1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして2023年「モア・リポート」と並行して、性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載をスタートします!

ワンナイトから結婚へ

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ーDATAー

川中さん(仮名)27歳 /会社員/既婚/男性

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「暇つぶし」で参加した街コン

ワンナイトから付き合い結婚へ。彼の気持ちの画像_1

――ワンナイトの相手が結婚相手に?

はい。今の妻・サリナ(28歳/仮名)とは、初回デートですぐに体の関係になりました。ワンナイトで終わるかなと思っていたのですが、その後結婚しました。(以下、川中さん)


――サリナさんとはどこで出会ったのですか?

学生時代の友人と参加した街コンです。


――婚活をしていたのですか?

いいえ。正直「暇つぶしで参加した」という感じですね。本当に軽い気持ちでした。


――結婚は考えていなかった、とうことですね。

そうですね。当時24歳だったので、出会いは求めていたけれど、結婚は真剣には考えていなかったです。

――最初の印象は?

目がくりくりで可愛いなと思いました。

その街コンは、参加者全員としゃべった後、アプリで「よかった人」を選ぶ方式でした。マッチングが成立したら連絡先が交換できます。僕はサリナを選んで、サリナも僕を選んでくれたみたいで、連絡先を交換して「一度食事をしよう」という話になったんです。

「可愛い子とやれてラッキー」だと思った

ワンナイトから付き合い結婚へ。彼の気持ちの画像_2

――そして、いきなり体の関係になったのでしょうか?

はい。最初のデートでお酒を飲んで、そのままの流れでサリナをホテルに誘いました。その時僕ははぶっちゃけ「可愛い子とやれてラッキー!」と思いました。

――今までもそういう経験があったのですか?

そうですね。学生時代にクラブやマッチングアプリで出会った女性と、そのままホテルへ行くことが何度かあったんです。ワンナイトの後は、僕から連絡することはないし、女性からも連絡はない。それがお決まりのルールだったので、今回もそうなるだろうなと思っていました。
でも、しばらくたって、サリナから連絡があったんです。ワンナイトの後に、女性から連絡をもらったのは初めてのことだったので、すごくビックリしたのと同時に、うれしかったことを覚えています。


――そして次のデートに行くことに?

はい。街コンと1回目のデートでは、正直サリナの外面ばかりを見ていましたが、2回目のデートで、彼女の内面の良さを知りました。僕のことを好いてくれているんだな、というのも会話から感じましたね。それから真剣にサリナのことを考えるようになって。

数回デートした後、僕から告白したんです。

安定した生活が物足りなくなって

――付き合う前のデートの時から、自分に対するサリナさんの好意を感じていたのですね?

そうですね。今までの恋愛は自分から好きになって、相手を追いかけるパターンが多かったんです。だから女性から好意を寄せられるのが新鮮でした。でも、つきあって半年が経つと「やっぱり追いかける恋愛がしたい」と思い始めて。自分の狩猟本能の部分がうずきだしたというか、ワガママですよね。

サリナとの関係があまりにも安定しすぎていて、物足りなくなっていました。


――たった半年で?

はい。僕からサリナに正直な気持ちを伝えて、別れを切り出しました。


――その後、どうなったのですか?


別れた後は、マッチングアプリを使っていました。でも誰とも付き合うことはありませんでした。


――サリナさんとの関係は?

つらいことや嬉しいことがあったときにサリナに報告をしていました。サリナからも頻繁に連絡がありました。

――体の関係は?

ありました。いわゆる“セフレ”の関係がずるずると……。次第に「やりなおす?」みたいな会話が出てくるようになったのですが、復縁することなく、1年が経ちました。


――なぜ復縁しなかったのですか?

サリナに対して抱く感情は、恋愛感情というより、家族に抱く感情に近かったんです。

それに、復縁=結婚の覚悟を持たないといけないと感じていました。お互い20代後半に差し掛かり、サリナには結婚願望もある。だから中途半端な気持ちで付き合ってはダメだと思ったんです。

復縁のきっかけは体調不良だった

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――そこからどうして結婚に至ったのですか。

自分の考え方が若干変化したことが大きいと思います。

ある日、僕が高熱で寝込んでしまった時があったのですが、すぐにサリナが駆けつけてきてくれて、看病をしてくれたんです。熱にうなされて悪夢を見ているときも、隣で冷静に「大丈夫、大丈夫よ」と声をかけてくれて。
その時、自分が大変な時期には必ずサリナがそばにいてくれたことを思い出しました。
これまで僕は結婚に対して、ネガティブなイメージがあったんです。ひとりの時間がなくなる、とか。でも、自分がつらい時、一緒にいてくれたサリナの姿を見て、そんなのどうでもよくなるくらい「彼女と一緒にいたい」と思ったんです。
同時に、復縁することに僕がこれだけ悩んでいるのは、僕自身が彼女を大切に思っているからこそだと気づきました。

最終的に僕から復縁を申し込み、1年3か月後にプロポーズしました。

ワンナイトから結婚はありえる?

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――体の関係から始まり、結婚に至るケースについてどう思いますか?

実は結構あるんじゃないでしょうか。みんな言わないだけで(笑)。僕の周りにも何人かいますよ。

あと、僕たちのケースで言うと、出会いが街コンだったのもよかったのだと思います。

友達の紹介や職場だと、ワンナイトなんてもってのほかですよね。じゃあワンナイトが生まれやすい出会いスポットから結婚に至るかというと、そこにいる人たちは遊びたい気持ちが強いと思うので、ないと思います。

それにサリナは出会いスポットに行くタイプじゃない。そう考えると、僕たちは街コンで出会ったからこそ結婚に至ったのかなと思います。


――「つきあう前に体の関係を持ってはダメ」という常套句もありますが、それはあてはまらないということでしょうか?

最初に体の関係を持ってしまうと、相手に対する気持ちの熱量が下がってしまうのは事実かもしれません。サリナから連絡をもらわなかったら、僕たちは一生会うことはなかったかもしれないし。

でも、彼女から連絡をもらい、デートを重ねる中で、僕はいつの間にか外面以外の彼女の魅力に引き込まれていったのだと思います。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。