12星座全体の運勢

「断ち切るための旅に出よう」 

今年は6月21日に太陽の位置が最も高くなる夏至を迎え、夜も最も短くなったなかで、6月25日にはやぎ座3度(数えで4度)で満月を形成していきます。 

今回の満月のテーマは、「運命的な旅の始まり」。すなわち、慣れ親しんだ居場所やこれまで繰り返してきた習慣から離れ、あるいは、習慣そのものが変わってしまうような機会に応じていくこと。 

ちょうど6月の末日には各地の神社で「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われます。これは一年の折り返しに際して半年分の穢れを落とし、これから過ごす半年間の無病息災を祈願する行事なのですが、その際、多くの場合、「茅の輪くぐり」といって神社の境内に建てられた茅(かや)製の直径数メートルほどの大きな輪をくぐっていくのです。 

そして、旅の始まりには、往々にしてこうした「禊ぎ」の儀式を伴うもの。例えば、ジブリ映画『もののけ姫』の冒頭でも、主人公アシタカはタタリ神から受けた呪いを絶つために、まず髪を落としてから、生まれ育った村を去り、はるか西に向けて旅立っていきました。 

ひるがえって、では私たちはどんな汚れを落とし、その上で、どちらに旅立っていけばいいのでしょうか? 

おそらくそれは、アシタカがタタリ神に鉄のつぶてを撃ち込んだ真相を知ろうとしていったように、いま自分が苦しんでいる状況の根本に何があって、何が起きており、その震源地の中心に少しでも近づいていこうとすることと密接に繋がっているはず。 

今回の満月では、いま自分はどんなことを「もうたくさんだ」と感じているのか、そもそも何について知れば「こんなこと」は起きないですむのか。改めて考えてみるといいかも知れません。 
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牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「“あたりまえ”の相対化」。

牡羊座のイラスト
しばしば、誰か何かにひどく傷つけられた当の本人ほど、自身が傷つけられたという現実を否定し、感傷的な幻想の中で生きたがるものですが、現実のあらゆる面で勝ち負けがつけられ、それがあらゆる場所で、かつ、いついかなるタイミングにおいても煽られるようになった現代社会では、ほとんどの人が何らかの意味で負け組であり、したがって、傷ついていない人などまずいないのではないでしょうか。 
 
その意味では、いま私たちは万人が幻想を生きたがる時代に生きているのだと言えますが、イギリスの批評家マーク・フィッシャーは、こうしたグローバル資本主義にすっかり包み込まれた現代人が陥っている事態を「再帰的無能感」と名付けました。 
 
その意味するところは、理不尽な状況に対して自分たちにはもはや何も為す術がないのだという、無関心ともシニシズムとも異なる感傷モードのことなのですが、フィッシャーは厄介なことにそれが「広く染みわたる雰囲気のように、文化の生産だけでなく、教育と労働の規制をも条件づけながら、思考と行動を制約する見えざる結界として」働いているのだと指摘した上で、そこから脱け出す方法について、次のように述べています。 
 
過去三十年にわたって、資本主義リアリズムは教育や保険制度を含む社会のすべてがビジネスとして経営されるのがごく自然なことだという「ビジネス・オントロジー」の確立に成功してきた。(中略)社会の開放を目指す政治はつねに「自然秩序(あたりまえ)」という体裁を破壊すべきで、必然で不可避と見せられていたことをただの偶然として明かしていくと同様に、不可能と思われたことを達成可能であると見せなければならない。現時点で現実的と呼ばれるものも、かつては「不可能」と呼ばれていたことをここで思い出してみよう。」 
 
つまるところ、「この道しかない」ということが“あたりまえ”とされる現実があったとしたら、まずそこに疑問符をつけることこそが、再帰的無能感から脱け出すための出発点なのだとフィッシャーは言っているのです。 
 
今期のおひつじ座もまた、自分がもっとも可能性を限定してしまっているのはどこなのか(例えば「この人とは離れられない」とか「この業界以外では生きていけない」とか)、というところから、今一度自分を無能感から救う道筋を探ってみるといいでしょう。 


参考:マーク・フィッシャー、セバスチャン・ブロイ+河南瑠莉訳『資本主義リアリズム』(堀之内出版) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ