1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

「お父さん、お母さん、ごめんなさい」と思いながらセックスした

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ーDATAー

長崎さん(仮名)29歳 /会社員/既婚

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背徳感のあるセックスに興奮する彼女の結婚後は?

夫とのセックスに満足できない。禁断シチュの画像_1

――今のパートナーとのセックスに満足していない?


はい。結婚して半年になりますが、満足していません。パートナーからセックスを求められるのは月1あるかないかです。その時は応じますが、自分から誘うことはほとんどありませんね。(長崎さん、以下同)


――セックスレスに近い状態ということですか?


そうですね。でもセックスに満足する=幸せとはかぎらないので、レス気味でも気になりません。


ーーそれはどういう意味ですか?

私がセックスに満足しないのは、パートナーのせいではなくて、私自身の性癖のせいなんです。

実は結婚前、私には1日3回以上、付き合っていない男性とセックスをしていた時期がありました。


ーー相手はどんな人だったのでしょうか?


遠距離恋愛中の彼女がいる男性で、私はいわゆるセフレで2番目のポジションでした。多い時は1日3回以上、週10回ほどセックスをしていました。

ーー1日3回=3回挿入、という意味ですか?


はい。1日3回、フィニッシュまでという意味です。夜に合流して、1度セックスをして、晩御飯を食べて2度目のセックスをして、寝る前に3度目という感じです。3回のうち、2回は私から誘う感じでした。彼はしぶしぶ私に付き合ってくれていた時もありましたね。


ーー長崎さんは自身の性欲が強い方だと思いますか?


はい。強いと思います。でも自分の性欲はほかの人とちょっと違うと感じています。

初体験で感じた“背徳感”が忘れられない

夫とのセックスに満足できない。禁断シチュの画像_2

ーーどのように“違う”と感じますか?


「セックスしたい」という欲望は、本来好きな人に対してわくものだと思います。

でも、私の場合は違うんです。してはいけない人とのセックスや、してはいけないシチュエーションでするセックスに、興奮するんです。


ーーそれはなぜですか?

たぶん、自身の初体験の記憶が関係しているんだと思います。

両親は二人とも教員で厳しく、「男女交際禁止」と言われていました。でも私はその約束を守らず、高校2年生の時にこっそり高3の先輩と交際し、初めてセックスをしました。


それまでずっと親から言われるがままに生きてきたので、親との約束を破るのはこの時が初めてだったと思います。ある日、両親ともに仕事で帰りが遅くなる日があったので、思い切って自分の家に先輩を誘いました。


ーーそこで初体験を?

はい。親に男女交際を禁止されているのに、こっそり先輩と付き合っている。さらに家に誘って、セックスをしている……。心では「お父さん、お母さん、ごめんなさい」と思っているのに、体がどんどん熱くなっているのを感じました。


ーー初体験はどうでしたか?

正直、先輩がコンドームを装着した後のことはあまり覚えていません(笑)。ただ、キスや服を脱がされているシーンは、今でも夢に見るくらい興奮していたのを覚えています。


学生時代、保健体育の授業でも「セックスは大人になってから」みたいな感じで教えられていたので、私の中で完全にセックス=悪でした。でも、その“悪いことをしてる”状態に興奮しちゃって。


ーー「してはいけない」というシチュエーションに興奮したのですね。


そうだと思います。それは大人になってからも続きました。本命の彼とするより、彼女がいる男性やワンナイトのようなセックスに興奮しました。

高校時代の先輩と別れた後も、何人かちゃんとお付き合いした男性がいたのですが、最初の方はセックスが盛り上がっても、関係が安定してくると物足りなさを感じました。


最終的に、マンネリを理由に自分から別れを告げるケースがほとんどでした。

自分のセックス観に悩む日々

ーー自身の性癖が「人と違うかも」と思った以降はどのように過ごしたのですか?


正直、すごく悩みました。

高校時代、私の恋愛の情報源は少女漫画でした。親は少女漫画を買うことすらも禁止していたのですが、クラスメイトから借りてこっそり読んでいました。当時読んでいたのが『君に届け』という漫画だったのですが、ヒロインは自分と真逆の存在でした。好きな男の子と結ばれて、親に彼氏として紹介して、真面目に付き合って、そしてキスをして……。


本来、恋愛ってこうあるべきなんだ。そしてその延長上のセックスがあるべきなんだ……と感じましたが、自分はまるで違う。悪いことばかりをしている、でもそのシチュエーションに興奮してしまう。


「自分はほかの人と違う」という悩みはどんどん膨らんで、その悩みはセフレと別れる28歳くらいまで抱えていました。

セフレの彼に言われた「それって普通じゃない?」

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ーー28歳の時、何かが変わったのですか?


はい。セフレの一言がきっかけで、考え方が変わりました。

親友が立て続けに結婚したことや、親から結婚しろとプレッシャーをかけられるようになって。自分もこのままじゃいけないと思ってセフレに別れを告げました。


その時に「私って変態だし、普通の恋愛とか結婚とかあきらめた方がいいのかなぁ」と彼に相談すると、彼が「え、普通じゃない?」と言ったんです。


ーー長崎さんの性癖は、特殊ではないということでしょうか?


はい。彼は「俺も彼女がいるのに別の人とセックスしちゃっている状況に興奮しちゃってるわけだし、みんなそんなもんだと思うよ」と言いました。

「じゃあ、みんな浮気しているの?」と私が尋ねると、「こういうので満たしてるんだよ」と女性向けAVのサイトを見せてきました。


ーー長崎さんは、女性向けAVの存在は知らなかったのですか?


存在は知っていましたが、見てはいけないものだと思っていたので、実際に見るのはその時が初めてでした。そこに人気動画のランキングがあったのですが、内容を見てとても驚きました。


上位に純愛的なセックスはほとんどなくて、「NTR(寝取られ)」「会社でこっそり」など背徳的なシチュエーションばかりだったからです。自分以外の女性もこういうシチュエーションに興味があるんだ! とすごく驚いたのと同時に、どこかほっとしました。

パートナーとのセックスに興奮はしないけど、安心感は感じる

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ーーその後、どうなりましたか?

気持ちがかなり楽になりました。それから2年経って、セフレの彼とは別のパートナーと結婚しました。


ーーパートナーは長崎さんの性癖を知っていますか?


いいえ。まったく知りません。


ーーパートナーに対して性欲は湧きますか?


正直、あまり湧きません。

親に交際を禁止されていたのにセックスをしていた高校時代や、ほかに彼女がいる男性とセックスをしていた結婚前は、不安や背徳感がセックスの興奮につながっていました。でも親から認められ、私ひとりだけを見てくれているパートナーとするセックスは、背徳感も不安のない状態。本来それは幸せなことのはずですが、性欲がわかないんです。


ーー今後、自分の性欲とどのように向き合っていこうと思っていますか?


こればっかりは、自分自身で調整していくしかないかなと思っています。

パートナーとのセックスに興奮はしないけど、安心感は感じます。もちろんパートナーを裏切ることは絶対にしたくない。だから今はこっそりAVを観てセルフプレジャーをして自身の性欲を解消するようにしています。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。