12星座全体の運勢

「‟想定外”への一歩を踏み出す」

二十四節気で「穀物の種をまく時」という意味の「芒種」を迎えるのが6月5日。実際には麦の刈り取りの時期であり、どんよりとした天気の下で鮮やかな紫陽花やカラフルな傘たちが街をいろどる季節。そして6月6日に起きる射手座の満月は、いつも以上にエモの膨張に拍車がかかる月食でもあります。そんな今の時期のキーワードは「モヤモヤのあとのひらめき」。それは息苦しい勉強に退屈していた子供が、庭に迷い込んだ野良猫の存在に驚き、その後を追い路地を抜けた先で、今まで見たことのなかった光景を目にした時のよう。これから満月前後にかけては、現在の行き詰まりを打開するような‟想定外”体験に、存分に驚き開かれていきたいところです。

蠍座(さそり座)

今週のさそり座のキーワードは、「灯台の下を見よ」。

蠍座のイラスト
「灯台下(もと)暗し」の「灯台」とは、海をのぞむ岬の燈台のことではなくて、油を入れた皿を載せてともしびを灯す昔の灯明台のこと。それで、台のすぐ下のあたりが暗くなることから、身近なことほど案外気付きにくいことの比喩となったそう。

ただ、だからといって、「飛んで火に入る夏の虫」になりきって、いつもともしびに照らされた明るい箇所ばかり見ているのでは、あまりに情緒がありません。

静かな部屋に時おり風が訪れるたび、暗い漆器にろうそくの光がゆれ、人は怪しい光りの夢の世界へと誘われていく。そのともしびのはためきを、谷崎潤一郎は『陰翳礼賛』の中で「夜の脈搏(みゃくはく)」と表現しました。

ともしびがはためくごとに、畳の上を滑るかのように明るみも刻々と場所を移す。そんな風に、暗いところで時おり何かが光ったり、その光がちらちらと流れ、綾をおりなすとき、「夜」という抽象概念さえも生き物のように脈を打ち始めるのだ、と。

そうした深い瞑想の世界には、向日性の明るさや、ポジティブ・シンキングだけでは決して入っていくことはできないでしょう。

身の周りのもっとも暗いところ、すなわち自分のからだや、ほとんど自分の一部となっている近しい人間関係にこそ目を向け、そこにきちんと生きた血が通っているか、それともすでに干からび形骸化してしまっているか、確かめていくこと。

それが、今回の月食前後にかけてのさそり座のテーマなのだと言えるでしょう。


出典:谷崎潤一郎『陰翳礼賛』(中公文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ