12星座全体の運勢

「見通しを立てる」 

春の山笑う季節から徐々に初夏の緑したたる季節へと移り変わりゆく「穀雨(こくう)」を迎えていく直前の4月17日には、てんびん座26度(数えで27度)で満月を形成していきます。 

そんな今回の満月のサビアンシンボルは、「明るく澄んだ空を高く飛ぶ飛行機」。すなわち、この世の向こう側から、この世この生を見つめ直していくこと。 

とくに、「死と再生」を司る冥王星と「伝統と秩序」を司る土星を巻き込む形で形成される今回の満月では、自分の置かれた状況の整理し、合意的現実や幻想から自らの意志で抜け出ていく準備をしていくだけではなく、その全体像やあらましを俯瞰し、今起きている危機や変化がどのようなものか、あらためて対象化し、見極めていくことが目指されます。 

ちょうど今回の満月が起きる頃合いを、日本の七十二候では「虹始見(にじはじめてみる)」といい、まだ淡く、すぐに消えてしまう春の虹が空に大きくかかっているのを見ることができるようになってきます。 

今期はいわば、そうした虹の視点からこの世を振り返るようにして、今自分が演じている「人生というお芝居を客観視していくこと」がテーマとなっていくでしょう。 

その際、自分はどんなプロットやストーリーを生きていて、起承転結のうちどのフェーズにいるのか、そしてそこで過去の世代の取り組みや努力、他の人たちとの協力にいかに支えられているか。また、重要な共演者は誰で、どのような関係性にあるのか、そして劇において重要な役割をはたす舞台装置は何か、といったことをよくよく確かめていくことで、人間の問題に対する新しいパースペクティブを手に入れていくことができるはず。 
>>星座別の運勢を見る

蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「空気に浸っているということへの気づき」。

蠍座のイラスト
近代社会では、空気はもっとも当たり前だと思われている現象であり、つねに吸ってはいるものの、それは空っぽで目に見えないことの代名詞であり、単にそこに「何もない」ことの言い換えでしかありませんでした。 
 
人類学者のデイヴィッド・エイブラムは、『感応の呪文』の第七章「空気の忘却と想起」において、かつて古代ギリシャ語において、空気は息や魂を表す同じプシュケーという言葉によって表され、いきいきとした実感が伴っていたが、やがて時代の経過とともに、「完全に抽象的な概念となって物理的身体の内部に―監獄同然に―閉じ込められてしまった」のだと述べ、それは空気から「幻影や目に見えない力」が追い払われ、「霊魂的奥行き」が取り除かれたことに他ならないのだと述べています。 
 
ところが、産業化の全世界的な進行とともに産業汚染物や大量の二酸化炭素の廃棄場となった大気は、時に鼻の粘膜を刺激するほど様変わりし、水の汚染や動植物の急速な絶滅、複合的な生態系の崩壊などを引き起こしていくなかで、人類はようやく空気というものが、あって当たり前のものなどではなかったことを思い出しつつあります。 
 
エイブラムは言います。「空気こそが私たちを最も直接的に包み込んでいる」のであり、言わば「空気は私たちが最も親密にその中にいる要素」なのだと。現代人の文明化された精神は依然として、身体や自然からみずからを切り離そうとする諸力の働きに慣れ親しみ、自分は自律的で、独立した存在であると思い込もうとしていますが、新鮮な空気に浸ることで何らかの力づけを得られるという体感をへるごとに、真にこの世界の一部であることを思い出すことができるのではないでしょうか。 
 
この呼吸する風景はもはや、それを背景として人間の歴史が展開するような活気のないものではなく、自分の活動が参与する効力のある知性の領域なのである。自己言及の王国が崩壊し始めると、そして私たちが空気に目覚め、生成の深みにおいて私たちと関わっている多様な他者に気付き始めると、私たちの周りのすがたかたちが目覚め、生き生きとしてくるようだ……。」 
 
逆に言えば、私たちは自分を取り巻く空気を、空っぽの何もない空間として経験している限りにおいて、自分たちを支えている他の動植物や天地との相互依存関係を否定したり、抑圧したりすることができるだとも言えます。 
 
その意味で、4月17日にさそり座から数えて「霊魂的奥行き」を意味する12番目のてんびん座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、まずは新たなサイクルの出来る限り新鮮な空気を吸い込むところから、世界を拡げるための試みを始めてみるといいでしょう。 
 
 
参考:デイヴィッド・エイブラム、結城正美訳『感応の呪文』(論創社、水声社) 
12星座占い<4/3~4/16>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ