12星座全体の運勢

「見せるための花はいらない」 

すでに青葉若葉が目に鮮やかになってきましたが、暦の上で夏の始まりを告げる「立夏」にほど近い5月1日には、おうし座10度(数えで11度)で新月を迎えていきます。 

おうし座11度のサビアンシンボルは「花の畝に水を撒く女」。みずからを耕し、ケアすること、洗練させることを象徴する度数であり、さらに今回の新月は「理想と刷新」の天王星と重なる形で起きていきますから、自分を取り巻く世界を変えるためにいつも以上に大胆な態度表明を行ないやすいタイミングといえます。 

それを踏まえた上で、今回の新月のテーマをあえて一言でいうならば、「見せるための花はいらない」ということになるのではないでしょうか。 

例えばイチジクの花は、花が見えないまま、いきなり果実が育ち始め、花はその果実の真ん中に隠れていますが、人間に置き換えてみるとそのような人は滅多に見かけないはずです。 

というのも、いまの社会ではいかに自分をよく見せ、市場価値や評価を高められるか、高くもしくは長く買ってもらうかということが過剰に重視されており、結果的に自意識にがんじがらめになったり、生い茂る雑草のような自分の目立たない側面を過小評価したり、身体的ないし精神的な健康ということが疎かになったりして、美しいとは本来どういうことなのか、ますます分からなくなっているように感じるからです。 

その意味で、今回の新月ではどんなに常識に反してもいい、モテなくても見向きもされなくていい、他ならぬ自分自身を喜ばすための時間を確保し、そうした取り組みに方向性を切り替えていくために、どれだけそれ以外の部分、すなわち「誰かに見せるための花」やそのための手間ひまを、思い切って切り捨てることができるかが問われていくでしょう。 
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魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「投壜通信としての詩」。

魚座のイラスト
日々大量の言葉や情報がスマホやPCの画面から流れ込んでくる現代社会においては、逆説的にひとつひとつの言葉の重みは限りなく軽くなり、やっとの思いで発語したうめきや叫びに似た言葉でさえも、すぐさま何事もなかったようにかき消されてしまう傾向があるように思います。 
 
したがって、何を言っても無駄だと、本当の言葉を語らなくなってしまったり、その反動で見事なばかりに嘘ばかりを並べて自分自身を覆い尽くしてしまっているような人も珍しくありません。 
 
しかし一方で、これまで数多の詩人をはじめとした人たちがそうしてきたように、言葉は決して見過ごしてはならない真実を伝えるための最大の手段であり、多くの試みが瓦礫の山や海の藻屑の一部になってきたとはいえ、彼らの言葉によって魂を救われ、その思いととともに命を繋いできた人びとが確かにいたことも事実です。 
 
例えば、ルーマニア出身の詩人で、ナチ支配下の強制収容所生活を生き延びたパウル・ツェラン(両親はともに死亡)は、のちにブレーメン文学賞の受賞講演において、詩は投壜(とうだん)通信に他ならないとして、次のように述べています。  
 
詩は言葉の一形態であり、その本質上対話的なものである以上、いつの日にかはどこかの岸辺に―おそらくは心の岸辺に―流れつくという(かならずしもいつも期待にみちてはいない)信念の下に投げ込まれる投壜通信のようなものかもしれません。詩は、このような意味でも、途上にあるものです―何かをめざすものです。」 
 
投壜通信というのは、手紙を壜(びん)に詰めて栓をして波に投じる行為のことですが、詩人で文学者の細見和之の書いた『「投壜通信」の詩人たち』によれば、もともとは難破船の水夫たちが行ったとされる伝説的な振る舞いであり、自分が船とともに海の藻屑と消えるのが明らかな場合に、家族や知人へのメッセージを万に一つの可能性に託す賭けに等しい行為だったのだそうです。ツェランの先の引用部分の続きを見てみましょう。 
 
何をめざすのでしょう?何かひらかれているもの、獲得可能なもの、おそらくは語りかけることのできる「あなた」、語りかけることのできる現実をめざしているのです。」 
 
同様に、5月1日にうお座から数えて「コミュニケーション」を意味する3番目のおうし座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、自分にとってかけがえのない「あなた」へ向かって決死の呼びかけを行なっていくことがテーマとなっていくはずです。 
 
 
参考:細見和之『「投壜通信」の詩人たち』(岩波書店) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ