話題のステージの中から、キーワードに沿ったイチ押し舞台、そして2本のおすすめをご紹介します。

【今月のキーワード】伝説の舞台が、現代に甦る!

唐十郎といえば、アングラ演劇ブームを牽引した「状況劇場」を旗揚げした、日本演劇史にその名を残す演劇人。本作は、そんな唐の代表作のひとつで、初演は、1974年。宮沢賢治の『風の又三郎』にギリシャ神話、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』、初演の前年に起こった自衛隊員による隊機乗り逃げ事件などが織り交ぜられている。根津甚八、李礼仙、小林薫というアングラ界の伝説たちがつくり上げたその陶酔的な美しい舞台は、当日券を求め5時間並ぶほどの熱狂を呼んだという。そして、2019年。主演するのは約6年ぶりに舞台に立つ窪田正孝と、芸歴20周年で初のアングラ演劇への挑戦となる元宝塚トップスター、柚希礼音。伝説的な舞台の再演での主演となれば、プレッシャーも相当なものだろうが、北村有起哉、丸山智己、江口のり子といった芸達者たちや、ベテランの風間杜夫や山崎銀之丞の存在が、大きな支えになるはず。演出は「状況劇場」出身で、「新宿梁山泊」の主宰者である金守珍。現代の日本で、本作の持つ重層的なメッセージをどんな演出で伝えてくれるのか、注目が集まる。

本作は、タイトルからわかるとおり、宮沢賢治の『風の又三郎』がベースとなっている。窪田演じる織部は、自分を連れ去る想像上の友達「風」の少年に憧れを抱いている。原作では転校生の三郎として登場し、幻想と現実世界を行き来するように、風を巻き起こす不思議な存在の少年だ。謎が多いともいわれる原作だが、三郎が子供たちにいったい何を残して去ったのか、今一度思いをめぐらしながら観劇の日を待つのもいいかもしれない。
窪田正孝さん、柚希礼音さん主演。『Bunの画像_1
【今月のイチ押し☆ステージ】『Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019 唐版 風の又三郎』

精神病院から逃げ出してきた織部と、宇都宮から流れてきたホステスのエリカ。織部は、男装したエリカを幼少期の頃から憧れる「風の又三郎」だと信じ込む。エリカは、自衛隊の練習機を乗り逃げした恋人を探す道連れとして、織部の純真さを利用する。◆2/8〜3/3 Bunkamuraシアターコクーン(大阪公演あり) ●Bunkamura ☎03・3477・3244
窪田正孝さん、柚希礼音さん主演。『Bunの画像_2
【今月のイチ押し☆ステージ2】『童話集 風の又三郎』

宮沢賢治の死の翌年、1934年に発表され、まだなお愛され続ける童話。風と共に現れ去った転校生の三郎と小さな村の子供たちの心のゆらめきを描く。リズム感ある冒頭のフレーズはあまりにも有名。そのほか18編を収録。(岩波文庫 ¥740)

【オススメステージは『漫画みたいにいかない。第2巻』と『世田谷パブリックシアター×パソナグループ CHIMERICA チャイメリカ』】

窪田正孝さん、柚希礼音さん主演。『Bunの画像_3
『漫画みたいにいかない。第2巻』

構成作家のオークラが脚本・演出を手がけたドラマの舞台版第2弾。コント師でありながら演技力に定評のある東京03、三代目J Soul Brothersの山下健二郎、注目の女優、山本舞香が、息の合った芝居でシニカルな笑いを起こす。◆2/19~22 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール(地方公演あり) ●キョードー東京 ☎0570・550・799
窪田正孝さん、柚希礼音さん主演。『Bunの画像_4
『世田谷パブリックシアター×パソナグループ CHIMERICA チャイメリカ』

2014年、ローレンス・オリヴィエ賞受賞の作品に、日本を代表する演劇家、栗山民也と田中圭、満島真之介、倉科カナ、眞島秀和という豪華な俳優が結集。タイトルはChinaとAmericaを合わせた造語で、天安門事件を背景に現代的な問題を描く。◆2/6~24 世田谷パブリックシアター(地方公演あり) ●世田谷パブリックシアターチケットセンター ☎03・5432・1515

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MORE2019年2月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 原文/小泉咲子
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