12星座全体の運勢

「最初の思い」 

年末が近づき、慌ただしさが増すとともに、華やかに街がにぎわうこの季節。そんな中、冬至直前の12月19日にふたご座27度(数えで28度)で今年最後の満月を迎えていきます。 

ふたご座28度のサビアンシンボルは「破産宣告を認められた男」。ここではもはや「優れた個人であることを証明する」という不毛な競争のフェーズが終わり、これまでどこかで違和感を感じていたアイデンティティやセルフイメージを不可逆的に壊していくことがテーマとなっていきます。 

ただ、それは本質的には必ずしもネガティブなものではなく、どんな人間もひとりで生きている訳ではない以上、自分がどんなコミュニティに属していて、いかなる仕方で持ちつ持たれつの網目の中にあるのかということを改めて可視化していく通過儀礼であると同時に、救われたい、誰かに、ないし社会に良いことをしたい、と心から最初の思いを発揮しなおしていく大きな節目ともなっていくように思います。 

ちょうど、この時期には「南天」が鮮やかな赤い実をつけますが、実に咳止めの薬効があり、葉にも腐敗防止の作用があるとされ、何より「難を転じる」という語呂合わせから、古来より縁起がいいとされてきました。 

今期のあなたもまた、みずからの未熟さ、つたなさを念頭に初心にかえり、これから自分は何をしていきたいのか、という「最初の思い」を真っ白な紙の上に書き出してみるといいでしょう。 
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天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「一見バカげた問い」。

天秤座のイラスト
環境破壊のもたらす地球規模の危機が今ほど世界中で盛んに訴えられている時代はありませんが、昆虫愛好文化というのは、そうした危機への人類の本能的な応答の一つなのではないかと思います。 
 
そして日本という国もまた特異な昆虫愛好文化の国のひとつなのですが、そんな我が国の昆虫少年/少女をうみだす最大のきっかけとなってきたのが、1922年にはじめて邦訳されて以降、何度も訳者を変えて出版され続けてきたファーブルの『昆虫記』でしょう。 
 
「比類なき観察者」とダーウィンから称賛されたファーブルは、しかし進化論を認めず、正規の学者へのコースをたどらなかったため、傍流に甘んじなければならなかったにも関わらず、今日その名を冠した著書の存在を知らない人はいないほど、多くの人の関心を惹きつけていますが、その魅力は昆虫の生態に関する観察のディテールだけでなく、それらの間に挿入されているみずからの人生への回想や感想の独特の味わいに由来しています。 
 
例えば彼は自分のような昆虫学は「万人に受けていない」し、「人々は虫の実際と行動を調べる野の人間を大して尊敬していない」とぼやきつつ、それでもこれまでこの道を歩き続けてこれたのは、「幼い時から物を観察したり不審がる性質」があることに気付いて、それを伸ばしえたからだと述べています。 
 
そして、そうした自身の性質に最初に気づいた瞬間について、彼がまだ五、六歳のころ、寂しい山の中の祖母の家に預けられ、ガチョウや山羊のあいだで生活していた当時の記憶をたどって、次のように書いています。 
 
原初の知的な微光が目覚めたのは、ある日、幼い私が両手を後ろにし、太陽の方に向いて考え込んでいた」とき、「私は灯火の明るさに惹きつけられる蛾であった。私が輝く栄光を口で見ているのか、あるいは眼で見ているのか」と自問し、眼と口とを交互に閉じることによって、「私は私が眼で太陽を見るということを的確に知ったのだ」と。 
 
てんびん座から数えて「探求」を意味する9番目のふたご座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、そうした一見するとバカげた、しかし根本的な問いから出発していくことを改めてみずからの初志として大切にしていきたいところです。 
 
 
参考:ファーブル、山田吉彦・林達夫訳『完訳 ファーブル昆虫記』(岩波文庫)
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ