12星座全体の運勢

「雪が花に変わるとき」

11月22日の「小雪」を過ぎれば、もう雪の季節。「一片飛び来れば一片の寒」と言うように舞いくる寒さに本格的に備え始めるこの頃には、こたつを導入したり暖房を入れ始める人も増えてくるはず。 

そして11月30日には、静かに深まってゆく冬の夜に双子座の満月を迎えていきます。今回のテーマは「緊張の中にあるゆるみ」。精神を鋭敏に研ぎ澄ましていくなかで訪れる一瞬の静けさ、そして平穏。それは瞑想の境地が深まったときの感覚にも似ています。初めは雑念ばかりが浮かんで、かえって心が騒がしく感じたり、眠くなってしまったりしていたのが、自然と頭が消えて胴体だけになったように感じてきて、意識は活動しているのに、何かを「志向する」ことなしにいられる「非思考」状態に入っていく。 

禅ではこれを「自分自身の『私』を忘れる」とか「非思量」などと言うそうですが、それはどこか「風花」というこの時期の季語を思わせます。風花とは風に運ばれてちらちらと舞う雪のかけらのことですが、あっけないほどのはかなさで消えていく雪片に、ひとつの花を見出していくのです。それはすべてのものに命があると考えていた日本人が、厳しい冬の訪れにも愛おしむような気持ちを向けていたことの何よりの証しでしょう。 

今回の満月でも、集中力を高めて厳しい現実や人生の課題(雪片)と向かい合っていくことで、そのなかに隠された恵みや喜び(花)を見出していくことができるかどうかが問われていくはず。 

魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「流動」。

魚座のイラスト
宗教学者の中沢新一が長年研究してきた明治の生んだ稀代の博物学者・南方熊楠(みなかたくまぐす)についての講演をまとめた『熊楠の星の時間』を読んでいると、熊楠という破格のスケールの人物の持ち得た思想や活動を追いかけていくことで、そこに「東洋人の思想の原型」を見出そうという氏の野心的試みが平易な文体から浮かび上がってきます。 
 
例えば、「南方マンダラ」と命名した熊楠流の学問の方法論について、著者は次のように記しています。 
 
事物には「潜在性の状態」と「現実化した状態」との二つの様態があって、現実化している事実もじつは潜在性の状態にある事実を介して、お互いにつながりあっています。そのため現実化した事実だけを集めて因果関係を示してみせたとしても、それは不完全な世界理解しかもたらさない、というのが熊楠の考えでした。」 
 
これは何も粘菌や華厳経など、熊楠が学問をしていく上で関わったものに関係しているだけでなく、今日のエコロジー思想を先取りしていた神社合祀反対運動や霊魂についての考え、彼がその身をもって生きたセクソロジー、男色、ふたなり(半陰陽)なども含めての言及でしょう。 
 
事物や記号はいったん潜在空間にダイビングしていく見えない回路を介して、お互い関連しあっています。そして潜在空間ではあらゆるものが自由な結合をおこなう可能性を持って流動しています。」 
 
そう、この「流動」をダイナミックに展開されていく姿こそが、熊楠が顕微鏡の粘菌を通して見出していったいきいきとしたビジョンであり、新自由主義的な思考に慣れきってしまった現代人が見失いつつあるこの世界の実相なのではないでしょうか。 
 
今期のうお座もまた、これまでの自分の仕事や活動を支えてきた世界観を別の方向へとシフトさせていく上で、改めて自分なりの"オルタナティブ”な思想を模索していくといいでしょう。 
 

参考:中沢新一『熊楠の星の時間』(講談社現代メチエ) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ