1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

思いがけない妊娠からワンオペ育児で、うつに

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ーDATAー

瀬尾さん(仮名)30歳 /会社員/既婚

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「もう子供はいいかな」という気持ちでピルを服用

ワンオペ育児でうつになった30代妻。夫のの画像_1

――ピルを服用中に妊娠した経験がある?

はい。低用量ピルを服用していたのですが、妊娠しました。(瀬尾さん、以下同)


――飲み方を間違っていたのでしょうか?

いいえ。毎日決まった時間に飲んでいたし、飲み忘れもなかったと記憶しています。

生理が遅れたので婦人科系の疾患を疑って産婦人科を受診したんです。そこでまさかの妊娠が発覚して「ピルの壁を越えてきた子だね」と、産婦人科の先生もとても驚いていました。


――なぜピルを服用していたのですか?

避妊とPMS(月経前症候群)の緩和のためです。すでに私は三児の母だったので、「もう子どもはいいかな」という気持ちで服用をしていました。


――ただしくピルを服用した場合、ほぼ妊娠しないと聞いたことがありますが。

はい。私もピルを服用さえすれば、確実に避妊できると思っていました。かかりつけの産婦人科の先生曰く、体調不良による下痢や嘔吐、飲み合わせの悪い薬などが原因で、妊娠する可能性がわずかにあるそうです。

妊娠を上司に報告したら、思わぬ反応が

――その後、どうしたのですか?

安定期に入ってから会社に「産休を取りたい」と報告しました。すると、上司から思わぬことを言われました。


――どんなことを言われたのですか?

「(子どもが)できたなら退職してほしい」と言われたんです。

すでに私の部署には、同時期に産休をとる予定の先輩がいました。私には退職を促して、新しい人を確保して人員不足を避けようと思ったのだと思います。


――それからどうしたのですか?

「やめる気はない」と言いました。上司の言葉は無視して、会社の産休・育休制度を利用しましたが、復帰後、職場にいづらくなり。ほどなくして退職しました。今考えるとあれは、”マタハラ”の一種だったのかもしれません。


――その後、どうしたのですか?

第4子を出産後、別の会社で働きはじめました。4人の子どもを育てながら仕事をするのは本当に大変でした。仕事が終わって、子どもを迎えに行く時にはもうへとへと。でもその後、スーパーで買い物をし、ご飯をつくり……と毎日めまぐるしく過ぎていきましたね。

家族のサポートはなくほぼワンオペ状態に

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――家族のサポートはありましたか?

いいえ。そもそも私は自分の両親と不仲で、ほとんど絶縁状態です。

旦那は夜勤の多い仕事だったので、すれ違いの日々です。基本顔を合わせる時間は少ないし、家事を手伝ってほしいとお願いしても、まったく手伝ってくれないし、家にいる時間はずっとネットゲームをしていましたね。


――旦那さんのサポートはほとんどなかったんですね。

はい。旦那が私と結婚を決めた理由は「俺の面倒を見てくれそうだから」だったんです。旦那と私は中学の同窓会で再会したのですが、私が同窓会でみんなに料理を取り分ける姿を見て、旦那は私と結婚したい、と思ったのだそうです。そんな感じだったので、元々育児に協力的だと期待していませんでしたが、ここまで非協力的だとは思いませんでした。

――完全なワンオペ状態ですね。

はい。旦那の給料も安定していなかったので、子どもを養っていくために、私が頑張るしかなかったんです。次の職場は、比較的働きやすい部署にしてもらいました。年上の先輩ママも何人かいました。

だから子育てに関しても理解があるのかなと思っていたのですが、子育てを経験している人ほど分かってくれないケースもあるということを知りました。


――それはどういうことですか?

子育てを経験している先輩から「うちの子はそんなに熱出さなかったよ」とか「うちの子は夜泣きはなかった」「子どものことで休むのは甘えじゃない?」とか、私の仕事と育児の両立スタイルについて、文句を言う方がいました。

私のように、4人の子どもを育てている人がいなかったことも関係しているとは思います。


――自分の子育ての経験からしか理解してくれないということですね。

はい。“女の敵は女”という言葉をこの時思い出しました。

生理痛とかもそうですよね。「男性は生理痛を理解してくれない」と言いますが、一番理解してくれないのが「生理があるけど生理痛がまったくない女性」であるケースはよくあるんじゃないでしょうか。

その後、体調を崩し、子どもは施設へ

――その後もその会社で働き続けたのですか?

はい。しばらくは働き続けたのですが、体調を崩してしまいました。会社に行くと嘔吐したり、夜も眠れなくなったりと不調が出てきたので、病院を受診したところ、うつだと診断されました。入院を余儀なくされたんです。

そして4人の子どもたちも、児童養護施設に預けることになりました。休日はうちに戻ってきますが、現在も離れて暮らしています。


――現在体調はどうですか?

子どもを預けてから、体調もよくなり、仕事もできるようになりました。20歳からずっと子育てをしてきたので、急にできたひとりの時間に最初は戸惑いを感じましたが、今はひとりの時間を楽しんでいます。

――旦那さんとは?

旦那とは今は一緒に暮らしていますが、離婚を考えています。私の気持ちを知ってか知らずか、急に家事するようになりましたが、もう遅いですね。子どもたちのためにも、今は働いてお金を貯めたいです。

 

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。