1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

「お互い30歳で独身だったら結婚しよう」と約束した結末

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ーDATAー

八尾さん(仮名)30歳 /会社員(育休中)/既婚

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3年間セックスなし、だけど結婚向きの彼

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――「お互い30歳まで独身だったら結婚しよう」と約束していた彼氏がいたのですか?

はい。28歳の時に別れた彼氏と、結婚の約束をしていました(以下、八尾さん)


――なぜ別れたのですか?

彼が関西から九州に転勤になってしまったからです。

遠距離になるタイミングで結婚の話も出たのですが、その時は彼との結婚を考えられず、別れを選択しました。

――どうして結婚を考えられなかったのですか?

付き合っていた3年間、一度もセックスがなかったんです。

――3年付き合って一度も、ですか?

はい。セックスどころか、キスすらありませんでした。

彼とはマッチングアプリで出会い、付き合って3か月目にふたりで温泉旅行に出かけたのですが、その時もスキンシップは一切ありませんでした。

せっかく温泉付きの部屋に泊まったのに、彼は温泉に入る時もひとり、ふすまをぴしゃりと閉めました(笑)。

――八尾さんからスキンシップをとることもなかった?

そうですね。やっぱりどこかで「男性にリードしてほしい」という気持ちがあったので、彼が誘ってくれるまで待っていました。その日はいつまでたってもこなかったのですが。

セックスがなくて寂しいと思うことはあまりなかった

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――セックスがなくてさみしいと感じることはありませんでしたか?

最初は寂しいと思っていましたが、いつの間にかそれに慣れてしまいました。

セックス以外の場面で、彼は常に私をリードしてくれました。旅行に行く時は必ず「旅のしおり」を作ってくれて、完璧なデートや旅行のプランを提案してくれる。だからセックスがないから愛情を感じられない、と思うことはなかったですね。

正直、女性慣れしていないな……と感じるところもあったけれど、一緒にいて居心地がよかったんです。それに彼はいわゆる高学歴高収入。まじめな性格で結婚向きの男性でした。

――それでも別れてしまった?

そうですね。仕事を辞めて転勤についていくほど彼のことが好きかと言われるとそうではありませんでした。正直セックスも含め、男女の関係としては不安を感じる部分もあったので、転勤を機に別れを選択しました。

――別れを切り出した時、彼はどんな反応を?

その時に彼は「もしお互い30歳で独身だったら結婚しよう」と私に言ったんです。30歳はちょうど彼が九州転勤から関西に戻ってくる予定でした。

――八尾さんは彼の提案を受け入れたのですか?

はい。内心ラッキーだと思ってしまいました(笑)。

私も30歳くらいで結婚したいと思っていたので、2年間婚活してみて、彼よりいい人がいたらそっちと結婚すればいいし、ダメでも彼がいる……! みたいな気持ちになりましたね。

その後、相席屋で男性と出会い……

――彼と別れた後はどうなったのですか?

ちょうどコロナの時期に突入しました。

しばらくは仕事と実家を行き来する時期が続いていたのですが、ある時、女友達に相席屋に誘われて。

そこで、涼太(仮名・当時24歳)と出会いました。

涼太は男友達と2人で相席屋に来ていて、私の友人が涼太の友人を気に入ったこともあり、話が盛り上がりました。その日をきっかけに、4人でよくお酒を飲むようになったんです。


――最初は涼太さんのことを意識していなかった?

そうですね。彼は私より4つ年下で若かったし、最初は友人の恋を応援したい気持ちでした。当時はコロナ禍でお酒が飲める店もあまり空いていなかったので、みんなで涼太の家に集まって宅飲みをするように。

でも、しばらくして涼太の友人に彼女ができてしまい、友人は失恋。これを機に、4人で集まることはなくなりました。その代わり涼太と私の2人で飲むことが増えたんです。

2人でお酒を飲むようになり、セフレ関係へ

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――自然に2人のシチュエーションができあがったんですね。

そうですね。でもやっぱり男女が2人で飲むとなると“そういう雰囲気”になりますよね。

涼太のひとり暮らしのマンションが私の職場に近いこともあり、涼太の部屋に泊まることが増えました。そのままなんとなく半同棲状態になり……という流れです。

――付き合ってはいなかった?

お互い”なんでも話せるセフレ”という認識でした。涼太に好きな人ができたら、私は出ていくし、私に「お互い30歳まで独身だったら結婚しよう」と約束している元カレがいることも涼太に赤裸々に話していました。

――元カレとはその間、どうでしたか?

たまに連絡を取っていました。別れているし、お互いの恋愛状況を詮索することはあまりなかったのですが、ある時元カレから「彼氏いる?」と聞かれて「いないよ」と答えたら……。

なんと、29歳の私の誕生日に、突然プロポーズされたんです。

――元カレは「お互い30歳まで独身だったら結婚しよう」を実行したのですね。

はい。本当に突然だったので驚きました。少し考えましたが、最終的にはプロポーズを受け入れて「入籍は30歳で」という話になりました。

私はセフレ関係を解消しなくては!と、涼太にプロポーズされたことを話しました。

すると涼太は「俺も来年、日本一周旅をする計画を立てている」とすんなり別れを受け入れ、最後は「お互い幸せになろうな」と話しました。

でも……それから2か月後、私の妊娠が発覚したんです。

プロポーズされた矢先、妊娠が発覚

――それは、涼太さんとの子どもですか?

そうです。まさかの出来事に頭が真っ白になりました。すぐに出産を経験している友人にどうするべきか相談しました。

すると、みんな口をそろえて「子どもをおろしたことは後悔しても、産んだことは絶対後悔しない」と言ったんです。

自分の両親にもすべて正直に話しました。すると両親も「子どもができたならけじめをつけなさい」と”産む”一択。

周囲の言葉に産むことを決意し、涼太と結婚して子どもを出産しました。


――元カレとはどうなったのですか?

すべて話して、婚約を解消しました。その際、セックスについても初めて話しました。元カレは「昔付き合っていた彼女に、セックスを拒否された経験があって怖かった」と話していました。

――過去のトラウマからセックスができなくなっていたんですね。

そうですね。その話を聞いて、私からスキンシップを取っていれば、たぶん元カレはセックスをしてくれたんだろうなぁと思いました。

――付き合っていた時、八尾さんからスキンシップを求めることはなかったんですよね。

はい。元カレと付き合っていた時の私は、セックス=男の人主導であるべき、というイメージを持っていたので、3年間言い出せなかったんです。それにセックスだけでなく、人生も彼にリードしてもらいたい、という気持ちがありました。

一方、涼太とのセックスは平等。彼に対して人生をリードしてほしい、という気持ちも一切ありません。それが頼りないなと思う時もあったけど、実は夫婦になるうえでいいことだったのではないかと思っています。

――それはなぜですか?

元カレと結婚していたら、私は元カレの実家に引っ越す予定でした。今考えてみると、仕事を失い、自分の家族と離れて子育てするのは、寂しいし、厳しかっただろうと思います。

涼太と結婚してからは、私の実家の近くに引っ越し、自身の両親のサポートを得ながら子育てができています。現在育休ですが、半年後には仕事にも復帰予定です。

涼太は私の兄弟とも仲が良くて、今では草野球チームを組むほどです。

今となっては、涼太と結婚して良かったと思っています。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。