1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして多様性社会を生きる今、「モア・リポート」と並行して性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載をお届けします!
 

結婚願望ゼロだった20代前半。彼が結婚を決断した理由は?

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ーDATAー

原西さん(仮名)/26歳/既婚/男性

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気軽にセックスできる女性を求めて、出会いの場へ

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――25歳の時、出会いの場によく足を運んでいた?

はい。相席居酒屋や出会いラウンジに週2~3回、男友達と通っていました。(原西さん、以下同)。

当時、彼女がほしいという気持ちはまったくなくて、CPSを常に意識していましたね。


――CPSとはなんですか?

僕と友人が作った造語なんですけど、コスト・パフォーマンス・セックスの略です。セックスに至るまでのコストがいくらかかるのかを常に計算して、出会いの場に足を運んでいました。


――出会いの場に行く目的は、セックスをするため?

そうですね。正直真剣な出会いは求めていませんでした。気軽にセックスできる子がいたらいいな、という気持ちでした。


――CPSが「いい」「悪い」はどこで判断するのですか?

僕と友人の中でCPSが悪いのは、女性とセックスするまでに1万5000円以上払った時だと考えていました。


――それはなぜですか?


1万5000円以上だと、風俗に行けるからです。


――コストパフォーマンスが一番よかったのが、相席居酒屋や相席ラウンジだった?

はい。早い時間に行くと料金が安かったので、18時~21時の時間は相席居酒屋やラウンジに行って、その後はいい雰囲気になった女性とカジュアルに飲める居酒屋へ……という感じでしたね。


――アプリなどほかの方法は利用しなかったのですか?

マッチングアプリもやっていたんですが、毎回同じ自己紹介して、メッセージのやりとりをしてデートの約束をするというのがとても面倒に感じました。それに会うまでどんな女性が来るか分からないし。


その点リアルなら、出会ってから早ければ10分で「別のお店行こうよ」と交渉できたりするので、自分的にはそういう場に足を運ぶ方が向いていたと思います。

真剣に出会いを求めている女性にはどう対応した?

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――実際、1万5000円以内でセックスができましたか?

はい。かなり成功率は高かったと思います。その後、セフレとして継続した方もたくさんいました。


――出会った女性の中には、真剣に出会いを求めている方もいたと思いますが、そのような場合どう対応したのですか?

体の関係を持つ前に「俺は彼女をつくるつもりはない」とはっきり伝えていました。それでセックスを断られたら、それまでなので。


――なぜ彼女をつくりたくなかったのですか?

付き合うって、ただの口約束の割に制約が多いと思っていたんです。

僕は過去の恋愛で「私がいるんだから女の子と遊ばないで!」と言われることが多かったので、正直なところ特定の彼女がいるのはめんどくさい、と考えていました。

それに、ひとりよりは何人かいたほうがいいなって。ひとりがダメでも何人かいれば気持ちに余裕が生まれます。

26歳の時、セフレのひとりが妊娠した

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――多い時でどのくらいセフレがいたのですか?

4~5人はいたと思いますね。でも26歳の時、女性たちのひとりの妊娠が発覚しました。


――妊娠がわかった時、どんな気持ちでしたか?

正直もっと遊びたいし、結婚願望がなかったので焦りました。でも、子どもを授かったからには責任をとらなきゃいけないし。“結婚せざるをえない”状況になったんです。


――ほかのセフレの女性にも事情を説明したのですか?

はい。ひとりひとりに事情を話し、ちゃんとけじめをつけました。


――皆さん納得してくれたのですか?

基本的には「そうなんだ」と応援モードで別れた人が多かったのですが、ひとりだけ「私よりもその女性を取るんだね」と揉めた女性がいました。

僕はセフレだと思っていたけれど、彼女はいつか僕と恋人同士になって結婚したいと思っていたようでした。彼女とは何度も話し合って、入籍するギリギリでちゃんと別れた感じです。そのことはすべて妻に共有していました。

20代後半で生活が激変

――なかなかセフレのことをパートナーに話す人はいないと思います。

そうですね、でも妻も元セフレだったわけですから。普通の夫婦の関係性とは違うかもしれませんが、赤裸々にお互いのことを話せる仲ではありました。


――生活は変わりましたか?

はい。結婚前は男友達と遊ぶのがとにかく楽しくて。みんなで飲みに行って、誰かの家に転がり込んで、そのまま仕事へ行くような日々を繰り返していました。ずっとこんな日が続けばいいなと思っていました。


でも結婚後、妻が妊娠しているので男友達と遊ぶ頻度もグッと減りました。正直、いろいろ我慢していました。そんな時、妻から「男友達もみんなずっとおるかわからんよ?」と言われて。


そう言われた時「いやいや、友達は一生ものっしょ!」と思っていたのですが、あれから2年経った今、当時遊んでいた男友達とはほとんど連絡を取ることもなく、会わなくなりました。


――それはなぜですか?

それぞれの転職や結婚で、時間が合わなくなりました。2年前妻が言っていたことは本当だったなぁ、と思います。


――自身の中での変化はありましたか?

子どもが生まれてから、僕の気持ちに劇的な変化が起こりました。仕事が終わったら子どもの顔を見たくて、直帰です(笑)。可愛くて可愛くて。


――今はすっかりパパなんですね。

はい。20代前半の時とは別人です(笑)。自分がこんなパパになるなんて想像もしていなかった。

予想外の授かり婚でしたが、それがなければ僕は今も男友達やセフレと遊び続けていたかもしれません。でも周りにいる友達が減って、寂しい思いをしていたかもしれませんね。

――結果、結婚してよかったということですね。


そうですね。僕の周りの男性も、結婚は彼女に周りを固められたり、子どもが授かったりしたことがきっかけに。結婚したいというよりも、結婚せざるをえない状況の中で決断した人が多い気がします。


それは悪いことじゃなく、結婚って実はそういうものかなと思います。


“結婚せざるをえない”状況になった先にも、ちゃんと幸せがあるんだなぁと今しみじみ感じますね。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。