例えば、「ミニマル・ミュージック」を提唱する現代作曲家のひとりであるジョン・アダムズは、2010年に行われたインタビューの中で「毎日午前九時から午後四時か五時くらいまで仕事をする」が「僕の経験からいうと、本当に創造的な人々の仕事の習慣はきわめて平凡で、とくにおいもしろいところはない」と話しており、「基本的に、なんでも規則正しくやれば、創作上の壁にぶちあたったり、ひどいスランプに陥ったりすることはないと思っている」と断言してもいます。 
 
とはいえ、何かと誘惑や邪魔の多い毎日の生活において何かを「規則正しく」やり続けるということほど難しいことはないはず。そして難しいことをこなせるようになるためには(しかもごく平凡に見えるように)多大な訓練が必要ですが、多くの場合、私たちは病気や事故などに直面するまで、日常生活を送るのに特別な訓練が必要であるとは考えません。それでも、そうした事情について精神科医の中井久夫は次のように述べています。 
 
異常体験というものは実はかなり類型的なものであり、そうでない体験のほうがはるかに豊富であり、分化しており、多様である。」 
 
日常生活を規則正しくこなしていく訓練とは、まさにこうした多様な経験の実る土地に分け入っていくことに他ならないでしょう。そして、そこで少しずつ土地をならして耕し、種を撒いて収穫することで、アダムズのようにさまざまな創造性の現れを経験していくことができるのです。 
 
ただ、アダムズは規則正しいスケジュールを守る一方で、「必要以上に計画しないようにして」おり、ときには「あきれるほど無責任な状態にいる必要」もあるのだとも述べています。 
 
自分の星座から数えて「生活習慣」を意味する6番目のおとめ座で満月が起きていく今期のおひつじ座もまた、ごく普通の体験をこそ「規則正しく」耕し、根気強く、ときに気ままに発展させていくことを大切にしていきたいところです。 
 
 
参考:メイソン・カリー、金原瑞人/石原文子訳『天才たちの日課』(フィルムアート社)、中井久夫『世に棲む患者』(ちくま学芸文庫) 
12星座占い<3/6~3/19>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ