教えてくれたのは 関屋裕希さん
臨床心理士。東京大学大学院医学系研究科客員研究員。専門分野は職場のメンタルヘルス。現在、新型コロナウイルスの拡大によりニーズの高まるストレスマネジメントプログラムの研究開発にも携わる。著書に『感情の問題地図』など
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「スムーズにいかないのが当たり前」を前提に

心の準備をする間もなく、多くの企業で導入が始まったリモートワーク。なかなかペースがつかめず戸惑っている人も多いのでは? これまでの働き方とリモートワークの違い、全員で共有しておくべき前提について、臨床心理士の関屋裕希さんにうかがいました!
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いざリモートワークをしてみると思い通りにいかないことが多く、戸惑いやストレスを感じる人も。

リモートワークによるいちばんの変化は「相手が見えない」こと

「じつは、表情や仕草、声のトーンといった非言語情報はコミュニケーションの65%を占めるといわれています。リモートワークによって非言語情報が見えなくなると相手の状態を察することができないため、普段だったら様子や雰囲気で察していた声をかけるタイミングなどをはかるのが難しくなってしまうのです。また、メールやチャットなども『自分が伝えたいことは半分も伝っていないかも』と想定して、いつもより丁寧に文章をを書いたり、柔らかい表現を使うようにしたり、また返事が想定した内容でなくてもがっかりしないようにしましょう。また、相手の文章が端的で『冷たい』と感じても、あまり気にしないようにするのも大事です」(関屋さん、以下同)

相手の状況が見えないぶん、自分から起こすアクションにも迷いが生まれ、いつもとは違う疲れを感じている人も多いはず。しかも、突然のリモートワーク導入でほぼ全員がビギナー状態であれば、いつも以上に時間がかかったり、思い通りにいかないこともしばしば。
そもそもの前提として、“最初からうまくいく”と思わない方がいいですね。みんなで新しいことを習得し、学んでいるという共通認識を持てば、“スムーズにいかなくて当たり前”が前提になるので、不満も溜まりにくくなります」

1日の仕事を終えたら翌日のおおまかなスケジュールを決めておくのもおすすめ

「今日残った仕事の見通しを立てずに放置すると頭のどこかで気になってしまい、気持ちも切り替えづらいもの。睡眠にも影響してしまいます。ほかにも、スケジュールの隣に当日進められた作業を書き出すと、仕事の“見える化”ができるうえ、作業のペースもつかみやすくなりますよ」

とはいえ、手探りで進めざるを得ない状況が続くと「こうあるべき」という正義感めいた思いが、普段よりも浮かびやすくなるのだそう。
「“自分だけ”が大変だと思うと、どんどんつらくなります。いまは多くの人たちが同じように難しさや苦しみを感じている時期。みんながテンパっている状況なんだと俯瞰して考えることで、“〜すべき”という思いに振り回されないようにしましょう。突然の変化に戸惑いが大きいかもしれませんが、視点を変えれば、いまは新しい働き方のインストール中なんです!」

もしかすると、リモートワークがスタンダードになる未来はそう遠くないのかも?
次回は、「リモートワークだからこそ陥りがちな感情への向き合い方」をご紹介します。
取材・文/国分美由紀