12星座全体の運勢

「見せるための花はいらない」 

すでに青葉若葉が目に鮮やかになってきましたが、暦の上で夏の始まりを告げる「立夏」にほど近い5月1日には、おうし座10度(数えで11度)で新月を迎えていきます。 

おうし座11度のサビアンシンボルは「花の畝に水を撒く女」。みずからを耕し、ケアすること、洗練させることを象徴する度数であり、さらに今回の新月は「理想と刷新」の天王星と重なる形で起きていきますから、自分を取り巻く世界を変えるためにいつも以上に大胆な態度表明を行ないやすいタイミングといえます。 

それを踏まえた上で、今回の新月のテーマをあえて一言でいうならば、「見せるための花はいらない」ということになるのではないでしょうか。 

例えばイチジクの花は、花が見えないまま、いきなり果実が育ち始め、花はその果実の真ん中に隠れていますが、人間に置き換えてみるとそのような人は滅多に見かけないはずです。 

というのも、いまの社会ではいかに自分をよく見せ、市場価値や評価を高められるか、高くもしくは長く買ってもらうかということが過剰に重視されており、結果的に自意識にがんじがらめになったり、生い茂る雑草のような自分の目立たない側面を過小評価したり、身体的ないし精神的な健康ということが疎かになったりして、美しいとは本来どういうことなのか、ますます分からなくなっているように感じるからです。 

その意味で、今回の新月ではどんなに常識に反してもいい、モテなくても見向きもされなくていい、他ならぬ自分自身を喜ばすための時間を確保し、そうした取り組みに方向性を切り替えていくために、どれだけそれ以外の部分、すなわち「誰かに見せるための花」やそのための手間ひまを、思い切って切り捨てることができるかが問われていくでしょう。 
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双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「恐るべき行為」。

ふたご座のイラスト
名エッセイストで知られるアニー・ディラードが、文章を書く上で大切にしている秘訣について綴った『本を書く』という本のなかに、次のような一節があります。 
 
あなたが放棄しなければならないのは、単にもっともよく書けた文章というだけでなく、皮肉なことに、今まで書いたものの中でももっとも核になる部分なのだ。それはもともとの主要な一節である。そこからほかの文章が派生する部分であり、そのためにあなた自身その作品を書く勇気と得たというエッセンシャルな部分である。」 
 
つまり彼女は、ここだけは決して切り捨ててはいけないし、その必要などないと心底思える最良の部分をこそ放棄せよ、それが文章術だと言っている訳で、はじめて読んだときはぶったまげたものでした。 
 
いや、正直に言うと、いまだに納得はいっていません。しかし、書き手はそれを書くのに苦労した文章ほど、自分がどれだけ苦労したか、ねぎらいや称賛が必要かを知ってもらうために、最後まで頑固に残そうとするというアニーの指摘にぐうの音もでないでいる自分がいることもよく分かっているのです。 
 
つまり、それは本当の意味で作品に必要だから書かれた文章ではなく、誰かに見せるために、しかも作品の本質とは無関係な理由のために取っておかれてある場合が多い訳で、それをアニーは「作家がへその緒を切る勇気がなかった作品はたくさんあ」り、それは「正札を外さなかったプレゼント」に他ならないのだ、というじつにうまい言い方でばっさりと切って捨てています。確かに、読者からすれば、書き手からのプレゼントはともかく、それを書くのに幾らかかったなど知りたくもないでしょう。アニーは続けます。 
 
道そのものは作品ではない。あなたがたどってきた道には早や草が生え、鳥たちがくずを食べてしまっていればいいのだが。全部捨てればいい、振り返ってはいけない。」 
 
5月1日にふたご座から数えて「秘密」を意味する12番目のおうし座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、自分が紡ぎ出す世界を変えるためにも、誰も見ていないところでどれだけアニーがいうような「恐るべき行為」を実行できるかどうか問われていくでしょう。 
 
 
参考:アニー・ディラード、柳沢由美子訳『本を書く』(田畑書店) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ