“時代劇の金字塔”として長年愛され続ける『鬼平犯科帳』。“新たな鬼平”として十代目・松本幸四郎を主演に迎え、「鬼平犯科帳」SEASON1と銘打って、4作品を新たに製作。その最新作、劇場版「鬼平犯科帳 血闘」が5月10日(金)に公開されます。劇中で主人公・長谷川平蔵の若かりし頃を演じた市川染五郎さん、平蔵のもとで動く密偵・おまさの少女時代を演じた中島瑠菜さんが登場。インタビュー前編では、おたがいの印象から時代劇への想いまで、たっぷり語っていただきました! 

市川染五郎さん、中島瑠菜さん

プロフィール

市川染五郎

いちかわ・そめごろう●2005年3月27日生まれ、東京都出身。十代目松本幸四郎の長男。祖父は二代目松本白鸚。2007年に歌舞伎座「侠客春雨傘」で初お目見え。2009年に歌舞伎座「門出祝寿連獅子」にて四代目松本金太郎を名乗り初舞台を踏む。2018年に『壽 初春大歌舞伎』にて八代目市川染五郎を襲名。2022年6月に「信康」で歌舞伎座初主演。近年はドラマや映画にも活躍の場を広げ、第47回日本アカデミー賞では、新人俳優賞を受賞。 

中島瑠菜

なかしま・るな●2006年10月10日生まれ、熊本県出身。2021年に開催された松竹グループのオーディション『松竹JAPAN GP GIRLS CONTEST Supported by BookLive』でグランプリを受賞。最近の出演作に、ドラマ『ソロ活女子のススメ4』や映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』などがある。映画『九十歳。何がめでたい』が6月21日公開。

おたがいの共演前の印象は「大人っぽい」

 

――おふたりは今作が初共演ですが、共演前はおたがいにどんな印象を持っていましたか?

市川染五郎さん(以下、敬称略):なんでしょうねぇ……。(中島さんに向かって)印象、ありました?

中島瑠菜さん(以下、敬称略):染五郎さんは学年でいうと私のふたつ上なんですけど、そうとは思えないくらい大人っぽくて、「うわ~!」っていう感じでした(笑)。オーラがあって、近寄りがたいというか……。

染五郎:それでいうと、僕には中島さんと同じ年の妹がいるんですけど、妹と同い年とは思えない大人っぽさがあるなと思っていました。

市川染五郎さん

ーーおたがいに「大人っぽい」という印象を持たれていたんですね。それは、実際に共演されてみて変わりましたか?

染五郎:変わらなかったですね。ただ、中島さんが演じられたおまさは、自分が演じた長谷川銕三郎(長谷川平蔵の幼名)にとって妹のような存在だったので、“妹感”みたいなものは新たに加わりました。

中島:私は、一緒にお芝居させていただいて、常にどっしりとかまえていらっしゃる、頼りがいのある方だなと思いました。銕さん(銕三郎)がある決意を固めるシーンでは、目を合わせただけで伝わってくるものがあって、すごいなって。

染五郎:純粋なおまさがいてくれたおかげで、怖いもの知らずで血気盛んな銕三郎をより濃く見せることができたので、本当にありがたかったです。

―—おたがいに「大人っぽい」という印象を持たれていたんですね。それは、実際に共演されてみて変わりましたか? 
 
染五郎:変わらなかったですね。ただ、中島さんが演じられたおまさは、自分が演じた長谷川銕三郎(長谷川平蔵の幼名)にとって妹のような存在だったので、“妹感”みたいなものは新たに加わりました。

中島:私は、一緒にお芝居させていただいて、常にどっしりとかまえていらっしゃる、頼りがいのある方だなと思いました。銕さん(銕三郎)がある決意を固めるシーンでは、目を合わせただけで伝わってくるものがあって、すごいなって。 
市川染五郎 純粋なおまさがいてくれたおかげで、怖いもの知らずで血気盛んな銕三郎をより濃く見せることができたので、本当にありがたかったです。 
 
――染五郎さんはお父さまである松本幸四郎さんと長谷川平蔵の過去と現在を演じ分けられていますが、おふたりで役作りについて話し合ったことはありましたか? 
 
染五郎:それが、ほとんどなかったです。もちろん父が撮影しているところを見たり、平蔵と銕三郎がリンクするシーンで父のほうが先に撮影を終えている場合はその映像を見てから演じたりしたことはありましたけど、「ここはこういうふうにしよう」と相談したり、考えをすり合わせたりしたことはなくて。少なくとも、銕三郎は未来を知らないので、平蔵を意識しないほうがいいのかなと思っていました。 

中島瑠菜さん

――撮影が行われた京都での印象的な思い出があれば教えてください。

染五郎:自分は京都を観光する時間があったので、いろいろなところを訪れて、揚げ物がのっているパフェも食べました(笑)。以前京都に行った時、お店の外にエビフライやカツがのったパフェの食品サンプルが並んでいる喫茶店があって、気になっていたんです。甘さとしょっぱさの相性がよくて、おいしかったですよ。

中島:私は今回ホテルと撮影所の行き来で終わってしまったんですけど、街を歩いているだけでも楽しくて、「私の大好きなわらび餅屋さんがあるな~」って思っていました(笑)。次に京都に行った時は、絶対に食べたいです!

時代劇は、理屈抜きで惹きつけられるジャンル

市川染五郎さん、中島瑠菜さん

――役を演じていて、時代劇ならではの大変さはどういうところにありましたか?

染五郎:江戸弁を普段から使い慣れている感じでしゃべらなければいけないのは、いちばん難しかったです。今回は殺陣のシーンもあったのですが、動きや順番ばかりに意識がいってしまうと、役ではなくなってしまう。何のために相手と戦っているのかを考えて、それを自分の中に置いて演じることも大変でした。

中島:私が演じた少女時代のおまさは“盗人酒屋”という居酒屋でお手伝いをしていて、お酒をつぐ手もとだけのカットを撮るシーンがあったんです。最初は大きな樽からお酒がどんなふうに出てくるかがわからなかったので、栓を抜いた瞬間ビックリしてしまって。その後、「お酒がこう出てくるなら、器はこれくらい傾ければちょうどいいかな」と修正していったのですが、慣れない道具や物の扱いを、細かいところまで計算してスムーズに見せなければいけないところは大変だなと思いました。

市川染五郎さん、中島瑠菜さん

――モア読者に向けて、おふたりが考える時代劇の魅力を教えてください。

染五郎:これは父も言っていたことなのですが、実際にあった時代を描いてはいますが、どこか非現実的な世界にいるような感覚になれるところだと思います。そして、殺陣のシーンは特にそうでしょうけど、理屈抜きで楽しめるジャンルなんだということを知ってもらいたい。「筋を理解しなきゃいけない」と気負わず、まずは時代劇の風景の美しさや殺陣の迫力を感じていただきたいなという思いです。

中島:私自身、中学生の頃は時代劇と聞くと、難しそうで避けていたジャンルでした。でも、いざ見てみたら、すごくおもしろかったんですよね。今回試写で『劇場版「鬼平犯科帳 血闘」』を見た時も、夢中になりすぎて、まばたきすることを忘れて目が乾燥してしまったくらい。だから、みなさんにも時代劇を見てもらえたら、きっと惹きつけられるものがあるのではないかと思います。

劇場版「鬼平犯科帳 血闘」

長谷川平蔵(松本幸四郎)が若かりし頃に世話になった居酒屋の娘・おまさ(中村ゆり)が密偵になりたいと申し出てくる。平蔵はその願いを退けるが、おまさは平蔵が芋酒や“加賀や”の主人と盗賊のふたつの顔を持つ鷺原の九平(柄本明)を探していることを知り、独断で探索に乗り出す。九平を探すうちに凶賊・網切の甚五郎(北村有起哉)の企みを知ったおまさは首尾よく網切一味の中へ入り込むが、絶体絶命の危機に陥ってしまい……。

●5月10日(金)全国ロードショー ©「鬼平犯科帳 血闘」時代劇パートナーズ

劇場版『鬼平犯科帳 血闘』公式サイト|『鬼平犯科帳』SEASON1 |池波正太郎 生誕100年企画

撮影/千葉タイチ ヘア&メイク/AKANE(染五郎さん分) 川又由紀(HAPP'S./中島さん分) スタイリスト/中西ナオ(染五郎さん分) 井田信之(中島さん分) 取材・文/吉川由希子