12星座全体の運勢

「見せるための花はいらない」 

すでに青葉若葉が目に鮮やかになってきましたが、暦の上で夏の始まりを告げる「立夏」にほど近い5月1日には、おうし座10度(数えで11度)で新月を迎えていきます。 

おうし座11度のサビアンシンボルは「花の畝に水を撒く女」。みずからを耕し、ケアすること、洗練させることを象徴する度数であり、さらに今回の新月は「理想と刷新」の天王星と重なる形で起きていきますから、自分を取り巻く世界を変えるためにいつも以上に大胆な態度表明を行ないやすいタイミングといえます。 

それを踏まえた上で、今回の新月のテーマをあえて一言でいうならば、「見せるための花はいらない」ということになるのではないでしょうか。 

例えばイチジクの花は、花が見えないまま、いきなり果実が育ち始め、花はその果実の真ん中に隠れていますが、人間に置き換えてみるとそのような人は滅多に見かけないはずです。 

というのも、いまの社会ではいかに自分をよく見せ、市場価値や評価を高められるか、高くもしくは長く買ってもらうかということが過剰に重視されており、結果的に自意識にがんじがらめになったり、生い茂る雑草のような自分の目立たない側面を過小評価したり、身体的ないし精神的な健康ということが疎かになったりして、美しいとは本来どういうことなのか、ますます分からなくなっているように感じるからです。 

その意味で、今回の新月ではどんなに常識に反してもいい、モテなくても見向きもされなくていい、他ならぬ自分自身を喜ばすための時間を確保し、そうした取り組みに方向性を切り替えていくために、どれだけそれ以外の部分、すなわち「誰かに見せるための花」やそのための手間ひまを、思い切って切り捨てることができるかが問われていくでしょう。 
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水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「地底を探す」。

水瓶座のイラスト
町から空き地や井戸がなくなり、あらゆる道の行き先がコンクリートで埋めつくされ、水路という水路もいっせいに暗渠に変わってしまった現代社会というのは、昔話に出てくるような大地にぽっかりあいた「穴」だとか、冒険譚の格好のフィールドであった「地底」といった想像領域を失ってしまった世界なのだと言えます。 
 
代わりに、グーグルアースや衛生から中継される映像や画像など、俯瞰的なまなざしを取り入れることに慣れてしまい、それが想像以上に浸透して、各人の無意識に深く「現実」として埋め込まれているのではないでしょうか。 
 
とはいえ、仮にそうだとしても、それの何が問題なのかという疑問が湧いてくるはずですが、例えば、ファンタジー小説家の井辻朱美は「ファンタジーは地底をめざす」という論考において、「地底とはおそらく自己の原始的な(客観的サイズとは無縁の)主観的身体に出会う場所」であり、それは「生と死が出会う場所」「イニシエーションの場所」に他ならないのだと述べています。 
 
また、井辻は恩田陸のファンタジー小説『上と外』の登場人物のセリフを引用する形で、そんな地底体験の本質について、次のようにも語っています。 
 
人に見られている自分でもなく、自分が考えている自分でもなく、ただ一歩ずつ壁を昇ってゆく、物理的にも精神的にもぴったりとずれることなく重なり合った、まさに等身大としか言いようのない、そのまま一人きりの自分自身がいるのだ」 
 
確かに、こうした自分から抜け出した視点からの世界の再構成がきかない地底では、比較を絶した「等身大の自分」であるしかないという強制力が働きますし、「腸か膣」を思わせるような地下迷路を聴覚や触覚や平衡感覚をフル稼働させながら彷徨うなかで、はじめて体のなかに眠っていた生存本能にスイッチが入っていくものなのでしょう。 
 
そういう意味では、人びとから「地底」を奪うような仕方で発展してきた現代社会とは、人が「自分らしくある」という時の「自分」が分からなくなるような環境にいつの間にか設計されてしまっているのだとも言えるかもしれません。 
 
5月1日にみずがめ座から数えて「暗闇」を意味する4番目のおうし座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、そうした現代人のひとりとして、できるだけ身近な環境のなかから「地底」を見つけていくよう試みてみるといいでしょう。 
 
 
参考:井辻朱美「ファンタジーは地底をめざす」『大航海 ファンタジーと現代』所収 
12星座占い<5/1~5/14>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ