It girlの「私の履歴書」

選んだ生き方にこそ、センスが表れる

主体的にキャリアを選択し、自分らしく働く女性たちを取材するこの連載。今回は、一般社団法人『NO YOUTH NO JAPAN』の代表理事を務め、政治におけるジェンダーギャップ解消のプロジェクト『FIFTYS PROJECT』も進めている能條さんにお話をうかがいました。

能條桃子(のうじょう ももこ)さん

大学在学中に一般社団法人を立ち上げ、U30世代の政治参加や、政治分野のジェンダーギャップ解消のために活動

一般社団法人『NO YOUTH NO JAPAN』代表理事  『FIFTYS PROJECT』代表 能條桃子さん

Job :
一般社団法人『NO YOUTH NO JAPAN』代表理事
『FIFTYS PROJECT』代表

Profile :
1998年生まれ、神奈川出身。慶應義塾大学在学中の2019年に、『NO YOUTH NO JAPAN』を立ち上げ、翌年に一般社団法人化。2022年には『FIFTYS PROJECT』もスタート

History

2017
大学2年の秋に2週間、選挙の候補者支援インターンを経験。候補者、支援者に若い世代の女性が少ない現実を知る

2019
デンマークに留学。7月の参議院議員選挙の際、『NO YOUTH NO JAPAN』を始動

2021
「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会」の会長だった森喜朗氏の女性蔑視発言時に15万筆超の抗議署名を集める。3月に慶應義塾大学 経済学部を卒業し、同大学院へ進学

2022
政治分野のジェンダーギャップ解消を目指すプロジェクト『FIFTYS PROJECT』を始動

能條桃子さんの選択

“かゆいところに手が届くような「0.5歩先くらい新しい」活動を続けたい”

能條桃子さん

「大学3年になると、キャンパス内が黒いスーツを着た人であふれる、その光景が怖かった」と3月に大学院を卒業した能條さんは語る。彼女は若い世代の政治参加を促進する一般社団法人『NO YOUTH NO JAPAN』を設立し、最近は政治分野のジェンダーギャップ解消のためのプロジェクト『FIFTYS PROJECT』も進めている。

能條桃子「今でこそ政治やジェンダーについてのメッセージを発信している私ですが、大学2年まではやりたいことが見つからず、目の前に迫る就活に焦っていました。このままなんとなく大学を卒業し、なんとなく会社に入る……“レールの上”を歩くだけの自分でいいのかな? と、漠然とした不安を感じて。バックパッカーをしたり、さまざまなインターンに応募したりといろんな分野に足を突っ込みながら、少しずつ好き嫌いを選択していきました」

進路に悩む中で、好奇心のまま飛び込んだ選挙候補者支援のインターン。それまでも競争社会によって生まれる格差などにモヤモヤした気持ちがあったというが、インターンの現場でその問題意識が強まったそうだ。

能條桃子「候補者だけでなく支援者にも20〜30代が少なく、女性はさらに少数。若者の政治離れも実感しました。“政治の世界”と“若い有権者”、お互いがお互いを遠ざけあう負のループを止めたくて、20代の投票率が8割を超えているデンマークへ留学したんです」

異なる環境で育った人、自分を知らない人に囲まれながら出た答えはシンプルだった。

能條桃子「留学前は“他人や社会の普通”と自分自身を比べていましたが、海外では自分だけにとことん向きあえました。そんな時、日本で行われたのが2019年の参議院議員選挙。留学先で過ごす中で強まった『若者の政治参加を促したい』という思いは、『NO YOUTH NO JAPAN=若者なくして日本の未来はない』と題したプロジェクトとしてスタート。政治への関心が薄い友人にヒアリングしていくうちに、候補者の選び方や投票の仕方を教える『選挙の教科書』的コンテンツがないことに気づきました。政治と若者の隙間を少しずつ埋めることで広がっていったこの活動が、今は社団法人に。大発明はできないかもしれませんが、今後も『たしかにこれ、知りたかった!』と思ってもらえる、みんなの半歩先を照らすような活動に取り組んでいきたいです」

“同じ問題意識を持つ仲間に出会えてからモチベーションも上がりました”

日本の政治やジェンダーギャップに関する情報をまとめたリーフレット

「一般社団法人は、クラウドファンディングや協賛してくださるスポンサーさんからの資金で活動していますが、その中で得たお金は利益分配できないので、次の活動に繰り越せるんです。就活時、企業で経験を積むことも考えましたが、社団法人は小さくともストレートに問題解決できる。目標が見つからない時は“なんでも経験”したかったけど、リアルタイムで熱量を注げるものに出合ったら、“選択と集中”が大事。私は、今の年齢で感じる社会に対する違和感を活動に生かしたかったので、この選択をしました」(能條さん、以下同)

仕事中の能條桃子さん

「『NO YOUTH NO JAPAN』として活動を始めるまでは、自分だけが世の中にモヤモヤしているのかな? と孤独でした。しかし、デンマーク留学時に友人に思いきって心の内を吐き出してみると、想像以上に同じ問題意識を持っている人がいたんです。ひとり、ふたりと仲間が見つかっていき、SNSなどで発信をすると予想以上に応援してくださる方がいて心強かった。同じ方向を向いて活動できる人たちの存在で、よりやりがいを感じるようになりました。熱量に差があったとしても、社会において目指すゴールが一緒であることが大切だと思っています」

Momoko's OSHIGOTO STYLE

FASHION

能條桃子さんのファッション

「メディアの方やスポンサーさんにお会いする日は、衿つきのトップスを選ぶなど少しきちんと感を意識するようにしています。“政治”というと堅めの仕事だと思われがちですが、スーツやジャケットはほとんど着用しません。外出する打ち合わせが重なる日は、歩きやすい靴を意識するくらいです」

MAKE-UP

能條桃子さんのメイク

「美容の知識は浅いのですが……メディア露出などが増え、友人から自分に似合うコスメを教えてもらっているところ(笑)。今つけている『セルヴォーク』のリップと『トーン』のアイシャドウもいただきもの」

BAG

能條桃子さんのバッグの中身

「自由帳のようにメモを取れる大きめのノートや、趣味で持ち歩いているフィルムカメラ、書籍がマスト。現在はジェンダー関連の本を愛読中。『FIFTYS PROJECT』のパンフレットも名刺代わりに携帯」

Private

能條桃子さんのプライベート

「友人や団体のメンバーと集まってお酒を飲むことが気分転換に! 他愛もない話の中から仕事のアイデアが生まれることも」

●これまで配信した「It Girlの『私の履歴書』」はこちらから

撮影/藤井由依 取材・原文/宮田彩加 ※MORE2023年7月号掲載

宮田 彩加