12星座全体の運勢

「大きな物語に取り込まれていく」

6月21日の夏至の日の夕方16~18時にかけて、蟹座1度で部分日食(新月)が起こり、晴れていれば日本全国で欠けていく太陽が観測できます。これは日食と新月、そして一年のうち最も日が長くなる夏至が重なる特別なタイミングであり、時代の移り変わりの上でもひとつの節目となっていきそうです。そのキーワードは、「大きな物語」。これは例えば「むかしむかし、あるところに……」といった語りで始まる昔話のように、歴史ないし共同体のもつ空間的・時間的射程の中に自らを位置づけ直していくことで、個人として好き勝手に振る舞う自由を失う代わりに、手で触れられる夢のような生々しい物語の中へと取りこまれていく。今季はそんな"クラい”感覚の極致をぜひ味わっていきたいところです。

射手座(いて座)

今週のいて座のキーワードは、「生む」。

射手座のイラスト
歴史を振り返ると、6世紀に日本へ渡ってきた仏教は、日本土着の神を取り込んだだけではなく生や性を根本のところにおいて否定し、そこからの超越を説いてきたし、その影響は今でもじつに根深いものがあるのではないでしょうか。

では、8世紀のはじめ頃に書かれた日本最古の歴史書である『古事記』には、生と性の起源はどのように描かれていたのか、改めてひも解いてみると、次のようにあります。

そこで、イザナキノミコトが言われるには、「私の身体には出来上がって、余分なところが一箇所ある。だから、この我が身体の余ったところを、あなたの身体の足らないところに刺し塞いで、国土を生み出そうと思う。生むことはどうだろうか」と仰ると、イザナミノミコトは、「それはよいことだ」とお答えになった

これは今日の感覚から見ても、とても大らかな宣言ないし公的発言であり、性の合一をもって物のかたちが完成するという信仰がそこにあっただけではなく、古代人が性を隠蔽したりしなかったということがわかるのではないかと思います。

 ザナギ・イザナミによる生命の誕生に向けての問答は、まさに仏教とは異なるベクトルをもった生や性への「肯定の論理」を指し示すものでしたが、これはまさに自分に足りないものを誰かの力を借りることで補い、シナジーを生み出していこうとしている今期のいて座は大切にしていきたい原動力と言えるでしょう。


参考:中村啓信/訳注『新版 古事記 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫)
12星座占い<6/14〜6/27>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ