
旅の途中でハンネスの真意を知らされた仲間たちは愕然とし、何度も話し合って納得したはずの妻でさえも、愛する人の死を見届ける辛い現実に心が大きく揺らぎます。このくだり、『わたしはロランス』で「女性として生きる」と決めたロランスを受け入れる恋人フレッドの苦悩や、『リリーのすべて』で性別適合手術を決意した夫を支える妻ゲルダの葛藤とリンクします。つまり、決断を下した本人の意志は固く清々しくもあり、受け入れる側の戸惑いは想像を絶するということ。
彼らがドイツからベルギーに向かう道中で、難しい現実とどう向き合っていくのか。内容はもちろんシリアスではありますが、決してベタベタとした感動演出が盛り込まれているわけではありません。むしろ泥まみれになってはしゃいだり、女装してバーではめを外したり、いい年した大人たちが青春を取り戻したかのようにふざけ合う姿が印象的。この映画を見終わっても「もし自分や家族だったら?」という疑問の答えは簡単には見つかりませんが、主人公のように、どんな状況でも笑い合える仲間や家族がいることが“グッドライフ”の答えだということは明確。「どう死ぬか」よりも、「誰と生きるか」の大切さを教えてくれる一本です。
(文/松山梢)
●5/21〜ヒューマントラストシネマ有楽町ほか
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