12星座全体の運勢

「社会的秩序の相対化」 

いよいよ春もたけなわに入り、花々が咲いては散ってゆき、それを「惜しむ」思いが深まっていく頃合いに変わってきました。そんな中、「春分」から「清明」へと節気が移ろう直前の4月1日に、おひつじ座11度(数えで12度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは、「天の采配への同期」。すなわち、ふだん地上を這うように生きている自分の選択や振る舞いのひとつひとつが、みずからの意思や社会の空気によってのみ決定されているのではなく、それらを超えたところで働いている宇宙的な原理によって突き動かされているのだという実感を改めて深めていくこと。 

例えば、春になってあたたかくなってくれば冬鳥の雁は北へ帰っていきます。かつてはその姿が日本のどこでも見られ、子供たちは「棹になれ、鉤になれ(まっすぐに連なれ、鉤形に並べ)」とはやしたてたそうですが、そうして新たな季節の訪れを知らせてくれる渡り鳥が道に迷うことなく、何千キロもの長距離を移動し、それを毎年繰り返すように、私たち人間もまた、食事や睡眠などのごく身近なレベルの日常的行動から、経済活動や軍事侵攻などの集団的行動まで、日々何らかのかたちで、地球の磁気や気候の変動などの惑星規模の影響力によって左右されているのです。 

ここのところ、従うべき法と秩序とは何か、ということが人間中心的なものへ寄り過ぎていましたから、今回の新月では、いかにそうした社会的な通念や常識を相対化し、宇宙的サイクルや天の采配に同期して、自然体へと還っていけるかということが、各自の状況に応じて問われていくことでしょう。 
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魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「立ち止まってはいけない」。

魚座のイラスト
フランス革命を大きく後押しした政治哲学者で、人間の理想的な状態は文明や社会の中にではなく、自然の中にこそあると説いたジャン=ジャック・ルソーは、晩年に著した『孤独な散歩者の夢想』の中で次のように書いていました。 
 
わたしが集中できるのは歩いている時だけだ。立ち止まると考えは止まる。わたしの精神は足がともなう時だけ働くようだ」 
 
これは文字通り日ごろの生活習慣として受け取ることもできると同時に、幼少期から出奔と放浪を余儀なくされ、移動し続けることを半ば運命づけられていたかのような、ルソー自身の人生の軌跡を比喩的に言い表したものとしても受け取ることができるように思います。 
 
その意味で、いまだ猛威をふるう新型コロナウイルスの弊害で、自由な移動やふるまいを制限されている現在の状況を鑑みれば、こうしたルソーの言葉はほとんどの現代人にとって、みずからの思考停止の危機に警鐘を鳴らすものとして響いてくるのではないでしょうか。 
 
好きなところを歩き回る自由を奪われることは、自分の頭で考える自由を喪失することに他ならない。日頃から自身の言動をこまめに振り返る習慣のある人なら、私たちが知らず知らずのうちにみずからの自由をすすんで放棄し、自主的に隷従状態に置かれることを欲する生きものでもあることをよく知っているはずです。 
 
その点、無目的な旅や散歩ひとつとっても、それは普段の生活システムの外へと飛び出してまなざしを反転させ、「外」からその限界だったり不足だったりを明らかにしていく決定的なきっかけとなりうるのだということを、ルソーはよく知っていたのでしょう。 
 
4月1日にうお座から数えて「身体性に基づいた深い実感」を意味する2番目のおひつじ座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、自身の自由なふらつきを確保するだけに留まらず、少なくとも自分だけでも周囲の人たちの自由を奪ったり制限したりするのではなく、むしろその逆の言動をしていけるよう心掛けていきたいところです。 
 
 
参考:ジャン=ジャック・ルソー、今野一雄訳『孤独な散歩者の夢想』(岩波文庫) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ