12星座全体の運勢

「社会的秩序の相対化」 

いよいよ春もたけなわに入り、花々が咲いては散ってゆき、それを「惜しむ」思いが深まっていく頃合いに変わってきました。そんな中、「春分」から「清明」へと節気が移ろう直前の4月1日に、おひつじ座11度(数えで12度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは、「天の采配への同期」。すなわち、ふだん地上を這うように生きている自分の選択や振る舞いのひとつひとつが、みずからの意思や社会の空気によってのみ決定されているのではなく、それらを超えたところで働いている宇宙的な原理によって突き動かされているのだという実感を改めて深めていくこと。 

例えば、春になってあたたかくなってくれば冬鳥の雁は北へ帰っていきます。かつてはその姿が日本のどこでも見られ、子供たちは「棹になれ、鉤になれ(まっすぐに連なれ、鉤形に並べ)」とはやしたてたそうですが、そうして新たな季節の訪れを知らせてくれる渡り鳥が道に迷うことなく、何千キロもの長距離を移動し、それを毎年繰り返すように、私たち人間もまた、食事や睡眠などのごく身近なレベルの日常的行動から、経済活動や軍事侵攻などの集団的行動まで、日々何らかのかたちで、地球の磁気や気候の変動などの惑星規模の影響力によって左右されているのです。 

ここのところ、従うべき法と秩序とは何か、ということが人間中心的なものへ寄り過ぎていましたから、今回の新月では、いかにそうした社会的な通念や常識を相対化し、宇宙的サイクルや天の采配に同期して、自然体へと還っていけるかということが、各自の状況に応じて問われていくことでしょう。 
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蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「些細なことを面白がる」。

蠍座のイラスト
身近な人間関係の中で戦争体験を語り継いでくれる存在がますます減っている現代の日本人にとって、戦争に巻き込まれた人間が実際に生死の境目において何をどう感じていくのか、なかなかリアルに想像するのは難しいかも知れません。 
 
その点、『水木しげるのラバウル戦記』は若かりし頃の水木しげるが過酷な南洋の戦地での日々を絵日記でつづった戦争体験記であると同時に、戦地なのに読むと行きたくなるという意味では優れた紀行文とも言える不思議な内容となっており、今こそ読み返すべき一冊と言えます。 
 
いわく、派兵先では上官にひっぱたかれてばかりのダメダメ兵士だった水木さんですが、なぜか原住民たちには好待遇を受けて友情を育んでいったのだそう。それでも、敵の急襲で片腕を失ったり、マラリアにかかって死にかかっているはずなのに、すごくあっけらかんとしていて、そのあまりの呑気さや楽天ぶりが読んでいるとおかしくてたまらない。 
 
兵士として空気が読めずルールにも無頓着でおかしな奴だと思われていた水木さんですが、英語の単語と手ぶりだけで、なぜか現地の人びとと意気投合できた秘訣について、「お互いに異邦人を面白がる性質だったのだろう」と回想しています。きっと原住民たちも、そんな水木さんが戦争という狂った事態のただ中に置かれた数多の異邦人たちの中で、数少ないまっとうな人間であることを肌で感じ取っていたのでしょう。 
 
暴力がどこまでも連鎖していく地獄のような異常事態において、水木さんは自分を理解し、受け入れてくれた土人たち(敬意を込めて彼らをそう呼んでいた)と牧歌的な日々を過ごし、戦争が終わって船で島を離れる時も、やっと帰れる喜びでみなが泣いている中、ひとり本気で原住民たちと別れることが悲しくて泣いていたそうです。 
 
4月1日にさそり座から数えて「適切な健全さ」を意味する6番目のおひつじ座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、日常がすでに非日常化し、多くの人が正気を失ってしまっている状況のいまの社会において、誰とどんな状況でいる時にもっとも「まっとう」な自分でいられるのか、あらためて把握しておくといいでしょう。 
 
 
参考:水木しげる『水木しげるのラバウル戦記』(ちくま文庫)
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ