12星座全体の運勢

「見せるための花はいらない」 

すでに青葉若葉が目に鮮やかになってきましたが、暦の上で夏の始まりを告げる「立夏」にほど近い5月1日には、おうし座10度(数えで11度)で新月を迎えていきます。 

おうし座11度のサビアンシンボルは「花の畝に水を撒く女」。みずからを耕し、ケアすること、洗練させることを象徴する度数であり、さらに今回の新月は「理想と刷新」の天王星と重なる形で起きていきますから、自分を取り巻く世界を変えるためにいつも以上に大胆な態度表明を行ないやすいタイミングといえます。 

それを踏まえた上で、今回の新月のテーマをあえて一言でいうならば、「見せるための花はいらない」ということになるのではないでしょうか。 

例えばイチジクの花は、花が見えないまま、いきなり果実が育ち始め、花はその果実の真ん中に隠れていますが、人間に置き換えてみるとそのような人は滅多に見かけないはずです。 

というのも、いまの社会ではいかに自分をよく見せ、市場価値や評価を高められるか、高くもしくは長く買ってもらうかということが過剰に重視されており、結果的に自意識にがんじがらめになったり、生い茂る雑草のような自分の目立たない側面を過小評価したり、身体的ないし精神的な健康ということが疎かになったりして、美しいとは本来どういうことなのか、ますます分からなくなっているように感じるからです。 

その意味で、今回の新月ではどんなに常識に反してもいい、モテなくても見向きもされなくていい、他ならぬ自分自身を喜ばすための時間を確保し、そうした取り組みに方向性を切り替えていくために、どれだけそれ以外の部分、すなわち「誰かに見せるための花」やそのための手間ひまを、思い切って切り捨てることができるかが問われていくでしょう。 
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天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「現代社会病」。

天秤座のイラスト
現代は“誰もが穏やかではいられない時代”であるとも言えるのではないでしょうか。ことに、日本社会はいま平成の「失われた30年」のツケをじわじわと払わされつつある苦しい状況にある訳ですが、それは経済水準の低下という目に見える困難以上に、誰もが病や、少なくともそれに近い症状を抱え込んでいるという、目に見えない困難という形で社会を侵食しつつあるように思います。 
 
そうしたものの中でも知っておくべきなのは、精神病とも神経症などのいずれとも異なるために「境界性(ボーダーライン)」と呼ばれ、今日ではその根底に自己愛の問題があるために、境界性パーソナリティ障害と名付けられている一群のグループです。 
 
医学者で作家の岡田尊司の『境界性パーソナリティー障害』(2009)によれば、そうした悩みを抱えている人たちは90年代以降急増しているため、もはや「現代社会病」と呼んでも差し支えない面があり、「アメリカのデータでは、一般人口の2%、精神科外来患者の11%、入院患者の19%が、境界性パーソナリティ障害の診断基準に該当する」とされ、「日本もその水準に近づきつつあ」り、特に「若い年齢性」や「女性」に多く、その頻度は男性の約4倍であるが、次第に男女間の差も縮まりつつあるのだと言います。 
 
もちろん、境界性パーソナリティ障害と一口に言っても、ベースの性格によってさまざまなタイプに分かれるのですが、その一例として、これもやはり「現代社会病」の一つである自己愛性パーソナリティ障害と合併したケースについての一節を引用しておきます。 
 
傲慢で、自己特別視が強く、情よりも利で動くタイプを自己愛性パーソナリティと呼ぶが、自己愛性パーソナリティ自体は、強い自信によってストレスをはね除ける力をもつ、安定した人格ということが多い。しかし境界性とオーバーラップしたタイプでは、自己愛性の特徴に加えて、非常に不安定で衝動的で、自己破壊的な傾向が加わることで、本人の激しさも周囲はしばしば苦しめられることになる。本人も見かけの強さからはうかがえない、脆さや孤独、劣等感を内面に抱えており、依存対象を必要とする。特定の一人、二人の人間だけにその弱さを見せるということもあるが、その部分をうまく受け止めてもらえないと、激しい攻撃や支配、パラドキシカルな反応を見せる。」 
 
では、こうした障害を自身や親しい相手が抱えてしまった場合、どうしたらいいのか。岡田は「境界性パーソナリティ障害は、自己を確立するための産みの苦しみ」であり、「それは、病というよりも、一人の人間が、これまで背負ってきたものを一旦清算し、大人として生まれ変わり、再生するための試練」に他ならないのだといい、もし本人だけでなく、支えている人たちの気力が尽きになることがあれば、「そんなときは、結果を急ぎすぎているのだ」とも言及しています。 
 
その意味で、5月1日にてんびん座から数えて「絆」を意味する8番目のおうし座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、自身や身近な相手との深く関わる上で知っておかなければならないこと、受け止めていかなければならないことを見定めていきたいところです。 
 
 
参考:岡田尊司『境界性パーソナリティー障害』(幻冬舎新書) 
12星座占い<5/1~5/14>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ