今までと、これからと。終わらせたくない、ロングロングインタビュー

大好きだからモデルとしてもっともっと成長するために──。7月27日に33歳を迎えたばかりの栞里が、ついに旅立つ時がきた。MOREで過ごした11年間分の軌跡と、これから始まる人生に想いをはせる。

赤いワンピースを着た佐藤栞里

服・小物/すべてスタイリスト私物

ラストシューティングの地は、沖縄・恩納村。エメラルドブルーの海をバックに撮影を予定していた。しかし、天候はくもり。そんなあいにくの空模様を感じさせない、栞里の笑い声がビーチに響きわたる。「今日の海、ちょっと濁ってるけどそれもいい味!(笑)」。そう言いながら、子どものように海で遊ぶ彼女のおかげで、私たちの心は晴れていった。持ち前の優しさと、明るさ。どんな状況も楽しもうとするアティチュード。それは11年前からまったく変わらない。

周囲の気持ちに応えたい、いつだってそれが原動力

少しずつ自分のスタイルを確立していくにつれて、MOREでの彼女の存在感は増すばかり。スタッフからは、「栞里はどんな服も似合うし、私服もおしゃれ!」という声が聞かれるようになり、2014年に、初の私服特集が組まれた。

「普段の撮影は、信頼するスタッフさんが準備してくれた衣装を着て、MOREが提案する女性像を演じる。それがカメラの前に立つ勇気をくれていたから、最初に『栞里の私服企画をするよ!』と聞いた時は、すごくうれしかったけれど、『本当に私でいいんですか?』って聞いてしまいそうになった。紹介するコーデは、ありのままの自分をベースに、MOREの読者さんに真似したいと思ってもらえるバランスを大切にしていたかな。普段の私のファッションってものすごくカジュアルなんだけど、そこに甘さをちょこっと入れたり。ガミちゃん(スタイリスト・石上美津江さん)の“ガミカジ”を参考にして、コーデを組むこともよくあったなあ。私服企画がなければ、11年間ずっと少年スタイルのままだったかも(笑)。ファッションの幅を広げてくれたのもMORE。ありがとう♡」

赤いワンピースを着て笑う佐藤栞里

私服企画だけではなかった。会議では、佐藤栞里の名前を立てた特集案がどんどん出るように。

「やっぱりうれしかったし、自分の名前が入ったテーマはより責任を感じていたと思う。いつも企画してくれた編集さんに喜んでもらえるように、まずは、“その方の思いに絶対に応える!”って気合を入れて、ページづくりに参加したのを覚えてる」

“雑誌に恩返しがしたい”。諦めなかった新しい挑戦

モデルとしての人気が上がると同時期に、『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』の人気コーナー「朝までハシゴの旅」(2014年6月)に出演。大ブレイクし、テレビの世界にも活動の幅を広げる。1年半で約250番組。多忙を極める。

「1日4〜5本。テレビ収録と雑誌の撮影が交互に入っている日も多くて、ほとんど寝ずにMOREの撮影に行っていた日もあった。今振り返ると、めっちゃしんどかったなあ(笑)。でもその当時、体力的なしんどさよりもつらかったことが、大好きなMOREの現場で、スタッフのみんなに『しーちゃん、忙しそうだね。大丈夫?』、『休んでいいよ』と心配させてしまったこと。いつもどおりに振る舞っていたつもりだったんだけど、むくんでるし、その時からひどい肌荒れも始まって……。みんなに迷惑かけていることが、申し訳なかったし、もうすべてが悪循環だった」

それだけ大変でも、テレビとモデルの仕事を並行して続けたのはなぜなのか。そう尋ねるとなんとも彼女らしい答えが返ってきた。

「テレビで有名になれば、雑誌に恩返しできると思ったから。今はどっちのお仕事も大好きだけれど、テレビに出始めたばかりの頃は、ここで頑張れば、雑誌を知ってもらえるって思いが原動力になってた。あとね、みんなに伝えたいことがあって。テレビっていう新しい挑戦を心折れずに踏んばれたのは、MOREっていう安心できる場所があったから。撮影に行くと『テレビ観たよ!』って言ってもらえたり、読者のみんなが喜んでくれていることもとにかくうれしくて。“よしっ。また観てもらえるように!”って。それが頑張る理由だったんだ」

テレビの収録後は、マネージャーと反省会を開催。信頼しあうからこそ、ケンカをしたことも。

「収録後の帰り道、駅のホームで何時間も話し合った(というか、怒られた〈笑〉)ことは忘れられないなあ。もう私もいっぱいいっぱいになっちゃって、途中で走って逃げ出そうかと思ったことも(笑)。でも冷静になってみると、そのとおりだなと思えるアドバイスしかなかった。だから素直に受け止めて、次のお仕事に臨む日々でした」

この頃から栞里は、びっちりと文字が書かれた“あるノート”をいつも持ち歩いている。

「私、忘れっぽいところがあるから(笑)、反省会で話し合ったことや、共演する方のことをメモしておく、“反省&予習ノート”を作るようになって。書くことで気持ちが整理できるし、後悔ではなく反省することができる。そしてこれを次のチャンスに生かせるかもって思えるから、今でも続けてる。このノートもひとつのお守りだね。ときどき、過去のノートを見返すんだけど、こんなふうに思ってたんだーって笑っちゃうよ(笑)」

赤いワンピースを着て海に入る佐藤栞里

“ありのまま”で生まれたちょっとの余裕

多忙による悪循環から抜け出して、自分らしい働き方のリズムをつかみ始めたのは、レギュラー番組が決まり始めた頃だそう。

「テレビという新しい世界に飛び込んでしばらくはひとりで戦っている意識がどうしても強かった。そこから徐々に(フリーアナウンサーの)川田(裕美)さんのような仲間と思える人がテレビの現場でも増えたことや、レギュラー番組も決まり始めて、堂々とホームと呼べる場所ができてから、少しずつリラックスして仕事に取り組めるようになったんだと思う。このタイミングで、モデルの仕事に向かう気持ちも変わってきて。誰かに『栞里ちゃんはなんの雑誌をやっているの?』と聞かれたら、自信を持って、『MOREです!』って答えられるようになった」

撮影/東 京祐 ヘア&メイク/川添カユミ(ilumini.) スタイリスト/石上美津江 取材・原文/海渡理恵 ※MORE2023年9・10月合併号掲載