公開中&近日公開予定の話題作の中から、キーワードに沿った2本のイチ押し映画と、その他のおすすめ映画をご紹介します。

【今月のキーワード】才能が炸裂! “イット・カップル”!

映画『ワイルドライフ』は、映像の美しさとの画像_1
名プロデューサーとして手腕を発揮しているブラッド・ピットや、89歳となった現在も監督として活躍する巨匠クリント・イーストウッドなど、製作者としてリスペクトされている俳優は多い。そんな彼らに新世代の代表として仲間入りしそうなのが、『リトル・ミス・サンシャイン』や『スイス・アーミー・マン』などに出演してきた35歳の演技派ポール・ダノ。野生動物(Wildlife)のようなむき出しの感情をぶつけあいながら崩壊していく家族を描いた『ワイルドライフ』で、映画監督デビューを果たした。今回、監督だけでなく脚本も手がけた彼にとって欠かせない存在だったのが、共同脚本を務めた私生活のパートナーでもある女優のゾーイ・カザン。夫婦が崩壊していく姿を息子の視点で描くという、30代の彼らにはなかなか渋いテーマながら、危機を経験して成長しようともがく一家の、愛を感じる意外なラストは、円熟したベテランが手がけたかと思うほどのふくよかな余韻を残す。主人公たちを徹底してドライに見つめ続けた、映像の美しさと脚本のセンスのよさが光る秀作だ。

【今月のイチ押し★シネマ1】『ワイルドライフ』

映画『ワイルドライフ』は、映像の美しさとの画像_2
仕事を解雇され、山火事の消火の出稼ぎに参加するために息子と妻ジャネット(キャリー・マリガン)を残して山へ向かったジェリー(ジェイク・ギレンホール)。夫への不満と孤独にさいなまれた妻は、しだいに濃い化粧で外出するようになる。●7/5〜YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開 ©2018 WILDLIFE 2016,LLC.

【今月のイチ押しシネマ2】『ルビー・スパークス』

脚本をゾーイが担当し、ポールと共に製作総指揮を務めた『ルビー・スパークス』は、製作者としてスタートを切ったふたりのデビュー作。スランプに陥った小説家をポールが、小説に登場する理想の女子ルビー・スパークスをゾーイがキュートに演じるなど、共演を果たしているのも見逃せない。ただしロマンティックなラブストーリーかと思いきや、愛を求める人間の暴走を描いたピリッと毒が効いた展開は見事。ふたりの才能を存分に堪能できる。
映画『ワイルドライフ』は、映像の美しさとの画像_3
小説家のカルヴィン(ポール・ダノ)は、理想の女子ルビー・スパークス(ゾーイ・カザン)を主人公にした新作に着手。すると彼の前に、書いたとおりの振る舞いをするルビーが現れる。ブルーレイ発売中。¥1905(20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン)

【まだまだあります、おすすめシネマ!】『サマーフィーリング』と『Girl/ガール』

映画『ワイルドライフ』は、映像の美しさとの画像_4
『サマーフィーリング』
恋人のサシャを亡くした青年と、サシャの妹が織りなす喪失と再生の物語。夏を切り取ったまばゆい映像と、せつなくビターな物語とのコントラストがじんわりしみる。●7/6〜シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開 ©Nord-Ouest Films - Arte France Cinéma - Katuh Studio - Rhône-Alpes Cinéma
映画『ワイルドライフ』は、映像の美しさとの画像_5
『Girl/ガール』
アントワープ・ロイヤル・バレエ・スクールに通う男性ダンサーのビクトール・ポルスターが、バレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女ララを演じたベルギー映画。理想の自分になりたいと願うララの切実な思いを体現した、ビクトールのあまりの美しさに面食らう一本だ。●7/5〜全国公開 ©Menuet 2018
原文/松山 梢